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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L7 |
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管理番号 | 1324918 |
審判番号 | 不服2016-13141 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-09-01 |
確定日 | 2017-01-16 |
意匠に係る物品 | 吊り戸用レール材 |
事件の表示 | 意願2015- 12983「吊り戸用レール材」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成27年(2015年)6月11日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「吊り戸用レール材」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由および引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由として引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成26年(2014年)8月25日)に記載された意匠登録第1505782号(意匠に係る物品,吊戸車用レール材)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.両意匠の対比 (1)意匠に係る物品について 両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品について,本願意匠は,「吊り戸用レール材」に係るものであり,引用意匠は「吊戸車用レール材」に係るものであって,いずれも内部空間に吊り戸用吊り車を収容して摺動可能に保持するレール材に係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (2)形態について 両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 なお,両意匠を同一方向から対比するため,引用意匠の側面図を本願意匠の正面図の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定し,対比する。 <共通点> (A)全体は,底面部に開口部(以下,「底面開口部」という。)を形成した,長手方向に連続する断面略下向きコ字状の長尺材からなり,底面開口部の両縁に,内方に向かい合う側面視略L字状に屈曲した係止片(以下,「L字状係止片」という。)と,両側壁の内側上方に,側壁から垂直に突出した小係止片(以下,「小係止片」という。)とを,それぞれ長手方向にわたり設けることにより,開口部内部に吊り車を収容可能とする側面視略隅丸矩形状の空間部(以下,「吊り車収容部」という。)を形成し,さらに,小係止片の上方を掘り込み,吊り車収容部と連続する空間部(以下,「掘り込み部」という。)を形成した点, (B)平面部中央に,戸枠と突接する太幅の平坦部(以下,「戸枠接地部」という。),平面部両端に細幅の突条部(以下,「突条部」という。),及びそれらの間に細幅の溝部(以下,「細溝部」という。)をそれぞれ長手方向にわたり平行に形成した点, が認められる。 <相違点> (ア)平面部の態様について,本願意匠は,細溝部を浅い略凹字状に形成し,突条部を戸枠接地部より低く形成しているのに対して,引用意匠は,細溝部を略V字状に形成し,突条部を戸枠接地部と同じ高さに形成した点, (イ)掘り込み部の態様について,本願意匠は,側面視吊り車収容部の横幅と略同じ長さの水平な細帯状に形成しているのに対して,引用意匠は,側面視吊り車収容部の横幅より短い水平な細帯状に形成し,さらにその上方を台形状に掘り込んだ点, が認められる。 2.本願意匠と引用意匠の類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 まず,両意匠は,いずれも内部空間に吊り戸用吊り車を収容して摺動可能に保持するレール材に係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 次に,共通点(A)について,長手方向に連続する断面略下向きコ字状の長尺材において,底面開口部の両縁にL字状係止片と,両側壁の内側上方に小係止片とを,それぞれ長手方向にわたり設けて,開口部内部に側面視略隅丸矩形状の吊り車収容部と,その上方に掘り込み部を形成した点は,引用意匠のほかにも多数見受けられ,吊り戸用レール材の構成態様としてありふれたものであって,本願意匠と引用意匠のみが持つ共通点とはいえず,両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものにとどまるものである。 共通点(B)について,平面部中央に戸枠接地部,平面部両端に突条部,及びそれらの間に細溝部を長手方向にわたり平行に形成した点も,吊り戸用レール材の構成態様としてありふれたものであって,本願意匠と引用意匠のみが持つ共通点とはいえず,両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものにとどまるものである。 これに対して,相違点(ア)については,本願意匠は,細溝部の態様について,浅い段差面という視覚的印象を与えるのに対し,引用意匠はV字の谷間状の視覚的印象を与える点で大きく異なっており,また,突条部の態様についても,戸枠接地部とのわずかな高さの差とはいえ,正面及び背面視から明確に視認することができ,戸枠との接合に関わる形状であることから,需要者にとって,平面部における相違点(ア)は,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。 また,相違点(イ)についても,本願意匠は,側面視水平方向にのみ掘り込まれたスリット状の視覚的印象を与えるのに対し,引用の意匠は,そのさらに上方にも台形状の空間が掘り込まれ,側面視略凸字状の視覚的印象を与える点で異なっており,両意匠に別異の印象を与えるものである。 そして,これらの各相違点に係る態様が相まって生じる視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似しないものということができる。 したがって,両意匠は,意匠に係る物品について共通し,形態の基本的な形状においても共通点が存在するものの,相違点の印象が共通点の印象を凌駕しており,意匠全体としては視覚的印象を異にするものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 第4 むすび 以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-12-20 |
出願番号 | 意願2015-12983(D2015-12983) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 恭子 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
神谷 由紀 正田 毅 |
登録日 | 2017-02-03 |
登録番号 | 意匠登録第1570839号(D1570839) |
代理人 | 吉田 芳春 |
復代理人 | 堀越 真弓 |