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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 D4
管理番号 1319238 
審判番号 不服2016-5711
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-18 
確定日 2016-09-06 
意匠に係る物品 エアーコンディショナー 
事件の表示 意願2015- 1431「エアーコンディショナー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成27年(2015年)1月27日に出願された意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「エアーコンディショナー」とし,その形状,模様若しくは色彩又はそれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願当初の願書の本意匠の表示欄に記載された意匠登録出願(本願と同日の平成27年1月27日に出願された意願2015-1436号)の意匠(以下,「本意匠」という。別紙第2参照)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものである。

第3 手続きの経緯

原査定の上記拒絶の理由に対して,出願人は,平成27年10月13日に意見書を提出し,本願意匠と本意匠は互いに類似するものであるため,意匠法第10条第1項の規定に該当すると主張したが,平成28年1月13日付けで拒絶査定がなされたため,請求人は,同年4月18日に審判請求書を提出した。
その後,請求人は,平成28年7月14日に手続補正書を提出し,願書に記載の「本意匠の表示」を削除し,本願を関連意匠の意匠登録出願ではないものに変更している。

第4 当審の判断

以下,本願意匠が本意匠と類似せず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであるか否かについて検討する。

1.本願意匠と本意匠の対比
本願意匠と本意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「エアーコンディショナー」であるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

次に,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
まず,共通点として,
(A)全体は,設置時に天井面に表れる正面側のパネル部(以下,「正面パネル部」という。)と,背面側に突出した天井埋込部(以下,「背面埋設部」という。)からなる構成であって,
(B)正面パネル部は,その中央部に空気吸入用のグリル部(以下,「グリル部」という。)を配し,その周囲に全周に亘る空気吹き出し用の隙間(以下,「吹き出し口部」という。)を設け,その外側に枠体部(以下,「正面パネル枠体部」という。)を配設し,吹き出し口部の上下左右の各部中央部分に,フラップ(以下,「フラップ部」という。)を形成している点,
(B-1)グリル部は,その中央に,略隅丸正方形状で横方向に形成された43枚のフィンと3条の縦桟からなる格子の空気吸入口(以下「吸入口部」という。)を設け,その周囲に,略隅丸正方形状の幅広な枠状部(以下,「グリル枠状部」という。)及びその四隅から突出して形成された略円弧状の帯状突出部(以下,「帯状突出部」という。)からなる枠体部(以下,「グリル枠体部」という。)を形成している点,
(B-2)正面パネル枠体部は,正面視において,枠外側を略正方形状とし,枠内側を略隅丸正方形状とし,その四隅部分には枠内側の形状を略円弧状とした略L字状の形態が表れ,正面パネル枠体部の内側から外側に向かってなだらかに傾斜した形態としている点,
(B-3)吹き出し口部は,グリル枠体部と正面パネル枠体部との間の略隅丸正方形枠状の隙間部分であって,四隅部分を略円弧状で幅の狭い開口部とし,上下左右の各部中央部分を内側に向かって拡がる幅の広い開口部としている点,
(B-4)フラップ部は,断面形状を略円弧状に湾曲した板体とし,正面パネル枠体部の傾斜面に合わせて斜めに配設している点,
(C)背面埋設部は,立方体の四隅を斜めに切り欠いた略八角柱状に形成している点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)フラップ部の態様について,本願意匠は,外側辺を僅かに膨出させた正面視略長方形状に形成しているのに対して,本意匠は,正面視略紡錘形状としている点,
(イ)帯状突出部の態様について,本願意匠は,左右端部が直角に切り欠かれた形状としているのに対して,本意匠は,左右端部が斜めに切り欠かれた形状としている点,
(ウ)帯状突出部とフラップ部の間の態様について,本願意匠は,帯状突出部とフラップ部の間を隙間なく接して配設しているのに対して,本意匠は,当該間に隙間を設けて配設している点,
が認められる。

2.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と本意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。

まず,共通点(A)の全体の態様をベースにした共通点(B)及び共通点(C)の各部の態様は,両意匠の基調を形成し,需要者に共通の印象を与えるものであるが,これらは天井設置型のエアーコンディショナーにおいて既に見られる形態から大きく逸脱するものではないから,上記の共通点(A)ないし(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの,共通点全体としては,両意匠の類否判断を決定付けるとまでは至らないものである。

これに対し,相違点(ア)フラップ部の態様,相違点(イ)帯状突出部の態様,及び相違点(ウ)帯状突出部とフラップ部の間の態様については,略長方形状のフラップ部をグリル枠状部の上下左右に略十字状に配置し,各フラップ部間に帯状突出部を隙間なく配した幾何学的な形態であるとの印象を与える本願意匠の態様と,グリル枠状部四隅から略X字状に帯状突出部を配し,各帯状突出部の間に隙間を空けて略紡錘形状のフラップ部を配した有機的な形態であるとの印象を与える本意匠の態様とは,看者に別異な印象を与えるものであるから,これらの相違点(ア)ないし(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品について一致し,形態については,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの,共通点全体としては両意匠の類否判断を決定付けるとまでは至らないものであるのに対して,相違点が相俟って生じる視覚的効果は両意匠の類否判断に大きく影響を与えるものであり,意匠全体として見た場合には,これらの相違点は需要者に別異の印象を与え,両意匠に異なる美感を起こさせるものであるから,本願意匠が,本意匠に類似するということはできない。

4.小括
したがって,本願意匠は,本意匠である意願2015-1436号(意匠登録第1537712号)の意匠に類似しないものであるから,これを本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることはできないものである。
しかしながら,請求人が平成28年7月14日に提出した手続補正書によって本願願書の本意匠の表示を削除する補正がなされたことにより原査定の拒絶の理由は解消している。

第5 むすび

以上のとおりであって,原審の拒絶の理由は解消しているので,当該拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。



別掲
審決日 2016-08-23 
出願番号 意願2015-1431(D2015-1431) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (D4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北代 真一 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
橘 崇生
登録日 2016-09-16 
登録番号 意匠登録第1560935号(D1560935) 

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