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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 H1
管理番号 1315704 
審判番号 不服2015-22498
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-22 
確定日 2016-05-17 
意匠に係る物品 リレー 
事件の表示 意願2015- 4755「リレー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成27年(2015年)3月4日に出願された意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「リレー」とし,その形状,模様若しくは色彩又はそれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第2 原審の拒絶の理由

原審における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載された本意匠(平成26年(2014年)10月30日に出願され(意願2014-24345号),平成27年3月13日に意匠権の設定の登録がなされ,同年4月13日に意匠公報が発行された,意匠登録第1521510号(意匠に係る物品,「リレー」)の意匠(以下,「本意匠」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである(別紙第2参照)。)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであって,具体的には以下のとおりである。

本願意匠と本意匠(以下,「両意匠」という。)とは,底面部下方に突設された端子が異なる特徴的形状を成したものであり,当該端子は意匠全体においてかなりの大きさのものであり,また,底面部全体に多数設けられているので,類否判断に及ぼす影響が大きく,それに対し,共通する形状の筐体部は全体としては単なる直方体形状であり,また,側面上部に突設された端子と思われる棒状部は極細く短いものであるので,類否判断に及ぼす影響は微弱であり,したがって,両意匠は類似しないものと認められる。

第3 手続きの経緯

原審の上記拒絶の理由に対して,出願人は,平成27年(2015年)8月10日に意見書を提出し,本願意匠は本意匠に類似するため,意匠法第10条第1項の規定により,意願2014-024345号意匠を本意匠とする関連意匠として意匠登録されるべきものであると主張したが,同年9月28日付けで拒絶査定がなされたため,審判請求書と同日の同年12月22日に手続補正書を提出し,願書に記載の「本意匠の表示」を削除し,本願を関連意匠の意匠登録出願ではないものに変更するとともに,審判請求書において,意匠法10条1項の規定に該当しないとした拒絶の理由は解消したため,原査定を取消して本願は登録すべきものであるとの審決を求めている。

第4 当審の判断

以下,本願意匠が本意匠とは類似せず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであるか否かについて検討する。

1.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品について
両意匠の意匠に係る物品は,いずれも「リレー」であるから一致する。

(2)形態について
まず,共通点として,
(A)全体は,正面視の縦横比及び側面視の横幅の比を約1:1.5:0.4とする略直方体状の本体(以下,「本体部」という。)の底面側に,板状端子板を一列に6つ配設した端子部(以下,「板状端子部」という。)を形成したものであって,
(B)本体部は,その正面側全面部分に略横長長方形状の板状封止部(以下「板状封止部」という。)を設け,本体部の正面左端部上方寄りの位置及び正面右下角部の位置に背面まで貫通する小円孔を一つずつ形成した構成としたものであって,板状封止部の右上角部の側面部分には,略細長四角柱状の棒状端子を縦一列に3つ配した端子部(以下,「棒状端子部」という。)を形成している点,
(C)板状端子部の板状端子板は,上辺の一端部分を僅かに上方に突出させた略隅丸横長長方形状の板体からなり,この上方に突出させた部分は,側面視において本体部側面の約1/4の幅であって,この部分の上面で本体部底面部分と接合している点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)板状端子部の態様について,本願意匠は,板状端子板の側面視の横幅を本体部の側面視の横幅の約85%とした側面視略隅丸横長長方形状のものを横一列になるように平行に6つ配設しているのに対して,本意匠は,折曲した板状端子板の側面視の横幅を本体部の側面視の横幅の約42%とし,板状端子板を底面視でL字が横一列に並ぶように同方向に6つ配設している点,
(イ)棒状端子部の態様について,本願意匠は,棒状端子部の上面側板状部分の形態を太幅な平面視略逆L字状に形成しているのに対して,本意匠は,平面視横長長方形状に形成している点,
が認められる。

2.両意匠の類否判断
まず,両意匠の意匠に係る物品は一致するものであるから,これを踏まえた上で,以下,両意匠の形態の共通点及び形態の相違点について評価し,両意匠の類否を総合的に判断する。

(1)形態の共通点の評価
まず,共通点(A)の略直方体状の本体部の底面側に,板状端子部を等間隔に一列に6つ配設した点については,リレーの基本的構成態様としては既に見られるものであり,取り立てて特徴的な態様とはいえないものであるから,この共通点(A)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。
次に,共通点(B)の本体部正面側全面部分に板状封止部を設け,本体部2箇所に貫通する小円孔を形成し,本体部の右上角部の側面部分に棒状端子部を形成した点については,この種リレーの分野においては,本体部正面側全面部分に板状封止部を設けること,及び略細長四角柱状の棒状端子を設けることは,極普通に行われている特段の特徴のない形態であり,本体部を貫通する小円孔についても微細なものであって,さほど目立つものではないため,この共通点(B)が両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。
また,共通点(C)の板状端子板の一部を突出させ,本体部底面部分に本体部側面視の横幅の約1/4の幅で接合している点については,意匠を全体として観察した場合に,底面部の極一部の形態に係るものであって,目に付かないものであるから,この共通点(C)が両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものである。
そして,これらの共通点は,全体としてみても,両意匠の類似性についての判断を決定付けるまでには至らないものである。

(2)形態の相違点の評価
相違点(ア)板状端子部の態様については,この種物品分野のリレーは,板状端子部に対応するソケットと嵌合して使用するものであるから,板状端子部における板状端子板の形態及びその配置態様は,需要者の特に注目する部位であるところ,略隅丸横長長方形状の板状端子板がフィンのように平行に6つ配設されたとの印象を与える本願意匠の態様と,略L字状に折曲した板状端子板が隙間をつめて横一列に6つ配設されたとの印象を与える本意匠のものとは,その板状端子板自体の大きさの相違と相まって別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きい。
そして,この相違点(ア)による視覚的効果は,他の部品等との接続部という重要な箇所に係るものであって,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであるということができる。
他方,相違点(イ)棒状端子部の態様については,意匠全体として見たときには,板状封止部の上面右端部における微細な相違であるから,この相違点(b)が両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。

(3)小括
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については一致するものの,形態については,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,相違点(ア)が類否判断に及ぼす影響は非常に大きく,共通点及び相違点を総合的に評価すると,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせているものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

第5 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,本意匠に類似せず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであるから,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものであるが,前記第3に記載のとおり,請求人が平成28年12月22日に提出した手続補正書によって本願願書の本意匠の表示を削除する補正がなされ,原審の拒絶の理由は解消しているので,当該拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2016-04-26 
出願番号 意願2015-4755(D2015-4755) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
橘 崇生
登録日 2016-06-10 
登録番号 意匠登録第1553580号(D1553580) 
代理人 田中 光雄 
代理人 中嶋 隆宣 
代理人 岡崎 博之 
代理人 山田 卓二 

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