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審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 D3 |
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管理番号 | 1318119 |
審判番号 | 不服2015-20970 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-26 |
確定日 | 2016-08-17 |
意匠に係る物品 | 天井直付け灯 |
事件の表示 | 意願2015- 4140「天井直付け灯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成27年(2015年)2月27日の意匠登録出願であって,本願の願書の記載によれば,その意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は「天井直付け灯」であり,本願意匠の形態は,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,願書の記載によれば,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本願部分」という。)である。」としたものである(別紙第1参照)。 第2 原審の拒絶の理由 原審における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠(意願2015-4139。以下,単に「本意匠」という。)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであって,具体的には以下のとおりである。 「本願意匠と願書に記載した本意匠は,部分意匠に係る出願につき,意匠登録を受けようとする部分の範囲の正面視縦横比等に顕著な差違が認められ,加えて全体におけるレンズ部の占める比率についても差異が認められ,これらは類否判断に大きく影響するものですので,本願の意匠は,願書の記載の本意匠番号の意匠に類似するものとは認められません。」 第3 手続きの経緯 上記原審の拒絶の理由に対して,請求人は意見書を提出し,本願意匠が本意匠に類似するものとして登録されるべきである旨主張したが,同主張を採用できないとして拒絶の査定がなされたため,同査定を不服として平成27年(2015年)11月26日に審判を請求し,原査定を取り消し本願意匠を登録すべきとの審決を求めるとともに,同日に手続補正により本願の本意匠の表示を削除した。 第4 当審の判断 以下,本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて検討する。 1 本意匠 本意匠に係る出願は,本願と同日の平成27年(2015年)2月27日に意匠登録出願され,同年12月25日に意匠権の設定の登録がなされ,平成28年(2016年)2月1日に意匠公報が発行されている。 その公報の記載によれば,本意匠の意匠に係る物品は「天井直付け灯」であり,本意匠の形態は図面に記載されたとおりであって,「意匠の説明」には「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本意匠部分」という。)である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分と,その他の部分との境界のみを示す線である。」と記載されている(別紙第2参照)。 2 本願意匠と本意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「天井直付け灯」であり,本意匠の意匠に係る物品も「天井直付け灯」である。 (2)用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分の位置,大きさ及び範囲は,底面視左上にある「点検スイッチ」及びその周囲の開口部を除いた部分であって,天井直付け灯の殆どを占める部分であり,天井直付け灯としての用途及び機能を有している。 また,本意匠部分の位置,大きさ及び範囲は,平面部及び平面部寄りの周側面を除いた部分であり,かつ底面視左上にある「点検スイッチ」及びその周囲の開口部を除いた部分であって,主として天井面に取り付ける部位を含んでいないことから,天井直付け灯の用途及び機能うち,天井面に取り付ける用途及び機能を有していない。 (3)形態 本願部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 なお,両部分は位置,大きさ及び範囲が異なるので,本願部分における本意匠部分に相当する部分と本意匠部分とを比較する。 ア 共通点 両部分の形態には,以下の共通点が認められる。 (A)全体が,略逆円錐台形状であって,底面中央に発光部が設けられており,その発光部は,底面下方に突出している。 (B)略逆円錐台形状部は,斜面の傾斜が急であり,底面の縁が角張っている。 (C)発光部とその周囲の態様についての共通点 (C-1)発光部の態様 底面から見た発光部の形状は円形状であり,縁部に形成されたテーパー面の存在により3重円状に表されている。また,正面から見て,そのテーパー面の上下が水平状稜線として表されている。 (C-2)発光部周囲の態様 発光部の周囲には,底面視円環状の隆起部が形成されており,該隆起部は,正面視略扁平台形状に表されている。 イ 差異点 一方,両部分の形態には,以下の差異点が認められる。 (a)略逆円錐台形状部の構成態様についての差異点 正面から見た略逆円錐台形状部の斜面の傾斜は,本願部分に比べて本意匠部分の方が急であり,本意匠部分の傾斜は垂直に近い急傾斜に表されている。また,略逆円錐台形状部は,本意匠部分の方が本願部分に比べて扁平である。 (b)略逆円錐台形状部底面に占める発光部の比率の差異点 底面から見て,略逆円錐台形状部底面の直径:発光部の直径の比は,本願部分では約3:1であるが,本意匠部分では約9:2である。 3 類否判断 (1)意匠に係る物品 前記認定したとおり,本願意匠と本意匠の意匠に係る物品は同一である。 (2)用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 前記認定したとおり,本願部分は天井直付け灯の殆どを占める部分であるのに対して,本意匠部分は平面部及び平面部寄りの周側面も除かれているので,両部分の位置,大きさ及び範囲は大きく異なっており,また,本意匠部分は天井面に取り付ける用途及び機能を有していないことから,両部分の用途及び機能も異なっている。 (3)天井直付け灯の意匠の類否判断 天井直付け灯は天井面に設置される照明器具であり,通常の使用状態において看者が天井直付け灯を観察するに当たっては,その天井直付け灯を主として底面方向又は底面斜め方向から眺めることとなり,透光部の底面視態様,基台部の底面視態様及び底面から見た両者の構成態様について特に注意を払うことになる。したがって,天井直付け灯の物品分野の意匠の類否判断においては,上記の項目を特に評価し,かつそれ以外の項目も併せて,各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。 (4)形態の共通点の評価 両部分の形態の共通点(A)で指摘した,全体が略逆円錐台形状である点については,両部分の共通点として一定程度評価できるとしても,両部分の底面中央に発光部が設けられて,その発光部が底面下方に突出した態様は,天井直付け灯の物品分野においては本願の出願前にごく普通に見受けられることから看者の注意を殊更惹くものとはいえない。また,共通点(B)の略逆円錐台形状部の斜面の傾斜が急である点については,上記の差異点(a),すなわち,本意匠部分の傾斜が垂直に近い急傾斜であって本願部分と異なっている点を踏まえると,両部分の斜面の傾斜が看者に共通の視覚的印象を与えているということはできない。さらに,共通点(C-1)の発光部の態様については,縁部に形成されたテーパー面が局所的部分的なものであるから看者が特段注目するとはいえず,共通点(C-2)の円環状隆起部も,正面視略扁平台形状に表されている点を踏まえても,それほど目立つものではないので,看者に独特の美感を与えるほどのものではない。 したがって,全体が略逆円錐台形状である共通点については一定程度評価できるとしても,共通点を総合すると,共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。 (5)形態の差異点の評価 これに対して,両部分の形態の差異点については,以下のとおり評価される。 差異点(a)で指摘した,略逆円錐台形状部の斜面の傾斜が本意匠部分では急であり,本意匠部分の略逆円錐台形状部が扁平である差異については,看者が一見して気付く差異であって,天井直付け灯を底面方向又は底面斜め方向から眺めたときの両部分の全体的印象に関する差異であるから,差異点(a)が両部分の類否判断に及ぼす影響は,一定程度認められる。 他方,差異点(b)の略逆円錐台形状部底面に占める発光部の比率の差異については,本願部分の約3:1(=約9:3)と,本意匠部分の約9:2との差は小さいというべきであって,天井直付け灯の底面部に占める発光部の割合には様々なものがあることを踏まえると,看者がその比の差異に特に注意を払うとはいい難いので,差異点(b)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。 そうすると,差異点(b)の影響は小さいものの,差異点を総合すると,差異点が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。 (6)総合判断 以上のとおり,形態の共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいのに対して,形態の差異点が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。また,形態の共通点のうち,全体が略逆円錐台形状である共通点については一定程度評価できるが,この共通点は,本願部分における本意匠部分に相当する部分と本意匠部分とを比較したときの共通点であって,この形態の共通点は,本願部分の一部に限られるものであるから,両部分を全体として比較した際には,両部分の位置,大きさ及び範囲の差異点を圧して,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすほどのものとはいい難い。 (7)小括 したがって,本願意匠と本意匠の意匠に係る物品は同一であるが,両部分の位置,大きさ及び範囲は大きく異なっており,両部分の用途及び機能も異なっている。そして,本願部分における本意匠部分に相当する部分と本意匠部分とを比較したとき,形態の差異点は両部分の類否判断に一定程度の影響を及ぼし,形態の共通点が認められるとしても,その共通点は両部分の位置,大きさ及び範囲の差異を圧して両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすとはいい難いので,本願部分は,本意匠部分に類似するということはできない。すなわち,本願意匠は,本意匠に類似しない。 4 本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて 本意匠は,本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから,意匠法第10条第1項に規定されている本意匠の要件を満たしている。 また,本願意匠と本意匠は,本願意匠の意匠登録出願の日が本意匠の意匠登録出願の日以後であって本意匠の意匠公報の発行の日前であるから,本願意匠の意匠登録出願の日は,意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。 しかし,上述のとおり,本願意匠は本意匠に類似するものとは認められないので,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定されている,本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たさない。 したがって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当しない。 そして,前記のとおり,本願は,審判請求日と同日に願書の本意匠の表示を削除する手続補正がなされているから,原審の拒絶の理由によっては拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当しないから,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものであって,願書の本意匠の表示を削除する手続補正がなされているから,原審の拒絶の理由によっては拒絶することができない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-07-25 |
出願番号 | 意願2015-4140(D2015-4140) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(D3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 朝康 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 正田 毅 |
登録日 | 2016-08-26 |
登録番号 | 意匠登録第1559502号(D1559502) |
代理人 | 松井 重明 |
代理人 | 倉谷 泰孝 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 倉谷 泰孝 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 松井 重明 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |