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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 F4
管理番号 1324914 
審判番号 不服2016-11072
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-22 
確定日 2017-01-06 
意匠に係る物品 包装用容器 
事件の表示 意願2015- 15697「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,平成27年(2016年)7月14日に意匠登録出願されたものであり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形態を,願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものであり,「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で,それ以外の部分を破線で表している。」(以下,当該部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び本意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,願書の「本意匠の表示」の欄に記載した意匠(以下「本意匠」という。)に類似する意匠とは認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しない,としたものであって,本意匠は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成26年5月2日に意匠登録出願され,平成27年11月20日に意匠権の設定の登録がなされ,平成27年12月21日に意匠公報が発行された意願2014-9663号(意匠登録第1540463号)の意匠であり,同公報の記載によれば意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形態は,同公報に記載されたとおりのものであり,「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で,それ以外の部分を破線で表している。」(以下,当該部分を「本意匠部分」という。)としたものである。(別紙第2参照)

第3 手続の経緯
原査定の拒絶の理由に対して,請求人は意見書を提出し,本願意匠は本意匠に類似する意匠であって,意匠法第10条第1項の規定に該当する旨主張したが,拒絶の査定がなされたため,同査定を不服として平成28年7月22日に審判を請求するとともに手続補正書を提出して,本願の願書に記載していた「本意匠の表示」の欄を削除した。

第4 当審の判断
以下,本願意匠が意匠法第10条第1項の規定に該当するものであるか否かを,主に,本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)を対比し,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行うことにより,本願意匠が本意匠に類似するか否かについて検討し,判断する。
なお,両意匠の対比にあたっては,意匠に係る物品はもとより,本願部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)について,その用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲を対比し,それらを踏まえて,両部分の形態を対比する。

1.共通点及び相違点の認定
(1)共通点の認定
意匠に係る物品については,両意匠ともに「包装用容器」であるから,一致し,また,部分意匠としての用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲については,両部分ともに,包装用容器の本体(以下「本体部」という。)の上端の台座状部に本体部よりも径の小さい注出口部を突設させた細口付き容器において,台座状部の直下から本体部周側面にわたり密着させて設けたシート状のカバー(以下「カバー部」という。)の,上端から約4分の3の位置までの全周面を当該部分とするものであるから,一致する。
そして,両部分の形態については,(A)全体を,平面視略横長楕円形状の上端側から下方に向かって,漸次,径を大きくすると共に下端側を平面視略円形状に変化させた筒状体とし,(B)正面視形状は上底,下底及び高さの比率を約2対3対7とする縦長の等脚台形状,(C)側面視形状は上底,下底及び高さの比率を約1対3対7とする縦長の等脚台形状としたものである点が共通する。
(2)相違点の認定
両部分の形態について,主に,以下の(イ)及び(ロ)の点が相違する。
(イ)本願部分は,上端を平面視で角のない略楕円形状とし,下端を略円形状として,全体を滑らかな周側面をもつ筒状体としているものであるのに対して,本意匠部分は,上端を平面視で2つの角をもつ薄いアーモンド型の形状とし,下端を2つの角をもつ厚めのアーモンド型形状として,全体を2つの角をもつ周側面の筒状体としているものである。
(ロ)本願部分は,背面の中央を鉛直方向につらぬく段差が形成され,直線模様として表れているものであるのに対して,本意匠部分は,背面にそのような段差は形成されていないものである。

2.共通点及び相違点の評価
以下,共通点及び相違点が存在する両部分の形態について,その共通点及び相違点の評価を行う。
(1)共通点についての評価
共通点(A)は,全体の基本的な構成態様に係るものであるが,具体的に観察すれば前述のとおり相異点が存在するものであるから,全体を概括した場合の共通点に止まり,共通点(A)が両部分の類否判断に及ぼす影響を大きく評価することはできない。
共通点(B)及び(C)は,真正面及び真横から観察した場合の輪郭形状の共通点であるが,立体的な両意匠を具体的に観察すれば,前述のとおり相異点が存在するものであるから,共通点(B)が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度に止まる。
そうすると,共通点は,いずれも両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものではなく,これらの共通点が相俟っても,両部分の類否判断を決するものであるとはいえない。

(2)相違点についての評価
相異点(イ)は,左右両側面の態様の相違であるが,本願部分は,全周にわたり角部がなく,看者に全体として柔らかな印象を与えるものであるのに対して,本意匠部分は,左右両端部に上端から下端にわたり角部があり,看者に全体としてシャープな印象を与えるものであるから,両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点(ロ)は,背面における段差の有無の相違であるが,段差は,カバー部を重ね合わせた部分の端部の厚みによって形成されたものであって,極僅かな段差に過ぎないから目立つものではなく,更に正面に比べて通常目に触れる頻度の少ない背面側に形成されたものであるから,両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると,特に相違点(イ)が,両部分の形態について異なる視覚的印象を看者に与え,その余の相違点(ロ)の及ぼす影響が小さいものであるとしても,これらの相違点を総合すると,相違点は両部分の類否判断を決するものであるといえる。

3.類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については一致し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲についても一致するものであるが,両部分の形態の相違点が相俟って生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕するものであって,看者に異なる美感を起こさせるものである。
したがって,本願意匠は,本意匠に類似しないものと認められる。

第5 むすび
以上のとおりであり,本願意匠は,本意匠に類似するものとは認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであるから,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものではあるが,上記第3に記載のとおり,請求人が平成28年7月22日に提出した手続補正書によって,本願の願書に記載していた「本意匠の表示」の欄を削除する補正がなされているから,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-12-14 
出願番号 意願2015-15697(D2015-15697) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鶴田 愛山永 滋 
特許庁審判長 山田 繁和
特許庁審判官 江塚 尚弘
正田 毅
登録日 2017-02-10 
登録番号 意匠登録第1571545号(D1571545) 
代理人 恩田 博宣 
代理人 恩田 誠 

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