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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L6
管理番号 1324929 
審判番号 不服2016-15882
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-25 
確定日 2017-02-06 
意匠に係る物品 床用目地プレート 
事件の表示 意願2015-27071「床用目地プレート」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成27年(2016年)12月3日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「床用目地プレート」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載,意匠登録第1245376号(意匠に係る物品,目地カバー)の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「床用目地プレート」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「目地カバー」であって,表記は異なるが,本願意匠の願書及び願書に添付した図面の記載並びに引用意匠に係る公報の記載等を総合すれば,両意匠の意匠に係る物品は,床構造の間を塞ぐ目地プレートという点で共通する。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。

<共通点>
(A)全体は,平面視横長長方形で偏平な直方体状の本体と,本体左右の側面上端に蝶番を介して取り付けられた平面視縦長長方形の2つの端板で構成される点。
(B)蝶番は左右同形であって,正面視略倒L字形状に表されている点。

<相違点>
(ア)本体の上面が,本願意匠では,平面視縦中心線から左右方向に若干下がるように,ごく僅かな傾斜面となっているのに対して,引用意匠では,平たんで,平面視中央上下に間隔を空けて2つの正方形の閉止栓が設けられている点。
(イ)本体の高さ,縦幅及び横幅の比率が,本願意匠は約1:6:11であるのに対して,引用意匠は約1:10:15である点。
(ウ)端板が,本願意匠は平たんで,本体上面と面一となるように取り付けられているのに対して,引用意匠は平面視縦方向に延びるごく浅い溝が14本設けられ,本体上面の左右端近傍を覆うように取り付けられている点。
(エ)引用意匠の本体底面には上面の2つの正方形の蓋に対応する位置に2つの円形の閉止栓が設けられているのに対して,本願意匠にはそれがない点。
(オ)蝶番が,本願意匠は底面視本体縦幅と同じ長さのものであるのに対して,引用意匠は2つのごく短いものである点。

2.両意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,形態については,以下のとおりである。

(1)両意匠の形態についての共通点の評価
共通点(A)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないし,床構造の間を塞ぐ目地プレートの分野(以下「この種物品分野」という。)において,両意匠のほかにも見られる形態であるから,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。
また,共通点(B)も,両意匠の蝶番の形態を概括的に捉えたものであって,この種物品分野において,ありふれた形態であるから,共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。

(2)両意匠の形態についての相違点の評価
これに対して,相違点(ア)として示す本願意匠の形態,すなわち本体の上面を平面視縦中心線から左右方向に若干下がるように,ごく僅かな傾斜面としたことは,雨水等が本体上面にたまらないように創作されたものであるから,傾斜の角度がごく僅かであるとしても,雨水の動きを観察すれば上面が傾斜していることを容易に認識でき,上面が単に平たんである引用意匠とは,視覚的印象を異にするというべきである。したがって,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといわざるを得ない。
次に相違点(イ)は,本体の高さ,縦幅及び横幅の比率に関する相違であり,床用目地プレートのほぼ全体にわたって観察されることから,相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きいといえる。
そして,相違点(ウ)は,端板が,本願意匠は平たんで,本体上面と面一となるように取り付けられているのに対して,引用意匠は平面視縦方向に延びるごく浅い溝が14本設けられ,本体上面の左右端近傍を覆うように取り付けられているというものであり,端板に溝のない本願意匠と,溝のある引用意匠では,視覚的印象が明らかに異なることから,この種物品分野において端板を平たんとすることが一般的に見受けられるとしても,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものといわざるを得ない。
他方,相違点(エ)及び(オ)は,床用目地プレートを底面側から観察することで初めて気付くものであるところ,この種物品の需要者は,販売業者や施工業者だけではなく,床構造の上を歩行する人も含まれるということができ,歩行者からは相違点(エ)及び(オ)に係る形態を観察できないから,相違点(エ)及び(オ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいと評価すべきである。

(3)総合評価及び類否判断
両意匠の類否判断に及ぼす影響を総合して評価すると,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,形態においては,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものではなく,共通点(B)による影響も微弱であり,これらの共通点が両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点(ア)ないし(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいか,一定程度あるものであって,相違点(ア)ないし(オ)があいまった視覚的効果を合わせて考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというほかない。
したがって,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-01-17 
出願番号 意願2015-27071(D2015-27071) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 恭子 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2017-02-24 
登録番号 意匠登録第1572491号(D1572491) 
代理人 三浦 光康 

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