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審決分類 審判 査定不服  意48条1項3号非創作者無承継登録意匠 取り消して登録 F4
管理番号 1314374 
審判番号 不服2015-17026
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-16 
確定日 2016-04-26 
意匠に係る物品 包装用容器用型紙 
事件の表示 意願2012-23032「包装用容器用型紙」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2012年3月23日の域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)の出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成24年(2012年)9月24日付けの意匠登録出願に係り,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「包装用容器用型紙」とし,形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものであり,「正面図,背面図,平面図,底面図,右側面図,左側面図において,赤色で着色した部分以外の部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたもの(以下,本願意匠において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」といい,その意匠を「本願部分意匠」ということもある。)である(別紙第1参照)。

第2 引用意匠
原査定における,平成27年1月6日付けの拒絶の理由は,本願意匠が,その出願の日前の他の意匠登録出願であって,その後,意匠法第20条第3項又は同法第66条第3項の規定により意匠公報に掲載された意匠登録第1429518号の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)の一部と同一又は類似するものと認められるので,意匠法第3条の2の規定に該当するというものであって,その引用意匠の形態は,同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。

第3 当審の判断
1.本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「包装用容器用型紙」(以下,単に「型紙」ということもある。)であって,それは,願書の記載内容及び願書添付の図面から上部を屋根型とした略四角柱状の包装容器(ゲーブルトップ型紙容器。いわゆる牛乳パック状のもの。)に組み立てるものであり,包装容器としての正面部及び背面部に成る面,左右両側面から屋根に成る面,及び底面に成る面,並びにのり代部分を構成する紙材と認められる。

(2)本願部分意匠
本願部分は,略正方形の型紙の縦幅において上から約9分の2の部分の,左半分の右寄り半分及び右半分の右寄り半分(組み立てたときに,包装容器の正面及び背面に成る面)の位置に,略W字状に表れる2か所部分,略W字状部分の下側の,下方に凸の緩やかな曲線2か所部分,及び垂直線4か所部分(包装容器にしたときの,周面における4つの角部分)から成る合計8か所部分である。
本願部分のうち,当該略W字の部分は,左右両端の2本の線が,上下垂直方向に直線で表れ(包装容器にしたときの,屋根の妻側端部分(以下「ケラバ端部分」という。)),これらの中間に配された2本の線は,へこみ曲線と膨らみ曲線から成り,互いに内側にもたれるように上端で接した状態で表れ(折込み部(密封時に屋根奥に向かう斜面,開封して注ぎ口を引き出したときには注ぎ口底面に成る面)と折返し部(密封時にケラバ下面に成る面,開封して注ぎ口を引き出したときには注ぎ口側面に成る面)の間の折れ線部分),この接点の上方に垂直方向の短い直線(内側貼着片の中央折れ線部分)が表れるものである。

2.引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「包装容器」であって,型紙を組み立てたものであり,上部を屋根型とした略四角柱状のゲーブルトップ型の紙容器と認められるものである。

(2)引用部分意匠
引用意匠は,左右側面から屋根に成る部分である肩部に角が無く,滑らかに上端部のシール部(Σ字状にシールする貼着片。いわゆる「フィン」。)につながるもので,そして,開封して注ぎ口を引き出したときに,注ぎ口底面が湾曲した状態になるように,注ぎ口底面と正面(又は背面。以下同じ。)の間の折れ線が下方に凸の緩やかな曲線となっているものである。
本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両意匠部分」という。そして,引用部分の意匠を「引用部分意匠」ということもある。)は,周面の4つの角部分,ケラバ端部分,折込み部と正面の間の折れ線部分,及び折込み部と折返し部の間の折れ線部分,並びに,内側貼着片の中央折れ線部分であって,本願意匠のように型紙状に展開したときの当該部分の形態は,4つの角部分が,上下垂直方向に直線で表れ,折込み部と正面の間の折れ線が下方に凸の緩やかな曲線となって表れるのは明らかであるが,その他の部分の具体的な形態は不明である。

3.両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品
意匠に係る物品について両意匠を対比すると,本願意匠は「包装用容器用型紙」であって,引用意匠は「包装容器」であるから,意匠に係る物品は異なる。

(2)意匠法第3条の2の適用性
前記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が異なる。
しかし,意匠法第3条の2の規定は,先願の意匠の一部がほとんどそのまま後願の意匠として意匠登録出願されたときのように,実質的に後願の意匠が何ら新しい意匠の創作と認められない場合に,意匠登録を受けることができない旨を規定したものであるから,その趣旨を踏まえると,当該条文を適用するか否かの検討にあたっては,本願部分の用途及び機能と,先願に表れる形態中その一部に当たる引用部分の用途及び機能との異同をもって判断するものと解するべきである。
この考え方にのっとって,本件の場合について検討すると,本願意匠は引用意匠と同様の包装容器に成る「型紙」であって,本願意匠が包装容器に成った場合は,本願部分は,4つの角部分,ケラバ端部分,折込み部と折返し部の間の折れ線部分,及び折込み部と正面の間の折れ線,並びに,内側貼着片の中央折れ線部分と成るものであって,それに対して,引用部分は,包装容器における,4つの角部分,ケラバ端部分,折込み部と折返し部の間の折れ線部分,及び折込み部と正面の間の折れ線部分,並びに,内側貼着片の中央折れ線部分であるから,両意匠部分は,結果的には同じ用途及び機能になるものであるということがいえる。
そうすると,本願部分が包装容器に成る型紙の一部分であり,本願意匠が組み立てられたときには,本願部分は包装容器の一部分と成るものであって,前記のとおり,包装容器である引用意匠における引用部分と用途及び機能が同じと考えられるのであるから,3条の2の適用条件を満たしているとすることは,妥当である。

(3)形態
本願部分における形態は,「1.本願意匠」の「(2)本願部分意匠」のとおり,正面に成る面及び背面に成る面に略W字状に表れる2か所部分,その下側の下方に凸の緩やかな曲線2か所部分,及び垂直線4か所部分から成る合計8か所部分で,2か所の略W字状部分は共に,2本の垂直線と,その間に配した互いにもたれるように上端で接したへこみ曲線と膨らみ曲線から成る2本の曲線,及びその接点の上方に接する短い垂直線で表れ,略W字状部分の下の曲線は下方に凸の緩やかな曲線で表れ,その左右両端近傍に上端が位置するように長い垂直線が表れる。
それに対して,引用部分における形態は,型紙状に展開した状態においては,4つの角部分が垂直方向に表れる事,及び折込み部と正面の間の折れ線部分が下方に凸の緩やかな曲線で表れる事は明確であるが,それ以外の部分の,具体的な形態は不明であるから,両部分における形態の類否判断が,正確にできないものである。

(4)類否判断
したがって,本願部分意匠は,引用部分意匠に類似する,とは認められない。

4.結び
以上のとおり,本願意匠は,引用意匠の一部に類似するとは認められないため,意匠法第3条の2の規定に該当しないものであるから,原査定における拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-04-12 
出願番号 意願2012-23032(D2012-23032) 
審決分類 D 1 8・ 16- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 成田 陽一 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 刈間 宏信
橘 崇生
登録日 2016-05-27 
登録番号 意匠登録第1552781号(D1552781) 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 

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