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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 E0 |
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管理番号 | 1318109 |
審判番号 | 不服2015-21025 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-26 |
確定日 | 2016-07-19 |
意匠に係る物品 | 愛玩動物用吸収体装着具 |
事件の表示 | 意願2014- 19383「愛玩動物用吸収体装着具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成26年(2014年)9月3日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「愛玩動物用吸収体装着具」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下,「引用意匠」という。)に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するというものであって,その形態は,下記サイト掲載ページの写真版に現されたとおりのものである。(別紙第2参照) 記 (引例意匠) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2010年 1月11日 受入日 特許庁意匠課受入2010年 1月15日 掲載者 新日本カレンダー株式会社 表題 男の子のためのマナーホルダー - ペット用品通販 ペピイ 掲載ページのアドレス http://www.peppynet.com/shop/kaku.php?id=427110 に掲載された「愛玩動物用衣服」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ21054143号) また,原審において,本願意匠のように吸収体保持部の下方をベルト部の下端の延長上に真っ直ぐに形成した態様は,本願のみに見られる特徴的な態様ではなく,従来から既に見られる態様である例示として以下の参考意匠1及び参考意匠2があげられ,参考意匠1の形態は,下記公開特許公報に記載されたとおりのものであり(別紙第3参照),参考意匠2の形態は,下記サイト掲載ページの写真版及びその関連する記載に現されたとおりのものである。(別紙第4参照) (参考意匠1) 日本国特許庁が平成19年(2007年)7月12日に発行した 公開特許公報 特開2007-175031 【図1】に表された「動物用吸収体保持バンド」の意匠 (参考意匠2) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2007年3月17日 受入日特許庁意匠課受入 2007年4月13日 掲載者 新日本カレンダー株式会社 表題 消臭マナーベルト-ペット用品通販ペピイ 掲載ページのアドレス http://www.peppynet.com/shop/shop.php?id=067148 に掲載された「ペット用おむつカバー」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ18011175号) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「愛玩動物用吸収体装着具」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「愛玩動物用衣服」であって,表記は異なるが,引用意匠に係る前記サイト掲載ページの記載等を総合的に判断すれば,愛玩動物に吸収体を装着するために用いることが明らかであるから,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,共通する。 (2)両意匠の形態 意匠の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。) ア 共通点 両意匠は,基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。 (A)全体は,略倒H字形状であって,中央に上部を凸弧状に形成した略縦長矩形状の吸収体保持部を設けて,左右に略帯状の装着ベルトを上下段,2つずつ設けた点, また,両意匠は,具体的形態として,以下の共通点が認められる。 (B)略縦長矩形状の吸収体保持部の左右に設けた略帯状の装着ベルトについて上段より下段のものをやや短く形成している点, (C)周縁部を細幅の縁材で隈なく縁取っている点において共通する。 イ 相違点 一方,両意匠は,具体的形態として,以下の差異点が認められる。 (a)上部を凸弧状に形成した略縦長矩形状の吸収体保持部について,本願意匠はその下部について下段の装着ベルトの下辺の延長線上となるような直線状に形成されているのに対し,引用意匠は吸収体保持部の下部は外方へ凸弧状に形成されている点。 (b)略縦長矩形状の吸収体保持部の吸収体を保持する保持片について,本願意匠は,上部が吸収体保持部の横幅いっぱいに略半円状の保持片を直線辺部を開口部として下向きに設け,下部は二つの略直角三角形状の保持片を直角部に角部を合わせて左右向き合って配し,斜辺部を開口部としているのに対し,引用意匠は上下とも横幅いっぱいに太めの略三日月状の保持片を設け,上下に向き合う内側の浅い弧状辺部を開口部としている点。 (c)略帯状の装着ベルトの部について,本願意匠は上下段ともに平行状に設けられ,先端部も角部を隅丸状とした略隅丸短冊状で左右同様のものであるのに対して,引用意匠は,正面視左側の装着ベルトは上下段ともに平行状で,先端部は略隅丸短冊状であり,右側の装着ベルトは,上下段がごくわずかに略ハの字状に広がったもので,先端部は,ほぼ円弧状のものであって,左右が異なるものである点が相違する。 2.両意匠の類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 (1)意匠に係る物品 前記認定のとおり,両意匠は,意匠に係る物品は共通する。 (2)形態の共通点の評価 共通点(A)の全体形状については,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の基本的構成態様の共通点に過ぎないものであり,さらに,「愛玩動物用吸収体装着具」の分野においては,全体形状が略倒H字状で左右2つずつの略帯状の装着ベルトを設けたものは,普通に見受けられるものでもあって,この点のみをもって両意匠の類否判断を決するということはできない。また,共通点(B)の略帯状の装着ベルトについて上段より下段のものをやや短く形成している点は,その上下段の,装着する際の使い勝手に関する具体的な態様に関するものであるが,略帯状の上下段の装着ベルトの長短の程度も格別目立つ程の長短差があるとまではいえないものであって,この共通点については,両意匠部分の類否判断に与える影響は一定程度に留まるものである。加えて,共通点(C)については,周縁部を細幅材で縁取ることは,この種「愛玩動物用吸収体装着具」の分野に限らず,服飾品や衛生用品(おむつカバーなど)において極めて普通に行われている縁部の加工手法の一つであるから,この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。 したがって,共通点(B)については,一定程度,両意匠の類否判断に影響を与えるものであるが,両意匠を全体として観察する場合には,結局は,類否判断を決定づける程の共通性があるものとはいえず,共通点(A)及び共通点(C)は,いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいものであって,両意匠の形態の共通点(A)ないし(C)を総合しても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (3)形態の相違点の評価 これに対して,相違点(a)の略縦長矩形状の吸収体保持部の下部の態様について,本願意匠は,下段の装着ベルトの下辺の延長線上となるような直線状に形成されているのに対し,引用意匠は外方へ凸弧状に形成されている点について,吸収体保持部の上方もしくは,上下両方を直線状に形成したものが本願意匠出願前に「愛玩動物用吸収体装着具」の物品分野において見受けられるとしても(参考意匠1,参考意匠2),引用意匠のように吸収体保持部の上部及び下部を凸弧状として上下対称に形成したものと,本願意匠のように上部を凸弧状に下部を直線状に形成したものとでは,生じる視覚的印象が異なるといわざるを得ず,この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 また,相違点(b)は,この「愛玩動物用吸収体装着具」の物品分野において,需要者が大きな関心をもって注視するといえる吸収体を装着具に保持するための保持片の具体的態様についてであって,特に吸収体保持部の下部の態様において,本願意匠は略直角三角形状の保持片を左右角部に向き合って設けているのに対し,引用意匠は横幅いっぱいに太めの略三日月状の保持片を設けている点は,その保持片の形状のみならず,配置態様も大きく異なり,両意匠を別異のものと印象付けるのに十分であって,両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいといえる。 そして,相違点(c)は,略帯状の装着ベルトの態様についてであるが,本願意匠のベルト部は上下段,左右ともに平行状であるのに,引用意匠の右側上下段のベルト部がごくわずかに略ハの字状に広がったものである点は,その広がりの程度は,注視してそれとわかる程度のごくわずかなものであるから,両意匠の類否判断に与える影響はごく小さいものであり,先端部の態様について,略隅丸短冊状の態様もほぼ円弧状の態様も双方とも「愛玩動物用吸収体装着具」の物品分野に限らず,例えば、服飾用品,衛生用品(おむつカバーなど),健康用品(腰椎ベルト,サポーターなど)など広く,ごく普通に見られる帯状体の先端部の態様であって,略隅丸短冊状で,左右同様のものか,一方が略隅丸短冊状であって,もう一方がほぼ円弧状で左右が異なるものであるかの点で相違はあるものの,双方とも需要者が殊更に注意を払うとはいえないありふれた態様同士の相違であって,この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものとはいえない。 そうすると,相違点(c)が両意匠の類否判断に与える影響は大きくないとしても,差異点(a)は,両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きく,差異点(b)は両意匠の類否判断に及ぼす影響が極めて大きいものであって,これらの差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるのに十分であるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。 3.小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するものの,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4.むすび 以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-07-05 |
出願番号 | 意願2014-19383(D2014-19383) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(E0)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 八重田 季江 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 正田 毅 |
登録日 | 2016-08-26 |
登録番号 | 意匠登録第1559501号(D1559501) |
代理人 | 西教 圭一郎 |