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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1323569 
審判番号 不服2016-15234
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-11 
確定日 2017-01-17 
意匠に係る物品 エレベーター用操作表示器 
事件の表示 意願2015- 21415「エレベーター用操作表示器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成27年(2015年)9月30日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「エレベーター用操作表示器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,本願意匠が類似するとして拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,特許庁普及支援課が2013年9月17日に受け入れた,大韓民国意匠商標公報 2013年8月2日13-24号に記載された「エレベーター用操作盤(登録番号30-0703609)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH25432099号)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「エレベーター用操作表示器」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「エレベーター用操作盤」であって,その表記が異なるものであるが,いずれもエレベーター利用者が,行き先階を入力する操作画面を持つ表示器であるから,本願意匠及び引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。

(2)形態
本願意匠の形態と,引用意匠において,通電によって表された画像を除き,破線で表された形態を含めた全体の形態とを対比すると,その形態には,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。

まず,共通点として,
(A)全体は,縦長直方体状の本体部の前面側中央部分にフラットなパネル(以下「前面パネル部」という。)を設け,その前面パネル部の周囲に枠状の周縁(以下「周縁部」という。)を形成したものであって,
(B)前面パネル部は,本体部より一回り小さな縦長長方形状とし,前面パネル部の下から約2/5の位置から上方に行き先階を入力するフラットな画面(以下「画面表示部」という。)を設け,その下方にICカード等を読み取るためのリーダー内蔵部(以下「リーダー部」という。)を配設した構成としている点,
(C)周縁部は,本体部より一回り大きな縦長長方形枠状とし,本体部からフランジ状に突出している点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)本体部の態様について,本願意匠は,本体部の横幅に対する奥行き(厚み)の比率を約8.5:1としているのに対して,引用意匠は,同比率を約2.8:1としている点,
(イ)前面パネル部の態様について,本願意匠は,画面表示部のみ透光性を有する形態として,周縁部から一段凹んだ位置に配設しているのに対して,引用意匠は,画面表示部及びリーダー部の前面側に,縦長長方形板状の透明な部材を嵌め込み,周縁部と面一になるように形成している点,
(ウ)周縁部の態様について,本願意匠は,周縁部の縦横比を約1.8:1とし,上下左右の全枠部を同じ幅のものとし,周縁部内側の上下端部に周縁部前面部分から僅かに突出している横桟を形成し,周縁部内側の左右端部に内側に向かって傾斜する縦桟を形成しているのに対して,引用意匠は,同比を約2.1:1とし,左右の枠部,上枠部及び下枠部の枠の幅の比を約1:1.6:2.6としている点,
(エ)周縁部内側の下枠部分に設けられた横長等脚台形状部位の有無について,本願意匠には,そのような部位は設けられていないのに対して,引用意匠は,下枠部分を横長等脚台形状に切り欠き,切り欠き部に多数の円孔を形成した部位を前面パネル部及び周縁部と面一になるように配設している点,
が認められる。

2.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。

まず,共通点(A)の全体の態様は,エレベーター用操作表示器の形態を概略的に捉えたに過ぎないものであるから,この共通性のみをもって両意匠の類否判断を決定することはできない。
次に,共通点(B)の前面パネル部の態様は,画面表示部とリーダー部の境界部分には段差もなく,通常は全く目立たないものであって,通電して画面が表示された場合において目に付く部位にすぎないから,この共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度しかないものである。
また,共通点(C)の周縁部の態様は,壁面に本体部を埋設するための開口部を形成する際に,本体部との間に生じる隙間を覆うためにフランジ状に周縁部を設ける形態は,このエレベーター用操作表示器の分野においては極普通に見られる特段特徴のない形態にすぎないから,この共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も微弱なものである。
そして,これらの共通点(A)から共通点(C)によって生じる視覚的効果は,これらを全体としてみても小さいものであって,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)の本体部の態様については,使用時には隠れる部位であるとしても,設置場所のスペースとの関係からその厚みを重視するものであり,薄い印象を与える本願意匠の形態と,非常に分厚い印象を与える引用意匠の形態とは,看者に対して別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるといえる。
次に,相違点(イ)の画面表示部の態様,及び相違点(ウ)の周縁部の態様については,画面操作時に特に注目する部位であり,周縁部内枠部分に特徴的な横桟及び縦桟を形成し,その枠内に凹んだ配置で画面表示部を配設した構成の本願意匠の形態と,周縁部と面一になるように画面表示部を配設した構成の引用意匠形態とは,その周辺部の上枠,下枠及び左右枠の各枠部の幅の相違も相まって看者に異なる印象を与えるものであるから,これらの相違点(イ)及び相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
また,相違点(エ)の周縁部内側の下枠部分に設けられた横長等脚台形状部位の有無については,フラットな前面パネル部及び周縁部にあって,少数の円孔部分は目に付くものである上に,単なる横長長方形状ではなく左右の辺を斜めとする横長台形状である点も相まって看者に異なる印象を与えるものであるから,この相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,これらの相違点(ア)から相違点(エ)によって生じる視覚的効果はいずれも大きく,それらが相まって生じる別異の印象は,両意匠の類否判断を決定付けるほど大きいものである。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については共通するものの,その形態においては,共通点が類否判断に及ぼす影響は両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配し,両意匠に異なる美感を起こさせるものであるから,本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-01-05 
出願番号 意願2015-21415(D2015-21415) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範北代 真一 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
橘 崇生
登録日 2017-01-27 
登録番号 意匠登録第1570411号(D1570411) 
代理人 稲葉 忠彦 
代理人 倉谷 泰孝 
代理人 村上 加奈子 
代理人 松井 重明 

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