ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 意9条先願 取り消して登録 D3 |
---|---|
管理番号 | 1314369 |
審判番号 | 不服2015-18494 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-10-09 |
確定日 | 2016-04-15 |
意匠に係る物品 | 天井直付け灯 |
事件の表示 | 意願2014- 19287「天井直付け灯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成26年(2014年)9月2日の意匠登録出願であって,本願の願書の記載によれば,その意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は「天井直付け灯」であり,本願意匠の形態は,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,願書の記載によれば,「実線で示した部分は部分意匠として登録を受けようとする部分(当審注:以下「本願部分」という。)である。」「「透光部を示す参考斜視図」中,斜線部は透光性を有する。」としたものである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,平成26年(2014年)3月26日に出願され,同年9月26日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1510212号(意匠に係る物品「天井直付け灯」)の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものと認められるので,最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないため,意匠法第9条第1項の規定により意匠登録を受けることができないとしたものであって,引用意匠の形態は,その意匠登録出願の願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,願書の記載によれば,「実線で示した部分が部分意匠として登録を受けようとする部分(当審注:以下「引用部分」という。)である。」「「透光部を示す参考斜視図」中,斜線部は透光性を有する。」としたものである(別紙第2参照)。 第3 本願意匠と引用意匠の一部の対比 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「天井直付け灯」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「天井直付け灯」である。 2 用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分の位置,大きさ及び範囲は,平面中央右寄りに破線で表された大きい円形(電源コード用の孔部と推認される。)と,その左右に表された小円形又は小楕円形(取付け孔部などと推認される。)を除いた部分であって,天井直付け灯のほとんどを占める部分であり,天井直付け灯としての用途及び機能を有している。 また,引用部分の位置,大きさ及び範囲は,平面ほぼ中央に破線で表された大きい円形(電源コード用の孔部と推認される。)と,その左右に表された小円形又は小楕円形(取付け孔部などと推認される。)を除いた部分であって,天井直付け灯のほとんどを占める部分であり,天井直付け灯としての用途及び機能を有している。 3 形態 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 (1)共通点 両部分の基本的構成態様には,以下の共通点が認められる。 (A)基本的構成態様についての共通点 全体が,正面から見て,横長状で厚みのある基台部の下方に,横長状の透光部を設けて一体としたものである。 また,両部分の具体的態様には,以下の共通点が認められる。 (B)基台部の態様についての共通点 基台部は,側面から見て,下向きの略扁平台形状であって,上端の左右角が垂直状に形成されている。また,上端中央に,略U字状部が形成されている。 (C)透光部の態様についての共通点 (C-1)透光部の側面の態様 側面から見て,透光部の最大縦幅は,基台部の縦幅よりも小さく,透光部の横幅は基台部の下端の横幅よりもやや小さい。また,透光部の左右は垂直状に表され,透光部の下面は略凸弧状に表されている。 (C-2)透光部の底面の態様 底面から見て,透光部の横幅は,基台部の横幅よりもやや小さい。 (2)差異点 一方,両部分の具体的態様には,以下の差異点が認められる。 (ア)基台部の態様についての差異点 (ア-1)基台部の底面の態様 本願部分の基台部では,底面から見て,横幅:縦幅の比が約4:1であり,上部斜面:中央平坦面:下部斜面の縦幅の比が約1:2:1である。 これに対して,引用部分の基台部では,底面から見て,横幅:縦幅の比が約5.3:1であり,上部斜面:中央平坦面:下部斜面の縦幅の比が約1:1:1である。 (ア-2)基台部の側面の態様 側面から見て,本願部分の基台部では,横幅:縦幅の比が約3.8:1であり,略扁平台形状の斜辺が急傾斜に表されているが,引用部分の基台部では,その比が約6:1であり,同斜辺が緩傾斜で表されている。 (イ)透光部の態様についての差異点 (イ-1)透光部の底面の態様 本願部分の透光部では,底面から見て,横幅:縦幅の比が約8:1であるが,引用部分の透光部では,底面から見て,横幅:縦幅の比が約18:1である。 (イ-2)透光部の側面の態様 側面から見て,本願部分の透光部では,横幅:縦幅の比が約3:1であるが,引用部分の基台部では,その比が約5:1である。また,本願部分の透光部下面の略凸弧状の膨出の程度は大きいが,引用部分のその程度は僅かである。 第4 類否判断 1 意匠に係る物品 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)は,共に天井直付け灯であるから,両意匠の意匠に係る物品は同一である。 2 用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 両部分は,共に平面中央付近に破線で表された大きい円形(電源コード用の孔部と推認される。)と,その左右に表された小円形又は小楕円形(取付け孔部などと推認される。)を除いた部分であるから,両部分の位置,大きさ及び範囲は共通し,また,両部分は,共に天井直付け灯のほとんどを占める部分であり,天井直付け灯としての用途及び機能を有しているから,両部分の用途及び機能も共通する。 3 天井直付け灯の意匠の類否判断 天井直付け灯は天井面に設置される照明器具であり,通常の使用状態において看者が天井直付け灯を観察するに当たっては,その天井直付け灯を主として底面方向又は底面斜め方向から眺めることとなり,透光部の底面視態様,基台部の底面視態様及び底面から見た両者の構成態様について特に注意を払うことになる。したがって,天井直付け灯の物品分野の意匠の類否判断においては,上記の項目を特に評価し,かつそれ以外の項目も併せて,各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。 4 両部分の形態の共通点の評価 両部分の共通点で指摘した,(A)基本的構成態様についての共通点,並びに(B)基台部の態様についての共通点,及び(C-1)透光部の側面の態様については,正面視横長状で側面視下向きの略扁平台形状である基台部の下方に,側面から見て最大縦幅が基台部の縦幅よりも小さく,横幅が基台部の下端の横幅よりもやや小さい透光部が設けられて一体となった意匠は,本願の意匠登録出願前に「天井直付け灯」の物品分野で普通に見受けられることから(例えば,意匠登録第1483507号の意匠。別紙第3参照。),看者がこれらの共通点に特に注目することはないので,これらの共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。 また,底面から見て透光部の横幅が基台部の横幅よりもやや小さい共通点(C-2)についても,本願の意匠登録出願前に「天井直付け灯」の物品分野で普通に見受けられることから(例えば,意匠登録第1477564号の意匠。別紙第4参照。),看者がこの共通点に特に注目することはないので,この共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。 5 両部分の形態の差異点の評価 一方,両部分の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 まず,差異点(ア-1)で指摘した,底面から見た基台部の上部斜面:中央平坦面:下部斜面の縦幅の比が約1:2:1である本願部分と,その比が約1:1:1である引用部分の差異点は,側面から見ると,基台部の縦幅に対する横幅の比の差異及び略扁平台形状の斜辺が急傾斜であるか緩傾斜であるかの差異(ア-2)としても表されており,看者が一見して気付く差異であるということができる。また,差異点(ア-1)で指摘したとおり,本願部分の底面視基台部の横幅:縦幅の比が約4:1であり,引用部分のその比が約5.3:1であるから,引用部分に比較して本願部分の基台部の横幅(横方向)は約4/5.3倍と小さく(約0.75倍)なっているといえるところ,本願部分における中央平坦部縦幅(縦方向)の上部斜面又は下部斜面に対する比は引用部分の約2倍と大きくなっている。このように,横方向が縮小しているにもかかわらず中央の要素が縦方向に拡大している両部分の底面視基台部の態様の差異に対しては,看者は別異の美感を抱くというべきである。そうすると,差異点(ア)は,看者が底面から見た基台部の態様について特に注意を払うことを踏まえると,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすということができる。 次に,差異点(イ)で指摘した,本願部分の底面視透光部の横幅:縦幅の比が約8:1であるが引用部分のその比が18:1である差異と,側面視透光部下部の膨出の程度が本願部分では大きいのに対して引用部分では僅かである差異については,看者が気付く差異であって,看者が底面から見た透光部の態様について特に注意を払うことを踏まえると,両部分の視覚的印象に変化を与えているというべきであるから,差異点(イ)も両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすというべきである。 そして,差異点(イ)は,引用部分に比較して本願部分の透光部の横幅(横方向)は約8/18倍と小さく(約0.44倍)なっているといえるところ,本願部分における透光部縦幅の基台部上部斜面又は下部斜面に対する比は引用部分に比べて大きくなっており,この点は,上述した,本願部分における基台部中央平坦部縦幅(縦方向)の上部斜面又は下部斜面に対する比が引用部分の約2倍と大きくなっている差異を増長させるものであるから,差異点(ア)と差異点(イ)があいまって生じる視覚的効果も,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすということができる。 そうすると,差異点(ア)及び差異点(イ)は,いずれも両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,また,両者が相乗する視覚的効果も勘案すると,両部分の差異点を総合して両部分を全体として比較した際には,両部分を別異のものと印象付けるというほかない。 6 小括 したがって,両意匠の意匠に係る物品が共通し,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲も共通するものの,両部分の形態については,共通点は,両部分の類否判断に及ぼす影響が小さいものであるのに対して,差異点は,いずれも両部分の類否判断に及ぼす影響が大きく,両部分を全体として比較した際には両部分を別異のものと印象付けるものであるから,本願部分は,引用部分に類似するということはできない。すなわち,本願意匠は,引用意匠に類似しない。 第5 むすび 以上のとおり,本願意匠は原査定の引用意匠に類似することを理由にして,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2016-03-30 |
出願番号 | 意願2014-19287(D2014-19287) |
審決分類 |
D
1
8・
4-
WY
(D3)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 朝康 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
正田 毅 小林 裕和 |
登録日 | 2016-05-13 |
登録番号 | 意匠登録第1551887号(D1551887) |
代理人 | 羽切 正治 |