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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 C5 |
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管理番号 | 1314376 |
審判番号 | 不服2015-20708 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-20 |
確定日 | 2016-05-11 |
意匠に係る物品 | 携帯用飲料容器 |
事件の表示 | 意願2014- 19688「携帯用飲料容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成26年(2014年)9月5日に出願された意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付された図面によれば,意匠に係る物品を「携帯用飲料容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。 この意匠登録出願の意匠は,携帯用飲料容器に係るものであるが,この種物品分野において,蓋部の形状を平面形状が略楕円形状のものに形成し,容器本体の円形開口部に接合することは,本願出願前に公然知られた事であるから(引例意匠1),本願の意匠は,本願出願前に公然知られた水筒の意匠(引例意匠2)において,蓋部を開口部の径の大きさに合わせるという普通に行われる手法で僅かな変更を加え,本願出願前に公然知られた態様に表して,携帯用飲料容器の意匠としたまでのものであるから,当業者が容易に創作できたものと認められる。 引例意匠1(別紙第2参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1474423号の意匠 (意匠に係る物品 断熱容器)の蓋部の意匠 引例意匠2(別紙第3参照) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2013年10月15日 受入日 特許庁意匠課受入2013年11月 1日 掲載者 ケンコーコム株式会社 表題 タイトルなし 掲載ページのアドレス http://photo.kenko.com/E335767H_L.jpg に掲載された「水筒」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ25043058号) 第3 請求人の主張の要旨 請求人は,要旨以下のとおり理由を述べ,本願意匠は登録すべきものである旨主張している。 1 引例意匠2との対比 引例意匠2(提示されたインターネット掲載ページの図示では不明確であったので,色彩が相違する同一商品を購入した)は,枠部材が半透明部材で形成されており,蓋部材の材質(質感)が大きく相違する。本願意匠は,蓋部材と同質材であると想定される。更に「周囲を曲面に形成した点が共通する」との指摘は正確ではない。本願意匠の栓体部の周囲は僅かに膨出した曲面であるが,引例意匠2は,「膨出曲面ではなく,螺旋状の筋突条を備えた山形曲面」である。従って,拒絶査定は本願意匠と引例意匠2の態様認定が正確ではない。 また,物品全体に対する蓋部を含む上部構成の高さ比率が大きく相違し,特に蓋部の直下の栓体枠の高さと蓋部の高さ比率が相違し,全体のバランス感が大きく相違する。具体的には,栓体枠を「10」とすると本願意匠の蓋部の高さは「20」で,引例意匠2は「12」であり,襟巻部の上方バランス(蓋部の高さ)が明らかに相違する。 2 引例意匠1との対比 本願意匠は,蓋部の中央に円形体を嵌合した構成において,蓋部上面を僅かな膨出曲面に形成し,この膨出曲面に合致させて中央円形体の上面も膨出曲面としている。これに対して引例意匠1は,楕円蓋部の平面形状に倣う楕円形状であり,且つ蓋部の上面よりも一段下がった位置に設けられている。 この蓋部上面の形状は明らかに相違し,一見して認識される形態上の相違である。 3 本願意匠の創作性 本願意匠は,引例意匠2の「栓体枠」の形態をそのまま採用したものでは無く,蓋体全体の高さバランスの相違,栓体枠の周面形状の相違,材質感の相違が認められ,更に引例意匠1に楕円蓋部の形態もそのまま採用しているものでは無く,蓋部上面の形態,中央円形体の大小バランスが大きく相違しており,本願意匠は,独自の美感を奏していることは明らかである。 拒絶査定では,引例意匠1,2と本願意匠との形態上の相違について,厳格に認定されておらず,単なる基本的構成の組み合わせ(栓体枠の採用と楕円蓋部の採用)にのみに着目して意匠の創作性の存否を認定している。しかし本願意匠は前記したとおり具体的構成態様に十分な意匠の創作がなされており,創作性を具備しているものである。 4 むすび 以上のとおり本願意匠は,引例意匠1,2の形態に基づいて当業者が容易に創作をすることができたものではなく,登録されるべきものである。 第4 当審の判断 1 意匠の認定 (1)本願意匠 1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「携帯用飲料容器」である。 2)形態 ア 基本的構成態様 全体を,本体と蓋体から構成される略縦長円柱状としたものである。 イ 具体的態様 (ア)本体の直径の長さと,本体及び蓋体から成る全体の高さの比を約1:3.3とし, (イ)本体を略円柱状として,その上端には,外側に弧状に膨出した細幅の平面視環状別部材(以下,「栓体枠」という。)を嵌着し, (ウ)蓋体は,下端縁部の外周形状を栓体枠の上端縁部の外周形状と略同径の円形状とし,上端縁部の外周形状を平面視略変形楕円形状として,下端縁部から上端縁部に向かって徐々に拡径したものとし,平面視中央に円形状の別部材を嵌着した上面を,僅かに上方に膨出した形態とし, (エ)蓋体,栓体枠及び栓体枠を除いた本体それぞれの高さの比を,約2:1:18としたものである。 (2)引例意匠1 引例意匠1の意匠に係る物品は,「断熱容器」であって,その基本的構成態様は,全体を,本体と蓋体から構成される略縦長円柱状としたものであり,具体的形態は,本体の直径の長さと,本体及び蓋体から成る全体の高さの比を約1:1.8とし,蓋体は,下端縁部の外周形状を本体の上端縁部の外周形状と略同径の円形状とし,上端縁部の外周形状を左右端部に僅かに外側に突出した角を形成した平面視略幅広「木の葉」状として,下端縁部から上端縁部に向かって徐々に拡径したものとし,上面外周形状より一回り小さな略同形の略幅広「木の葉」状の平坦な別部材を平面視中央に嵌着して凹状面を形成したものとし,蓋体及び本体それぞれの高さの比を,約3:8としたものである。 (3)引例意匠2 引例意匠2の意匠に係る物品は,「水筒」であって,その基本的構成態様は,全体を,本体と蓋体から構成される略縦長円柱状としたものであり,具体的形態は,本体の直径の長さと,本体及び蓋体から成る全体の高さの比を約1:3.3とし,本体を略円柱状として,その上端には,外側に弧状に膨出した細幅の栓体枠を嵌着し,蓋体は,平面図がないために明示されていないが,上面の外周形状はごく一般的な平面視円形状のものと推認され,下端縁部から上端縁部に向かって僅かながら徐々に拡径したものとし,上面を平坦面として,蓋体,栓体枠及び栓体枠を除いた本体それぞれの高さの比を,約1.8:1:16としたものである。 なお,請求人は,原審の拒絶理由通知書で提示されたインターネット掲載ページの図示では引例意匠2の形態が不明確であったので,色彩が相違する同一商品を購入し,その意匠(以下,「請求人引例意匠」という。)に基づいて引例意匠2を認定して,本願意匠との対比を行っているが,請求人引例意匠は,引例意匠2とは形態が相違するものであるから,請求人引例意匠に基づいた請求人の主張は,採用することができない。 2 創作非容易性の判断 以下,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。 原査定における拒絶の理由の主旨は,本願意匠は,本願出願前に公然知られた引例意匠2に基づいて,蓋体の態様を,本願出願前に公然知られた引例意匠1の蓋体の態様に置き換えただけのものである,としたものであり,拒絶査定によれば,栓体枠の幅の相違及び蓋体上面の態様の相違については,僅かな変更にすぎないものであるから,当業者であれば容易に創作をすることができたものである,と評価している。 たしかに,本願意匠と引例意匠2は,意匠に係る物品がそれぞれ「携帯用飲料容器」と「水筒」であって共通するものであり,基本的構成態様,本体の直径の長さと本体及び蓋体から成る全体の高さの比,並びに本体の上端に,外側に弧状に膨出した細幅の栓体枠を嵌着しているという具体的形態が共通している。他方,これらの意匠は,蓋体,栓体枠及び栓体枠を除いた本体それぞれの高さの比を,本願意匠は2:1:18とし,引例意匠2は約1.8:1:16としている点が相違しているが,各構成要素の長さ比を僅かに変更することは,携帯用飲料容器が属する物品分野に限らず,あらゆる物品分野において常套的に行われる改変であるから,本願意匠の栓体枠を含む本体の形態は,引例意匠2の水筒の本体の形態に,携帯用飲料容器が属する物品分野においてありふれた改変を僅かに加えた程度のものであって,引例意匠2の本体の形態をほとんどそのまま表したものであるということができる。 しかし,本願意匠の蓋体の態様は,以下の理由により,当業者が容易に創作することができたものということはできない。 まず,本願意匠と引例意匠1の蓋体の態様については,本願意匠は,上端縁部の左右端部が丸みを帯びた平面視略変形楕円形状であり,それによって蓋体周面も全体として角張っていない態様となっているのに対し,引例意匠1は,上端縁部の平面視左右端部が僅かに外側に突出して角張っている平面視略幅広「木の葉」状であり,それによって蓋体周面も左側面側及び右側面側が角張っている点が相違している。また,蓋体の上面の態様についても,本願意匠は,平面視中央に円形状の別部材を嵌着し,上面全面を僅かに上方に膨出した曲面としているのに対し,引例意匠1は,上面外周形状より一回り小さな略同形の略幅広「木の葉」状の平坦な別部材を平面視中央に嵌着して凹状面を形成している点についても相違している。 この点,原査定においては,本願意匠と引例意匠1の蓋体の態様の相違は僅かな変更を加えただけにすぎないものであると判断しているが,携帯用飲料容器が属する物品分野においては,蓋体の平面視形状を真円状とすることが一般的であって,本願意匠のように,角張っていない真円状以外の形状の蓋体は,本願出願前には見られないものであり,また,本願意匠の蓋体上面は,平面視円形状の別部材を面一に嵌着しており,丸みを帯びて柔らかく滑らかな印象を看者に与えるものである一方,引例意匠1の蓋体上面は,左右が角張った平面視略幅広「木の葉」状の別部材が周囲の蓋体上面より下がった凹状面を形成するように嵌着しており,角張っている複雑な面構成であるという,本願意匠の蓋体上面とはまったく異なる印象を看者に与えるものであるから,本願意匠の蓋体の態様は,引例意匠1の蓋体の態様に,携帯用飲料容器が属する物品分野においてありふれた改変を僅かに加えた程度のものということはできない。 そして,蓋体の下端縁部を円形状とし,上端縁部を平面視略変形楕円形状として,下端縁部から上端縁部に向かって徐々に拡径したものとし,平面視円形状の別部材を平面視中央に嵌着した上面を,僅かに上方に膨出したという本願意匠の蓋体の態様は,本願出願前には見られない本願意匠独自の特徴的な態様であると認められる。 よって,本願意匠は,本願出願前に公然知られた形態に基づいて,当業者が容易に創作することができたものということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-04-06 |
出願番号 | 意願2014-19688(D2014-19688) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(C5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 内藤 弘樹 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
久保田 大輔 渡邉 久美 |
登録日 | 2016-05-27 |
登録番号 | 意匠登録第1552670号(D1552670) |
代理人 | 近藤 彰 |