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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1315713 
審判番号 不服2016-2857
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-25 
確定日 2016-06-07 
意匠に係る物品 電線 
事件の表示 意願2015-4778「電線」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)3月5日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「電線」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁発行の公開特許公報記載 平成6年特許出願公開第109172号(発明の名称「ケーブル」)において,【図2】及び【図3】に表されたケーブルの意匠のうち,符号「22」で示されたリブの本願実線部分に相当する部分であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである(以下,引用意匠において,本願実線部分に相当する部分を「引用相当部分」といい,本願実線部分と合わせて「両意匠部分」という。)。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「電線」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「ケーブル」であって,表記は異なるが,両意匠の意匠に係る物品が共通することは明らかである。

(2)両意匠部分の用途及び機能
引用意匠に係る公報の記載(段落【0005】参照)によれば,引用相当部分は,ケーブルを保護管内に引き込む際の摺動抵抗を減少させる用途や機能を有するものである。そして,本願実線部分も,本願意匠に属する分野における通常の知識を有する者により,ほぼ同様の用途や機能を有すると推認できるし,本願意匠の願書及び願書に添付した図面には,この推認を妨げる記載がないことから,両意匠部分の用途及び機能は共通する。

(3)両意匠部分の位置,大きさ及び範囲
両意匠部分は,電線の被覆部外周に複数設けられた1条の突起の全体を占める部分であるから,大きさ及び範囲は一致する。
しかし,本願実線部分は,両隣の突起と接する位置にあるのに対して,引用相当部分は,両隣の突起と間隔を開けた位置にあるから,両意匠部分の位置は相違する。

(4)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)
<共通点>
両意匠部分は,基本的態様として,
(A)側面視略台形状の突起である点,
具体的な態様として,
(B)突起の下端の幅と上端の幅の比が,略2:1である点,
(C)突起の下端の幅と突起の高さの比が,略1.5:1である点,
で共通する。

<相違点>
両意匠部分は,具体的態様として,
(ア)突起の上端左右の角に,本願実線部分は大きなアールが付いているのに対して,引用相当部分はアールが付いていない点,
(イ)突起の左右の側面が,本願実線部分は平面状であるのに対して,引用相当部分は僅かに膨出する曲面状である点,
で相違する。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
両意匠の意匠に係る物品は共通するところ,両意匠部分の用途及び機能,位置,大きさ及び範囲並びに両意匠部分の形態については,以下のとおりである。

(1)両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両意匠部分の用途及び機能が共通し,両意匠部分の大きさ及び範囲が一致するものの,両意匠部分の位置は相違しており,この相違は,両意匠部分の機能の優劣に関係するといえる。すなわち,引用相当部分の機能は,ケーブルと保護管との間の摺動抵抗を減少させるというものであって,そのために突起を設けてケーブルの接触面積を減少させていることから,引用相当部分の突起は,両隣の突起と間隔を開けた位置にあるように創作されたと解される(例えば,本願実線部分のように,両隣の突起と接する位置にあるとすると,ケーブル全体の突起の数が増えることになり,ケーブルの接触面積や摺動抵抗が増えてしまい,引用相当部分よりも機能が劣ることになる。)。そして,本願実線部分も引用相当部分と同様の機能を有すると推認でき,この機能を前提とする限り,両隣の突起と接する位置にあるか,それとも間隔を開けた位置にあるかという相違は,機能の優劣に関わる両意匠部分の位置の相違であり,その相違に対して需要者は着目するというべきであるから,両意匠部分の位置が相違する点は,両意匠部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものというほかない。

(2)両意匠部分の形態についての共通点の評価
共通点(A)は,両意匠部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるし,略台形状の突起自体は,電線の物品分野において,他にも見られるから,この点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。
また,具体的態様としてあげた共通点(B)及び(C)は,略台形状の突起という共通感を多少高めるものであるから,両意匠部分の類否判断に一定程度の影響を与えるといえる。
そして,共通点全体としても,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(3)両意匠部分の形態についての相違点の評価
相違点(ア)は,突起の上端左右の角に,本願実線部分は大きなアールが付いているのに対して,引用相当部分はアールが付いていないというものであるところ,突起の上端左右の角に大きなアールを付けるという形態は,本願実線部分だけに見られるものであるし,非常に目に付きやすい部分であるから,相違点(ア)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
これに対して,相違点(イ)は,突起の左右の側面が,本願実線部分は平面状であるのに対して,引用相当部分は僅かに膨出する曲面状であるというものであるところ,引用相当部分の側面の膨出の程度が僅かであるから,相違点(イ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。
そして,相違点(ア)及び(イ)があいまった視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするといわざるを得ない。

(4)小括
そうすると,両意匠の意匠に係る物品は共通し,両意匠部分の用途及び機能は共通し,両意匠部分の大きさ及び範囲は一致するものの,両意匠部分の位置は相違する。
また,形態においては,共通点が未だ両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠部分全体として見た場合,相違点の印象は共通点の印象を凌駕し,両意匠部分は視覚的印象を異にするというべきである。
したがって,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-05-24 
出願番号 意願2015-4778(D2015-4778) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2016-07-01 
登録番号 意匠登録第1555074号(D1555074) 
代理人 吉田 親司 
代理人 小出 俊實 
代理人 蔵田 昌俊 

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