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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B4
管理番号 1320256 
審判番号 不服2016-6687
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-06 
確定日 2016-09-27 
意匠に係る物品 リュックサック 
事件の表示 意願2015- 15749「リュックサック」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,中華人民共和国への2015年1月16日の出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成27年(2015年)7月15日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「リュックサック」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとし,その拒絶の理由として引用した意匠は,特許庁が平成24年(2012年)12月10日に発行した意匠公報掲載の意匠登録第1457458号「リュックサック」の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)を対比すると,まず,意匠に係る物品については,両意匠は,いずれも2本のストラップに両腕を通し,背負うことのできる「リュックサック」であるから,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
(1)共通点
(A)全体を,背面側を略隅丸縦長台形状としたリュックサック本体部(以下,「本体部」という。)に,正面側に縦にファスナーを有する大きな開口部を設け,折り畳んで本体部に重ねた袋状部(以下,この部分を「袋部」という。)を設け,本体部の背面側に2本の肩掛け用のストラップ(以下,この部分を「ストラップ」という。)を設けて構成した点,
(B)袋部は正面視左側に折り畳んで略半円状に本体部を覆い,袋部の開口部と本体部の左側面のやや上方に設けた帯状紐(以下,この部分を「帯状紐」という。)をバックルで係止する態様としている点,
(C)ストラップの上方寄りに左右方向に渡る取っ手を有し,左右側面において,背面側の上面に設けられた2本のストラップの上部の本体部との接合部から左右側面の下方寄りにかけて,使用時に肩から腰を覆うように本体部の背面側に布片(以下,この部分を「布片」という。)を設けている点,
(D)本体部上部からストラップの中央を縦断する2本の帯状紐を設け,その下方の端部を本体部左右の布片の端部に設けた帯状紐とバックルを介して繋げ,長さ調節可能としている点,
において主に共通する。
(2)差異点
(ア)本体部の態様について,本願意匠は,本体部外側の袋部と布片の間に収納部を設け,それを開口可能とするためファスナーを本体部上面から側面視で上下中央まで設け,そのファスナーが外側から視認できる態様としているのに対して,引用意匠は,袋部と布片の間にはファスナーを設けず,背面側の布片の内側の収納部を開口可能とするためファスナーを本体部上面から設け,使用時にはそのファスナーを外側からほとんど視認できない態様としている点,
(イ)正面視した袋部の形状について,本願意匠は,右側面側から連続する緩やかなカーブの延長線上に開口部の上辺があるのに対して,引用意匠は,開口部寄りで上辺が折れて傾斜している点,
(ウ)袋部の表面の態様について,本願意匠は,開口部のやや内側の垂直方向に縫い目があり,この縫い目によって太幅の縁部を形成し,その縁部と直交する水平方向に,開口部の下端部から開口部全体の高さの約2/5の高さの位置の開口部の左端部から本体部の側面側に向かって合わせ目の縫い目が表れているのに対して,引用意匠は,そのような縫い目がない点,
(エ)ストラップの態様について,本願意匠は,2本のストラップがそれぞれ中央寄りに凸弧状に湾曲して形成され,略中央寄りの上下にストラップと直交する2本の細帯状ベルトをそれぞれ設けているのに対して,引用意匠は,2本のストラップがそれぞれ縦に略直線状に平行に形成され,ストラップに細帯状ベルトを設けていない点,
(オ)袋部の開口部と本体部の左側面を留める帯状紐の態様について,本願意匠は,開口部側の帯状紐の幅は他の帯状紐と同様であるのに対して,引用意匠は,開口部側の帯状紐の幅は他の帯状紐の幅の約1.5倍程度の太幅である点,
(カ)本願意匠は,ほぼ全体が暗調子であるのに対して,引用意匠は,全体が明調子で,帯状紐と薄い収納部の周側面のファスナー部を暗調子としている点,
(キ)本願意匠は,ファスナーの先端部に輪状の摘みを設けているのに対して,引用意匠は,ファスナーの先端部に摘みを設けていない点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
そこで検討するに,共通点(A)については,この種物品の機能を担う全体の基本構成ではあるが,全体を,背面視を略隅丸縦長台形状とした本体部に,正面側に縦にファスナーを有する大きな開口部を有する袋部を設け,本体部の背面側に2本の肩掛け用のストラップを設けて構成した態様は,この種の物品分野においては両意匠以外にも見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,また,共通点(B)についても,袋部が正面視左側に折り畳んで略半円状に本体部を覆い,袋部の開口部と本体部の左側面のやや上方に設けた帯状紐をバックルで係止する態様としている点についても,両意匠の各部位には差異点が多数見受けられ,全体の基本構成や大きな開口部を有する袋部が共通している点のみでは両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
次に,共通点(C)及び共通点(D)についても,ストラップの上方寄りに左右方向に渡る取っ手を有し,左右側面において,背面側の上面に設けられた2本のストラップの上部の本体部との接合部から左右側面の下方寄りにかけて,使用時に肩から腰を覆うように本体部の背面側に布片を設けている点,と本体部上部からストラップの中央を縦断する2本の帯状紐を設け,その下方の端部を本体部左右の布片の端部に設けた帯状紐とバックルを介して繋げ,長さ調節可能としている点が共通しているが,背中に接する部分であり,両意匠のように本体部との接合部から左右側面の下方寄りにかけて,本体部の背面側に布片を設け,布片から伸びている帯状紐がストラップの下方から左右に出ている帯状紐に繋がり,バックルを介して長さ調節可能となっているリュックサックが他にも見受けられ(例えば,参考意匠:意匠登録1113380号のリュックサックの意匠:別紙第3参照),さほど特徴のある態様とはいえないものであり,それが両意匠のみの格別の態様とはいえず,また,帯状紐は各部位を留めるために付加的に設けられているもので,帯状紐自体に特徴があるものとはいえず,意匠全体から見た場合には,目立つ部分とはいえず,そして,布片の形状が共通するとしても,その点によってのみでは,両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,これらの差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。

これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,まず,差異点(ア)の本体部の態様について,収納部がどこに設けられているかについては,需要者の関心が強いこの種の物品分野において,本体部外側の袋部と布片の間に収納部を設け,それを開口可能とするためファスナーを本体部上面から側面視で上下中央まで設け,そのファスナーが外側から視認できる本願意匠の態様は,袋部と布片の間にはファスナーを設けず,背面側の布片の内側の収納部を開口可能とするためファスナーを本体部上面から設け,使用時にはそのファスナーを外側からほとんど視認できない引用意匠とは,明確に差異が認められ,目立つ部分における差異であって,両意匠の外側となる背面視した印象が異なり,両意匠の本体部の構成に影響を与えるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)の正面視した袋部の形状については,開口部は,需要者がリュックサックを使用する場合に関心を惹く部位であるため,右側面側から連続する緩やかなカーブの延長線上に開口部の上辺がある本願意匠と,開口部寄りで上辺が折れて傾斜している引用意匠は,見た目の印象が明確に異なるものであり,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
また,差異点(ウ)の袋部の表面の態様について,縫い目のあるものもないものも,いずれもありふれた態様といえるものであるので,類否判断にさほど大きな影響を与えるものとはいえないが,縫い目によって太幅の縁部を形成し,その縁部と直交する水平方向に,開口部の下端部から開口部全体の高さの約2/5の高さの位置の開口部の左端部から本体部の側面側に向かって合わせ目の縫い目が表れている本願意匠と縫い目のない引用意匠とは,正面視した場合の印象が異なるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。
そして,差異点(エ)のストラップの態様について,本願意匠のようにストラップが湾曲して形成されているものも,引用意匠のように縦に略直線状に平行に形成されているものも,いずれもありふれた態様といえるものであるが,使用時のストラップの身体へのフィット感が異なるもので,需要者が注意を払う部位でもあり,略中央寄りの上下にストラップと直交する2本の細帯状ベルトをそれぞれ設けている本願意匠の態様は,ストラップの機能性や装飾性の有無は需要者の注意を惹くことから,そのような細帯状ベルトを有さない,すっきりした印象の引用意匠の態様とでは,需要者に与える印象が異なっており,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
なお,差異点(オ)の袋部の開口部と本体部の左側面を留める帯状紐の幅の差異,差異点(カ)の全体が暗調子であるか明調子であるかの差異,差異点(キ)のファスナーの先端部の輪状の装飾の有無については,いずれも細部における部分的な差異といえるものであり,両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものである。
前記差異点(ア)ないし(エ)の態様とその他の差異点とが相俟って,それぞれの差異が,意匠全体として需要者に与える印象を異ならせるもので,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。

以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-09-12 
出願番号 意願2015-15749(D2015-15749) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 康平並木 文子 
特許庁審判長 山田 繁和
特許庁審判官 斉藤 孝恵
正田 毅
登録日 2016-10-28 
登録番号 意匠登録第1564134号(D1564134) 
代理人 伊東 忠重 
代理人 伊東 忠彦 
代理人 大貫 進介 

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