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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D4
管理番号 1324922 
審判番号 不服2016-13204
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-02 
確定日 2017-01-27 
意匠に係る物品 扇風機 
事件の表示 意願2015- 10253「扇風機」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする平成27年(2015年)5月12日の意匠登録出願であって,本願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「扇風機」であり,本願意匠の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は願書に添付した図面代用写真に現されたとおりである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものである。
特許庁意匠課が2011年6月17日に受け入れた,
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2011年 6月13日
掲載者 株式会社トヨトミ
表題 扇風機 TOYOTOMI
掲載ページのアドレス http://www.toyotomi.jp/product/air-conditioner/fan-item01.html
に掲載された「扇風機」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ23003849号。以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「扇風機」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「扇風機」である。

2 本願意匠と引用意匠の形態
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
なお,本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。すなわち,上記インターネットアドレスの写真版に現された引用意匠の形態は,正面斜め上方から見た形態であると認定する。
(1)共通点
両意匠の形態には,以下の共通点が認められる。
(A)全体の構成態様について,上部に放射線状に細い線材を多数配した正面視円形状のガード部(以下,単に「ガード部」という。)が設けられ,その内部に5枚の羽根から成るファンが設けられて,ファンの中央直下から下側に細長円柱状の支柱部(以下,単に「支柱部」という。)が延びて下部の略扁平円盤状の台座部(以下,単に「台座部」という。)の上面に接合しており,台座部の上面の前方寄りには操作部が設けられている。
そして,ガード部の後方には駆動部(モーター部)が有る。(この点について,上記インターネットアドレスの写真版では,引用意匠におけるガード部の後方の態様が現されていないが,「扇風機」の物品分野における通常の知識に照らせば,引用意匠のガード部後方に駆動部が有ると推認できる。)
(B)ガード部,ファン,把持部の態様について
ガード部は,ファンを前後からカバーするように形成されている(以下,前方側を「前方ガード部」,後方側を「後方ガード部」という。)なお,引用意匠におけるガード部背面側の態様は,上記インターネットアドレスの写真版では現されていないが,「扇風機」の物品分野における通常の知識に照らせば,引用意匠のガード部背面側にもファンをカバーする部分,すなわち後方ガード部が有ると推認できる。
また,前方ガード部の放射線状線材の本数は108本であって,前方ガード部の正面中央には円形板が配されている。さらに,ファンの5枚の羽根は全て同形同大であって,1枚の羽根は略縦長台形状に表されており,駆動部の上部に略倒縦長コ字状の把持部が設けられている。
(C)支柱部の態様について
径の異なる2つの支柱によって構成されており,下側の径の太い支柱の上部に径の細い上側の支柱が陥め合わされて,上側の支柱が上下に伸縮する。(この点について,本願意匠には伸びた状態の図が表されていないが,本願意匠の支柱部の背面上端寄りに小さい矩形状ボタンが配されているので,「扇風機」の物品分野における通常の知識に照らせば,このボタンを押下することにより,駆動部に連なる部分が下側の支柱から露出して上方に伸びていくと推認できる。)
(D)台座部の態様について
台座部の側周面が略垂直面状に表されている。
(E)操作部の態様について
操作部は,前方寄りに4つの略小円柱状ボタンが横一列に並んで配されており,その後方に平面視外周が円形状のつまみダイヤルが1つ配されている。
(2)差異点
一方,両意匠の形態には,以下の差異点が認められる。
(a)ガード部の形状について
本願意匠の前方ガード部は浅い丸籠状であって細い線材が外周寄りで緩やかに後方に折れ曲がり,後方ガード部も浅い丸籠状であって細い線材がやや角張って前方に折れ曲がっており,後方ガード部の放射線状線材の本数は前方ガード部のそれと同じ108本である。また,円形板はほぼ平坦面状であって,その円形板の周囲の線材が屈曲して凹んでいる。これに対して,引用意匠の前方ガード部の立体形状は不明であり,後方ガード部の形状や放射線状線材の個数も不明であって,円形板の外周寄りには円形状の模様が表されているが,円形板の凹凸形状などは不明である。
(b)駆動部の形状について
本願意匠の駆動部は,略倒円柱状であって,ガード部背面中央に接合しており,平面から見て駆動部上面の後方寄りに小円柱状のボタンが配され,把持部が前端寄りに配されている。そして,側面から見て,駆動部は略クランク状の連結部と略縦長長円形状の連結部を介して,上側の支柱の上端に接合している。これに対して,引用意匠の駆動部の位置や形状は不明であり,駆動部と把持部の位置関係や,駆動部下方の連結部の形状も不明である。
(c)支柱部の形状について
本願意匠の下側の支柱部の上端には,リング状の別部材が嵌合されており,そのリング状部材の背面中央が略倒コ字状に下方に張り出して,その張り出し部の内側に略正方形状のボタンが配されている。そして,下側支柱部の下端は,ごく僅かにラッパ状に拡径して台座部と連結している。これに対して,引用意匠の下側支柱部にはそのようなリング状部材は無く,下側支柱部の下端付近の形状は不明である。
(d)台座部の形状について
本願意匠の台座部の上面は平坦状に形成され,上面周縁がテーパー状に面取りされて,台座部の周側面の略下半部が縮径して段状に表されており,上面の中央に平面視略縦長長方形状の面分割線が形成されて,その面分割線の内側には,背面側に支柱部が立設されて,正面側に操作部が設けられている。これに対して,引用意匠の台座部上面の具体的形状は不明であり,支柱部を取り囲むような面分割線が設けられているかも不明であり,台座部の周側面に段差は無い。
(e)操作部の形状について
本願意匠の4つの略小円柱状ボタンとつまみダイヤルは略区画形状の細溝区画で囲われているが,引用意匠にそのような細溝区画があるかは不明である。また,引用意匠のつまみダイヤルの右方には小円柱状ボタンが有り,左下には横長筋状の暗調子模様が表されているが,本願意匠にはそのようなボタンや模様は無い。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は共に「扇風機」であるから,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

2 両意匠の形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A)ないし(D)の態様は,「扇風機」の物品分野の意匠においては広く知られた態様であるといえるから,これらの共通点が需要者に与える視覚的印象は他の「扇風機」にはない特異なものであって需要者が注目することはないので,共通点(A)ないし(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また,共通点(E)の態様,すなわち,横一列に並んだ4つの略小円柱状ボタンの後方に平面視外周が円形状のつまみダイヤルが1つ配された態様も,「扇風機」の物品分野の意匠においては広く知られた態様である(例えば,意匠登録第1341451号。別紙第3参照。)から,需要者が共通点(E)に対して特別に注意を払うとはいい難いので,共通点(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといわざるを得ない。
そうすると,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいということができる。

3 両意匠の形態の差異点の評価
これに対して,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(a)で指摘したガード部の形状の差異については,前後のガード部が浅い丸籠状であって円形板が平坦状である本願意匠のガード部の立体形状が需要者に一定の美感を与えているというべきであるから,ガード部の立体形状が不明である引用意匠と比べて需要者は本願意匠のガード部の立体形状に着目するといえるので,差異点(a)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
次に,差異点(c)で指摘した支柱部の形状の差異については,下端がごく僅かにラッパ状に拡径して台座部と連結した本願意匠の下側支柱部の立体形状が需要者に一定の美感を与えているというべきであるから,下側支柱部の下端付近の形状が不明である引用意匠と比べて需要者は本願意匠の下側支柱部の立体形状に着目するといえるので,リング状部材の有無の差異とあいまって,差異点(c)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
そして,差異点(d)で指摘した台座部の形状の差異については,台座部の上面が平坦状に形成されて,支柱部を取り囲むように平面視略縦長長方形状の面分割線が形成された本願意匠の台座部の立体形状が需要者に独特の視覚的印象を与えているから,台座部の立体形状が不明である引用意匠と比べて需要者は本願意匠の台座部の立体形状に注目するので,台座部周側面の段差の有無の差異とあいまって,差異点(d)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというほかない。
他方,差異点(b)で指摘した駆動部の形状の差異については,本願意匠に見られる略倒円柱状の駆動部が,上面の後方寄りに配された小円柱状のボタンを含めて「扇風機」の物品分野の意匠において広く知られた態様であり,仮に把持部の位置に差異があるとしても,両意匠の駆動部の形状の差異に対して需要者が特段注意を払うとはいい難い。また,差異点(e)で指摘した操作部の形状の差異,すなわち,本願意匠に見られる細溝区画や,引用意匠に見られる小円柱状ボタンや横長筋状の暗調子模様に係る差異は,これらがいずれも細い又は小さいものであって,意匠全体から見て目立つものではないことから,需要者に対して確たる美感を起こさせるものであるということはできない。したがって,差異点(b)及び差異点(e)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

4 総合判断
以上のとおり,両意匠の形態の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいのに対して,両意匠の形態の差異点を総合すると両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ず,両意匠を意匠全体として比較した際には,形態の差異点が共通点を圧して,両意匠を全体として別異のものと印象付けるということができる。

5 小括
したがって,両意匠の意匠に係る物品は同一であるが,両意匠の形態については,差異点が共通点を圧して両意匠を全体として別異のものと印象付けるので,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと認められる。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は原査定の拒絶の理由により,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-01-17 
出願番号 意願2015-10253(D2015-10253) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 竹下 寛長谷川 翔平越河 香苗 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 渡邉 久美
小林 裕和
登録日 2017-02-10 
登録番号 意匠登録第1571544号(D1571544) 
代理人 野村 慎一 
代理人 藤本 昇 

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