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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 J1
管理番号 1325927 
審判番号 不服2016-16740
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-08 
確定日 2017-03-08 
意匠に係る物品 ガス検知器用検査機 
事件の表示 意願2015- 22232「ガス検知器用検査機」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)10月8日に出願された意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)を,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「ガス検知器用検査機」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由及び本意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠は願書に記載した本意匠に類似する意匠とは認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しない,としたものであって,本意匠は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)10月8日に出願であって,平成28年(2016年)7月1日に意匠権の設定の登録がなされ,同年8月1日に意匠公報が発行された意願2015-22231号(意匠登録第1555278号)の意匠であり,意匠に係る物品を「ガス検知器用検査機」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本意匠について意匠登録を受けようとする部分を「本意匠部分」といい,「本願部分」とあわせて「両意匠部分」という。)。(別紙第2参照)


第3 手続の経緯

原査定の拒絶の理由に対して,請求人は意見書を提出し,本願意匠は本意匠に類似する意匠であって,意匠法第10条第1項の規定に該当する旨主張したが,平成28年8月24日に拒絶の査定がなされたため,同査定を不服として平成28年11月8日に審判を請求したが,その後,平成28年12月15日に手続補正書を提出して,本願の願書に記載していた「本意匠の表示」の欄を削除した。


第4 当審の判断

以下,本願意匠が意匠法第10条第1項の規定に該当するものであるか否かを,主に,本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)を対比し,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行うことにより,本願意匠が本意匠に類似するか否かについて検討し,判断する。

1.共通点及び相違点の認定
(1)共通点
両意匠の意匠に係る物品は,ともにガス検知器が正常に動作するか否かを検査するのに用いられる「ガス検知器用検査機」であり,一致する。
両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は,いずれも検査結果等を表示する表示部,ガスボンベを装着するための複数の円形孔及び検査対象のガス検知器を装着する複数の横長長方形の孔を配したガス検知器用検査機の正面に位置するパネル部分であることから,共通する。
両意匠部分の形態については,共に,正面視において縦長長方形である点は共通する。

(2)相違点
両意匠部分の形態について,本願部分は,全体を,側面視略「く」の字状とする厚みの薄い正面視略縦長長方形状のパネルであって,そのパネルの上側を,外周略縦長長方形の斜面とし,パネルの下側を,横長の外周略長方形の垂直面とする上下2面から構成しているものであるのに対し,本意匠部分は,全体を,左側面視において略倒「へ」の字状とする厚みの薄い正面視縦長長方形状のパネルと,右側面視において略「く」の字状とする厚みの薄い正面視略縦長長方形状のパネルを組み合わせたものであって,正面視左側のパネルの上側を,縦に細長い外周略長方形の斜面とし,パネルの下側を,小さい横長略長方形の本体側に向けた斜面とする上下2面で構成したものと,正面視右側のパネルの上側を,外周略横長長方形の斜面とし,パネルの下側を,外周略正方形の垂直面とする上下2面で構成したものを,正面下部に段差を設けて横につなげ,正面視において4面で構成するものであるから,全体の態様が相違する。

また,本願部分は,パネルの上側の面と下側の面の縦幅の比を,約5:4とし,上側の面の左右中央,上1/2に表示部を配置し,下1/2にガス検知器を装着する5つの横長長方形の孔を3列2段に配し,下側の面にはガスボンベを装着する4つの円形の孔を2列2段に配した態様としているのに対し,本意匠部分は,正面視左側の上側の面と下側の面の縦幅の比を,約8:1として,上側の面にはガス検知器を装着する5つの横長長方形の孔を縦一列に5段配し,正面視右側の上側の面と下側の面の縦幅の比を,約8:9として,上側の面の中央には表示部を配置し,下側の面には下側の面にはガスボンベを装着する4つの円形の孔を2列2段に配した態様としていることから,具体的な態様も相違する。


2.共通点及び相違点の評価
以下,共通点及び相違点の評価を行う。
(1)共通点についての評価
両意匠部分における正面のパネルの部分を正面視縦長長方形とし,表示部,複数の円形の孔及び複数の横長長方形の孔を備えたとする共通点は,本物品を使用する際に需要者の注意を惹く部分ではあるが,単に正面のパネルに検査結果等表示する表示部を配し,ガスボンベの挿入数に応じた円形の孔と検査対象のガス検知器の数に応じた横長長方形の孔を複数配したという概念的な共通点にすぎず,両意匠部分の共通点が類否判断を決定づけるまでの影響を及ぼすものではなく,共通の印象を与えるものとはいえない。

(2)相違点についての評価
両意匠部分における正面のパネルの表示部,複数の円形孔及び横長四角形の孔の配置の相違は,ガス検知器用検査機を利用する際に,検査対象のガス検知器と表示機に表示された検査結果等を対比する上で,最も注意を惹くことから,明らかに需要者に与える印象を異ならせるものであって,類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
また,両意匠部分の全体の態様の相違は,本願部分が2面から構成されていることによって平面的な印象を与えるのに対し,本意匠部分は4面から構成され,かつパネルに段差があることによって立体的な印象を与えることから,表示部や複数の円形の孔及び横長四角形の孔の配置の違いと相俟って,見るものに与える印象を異ならしめ,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
さらに,両意匠部分の各面における縦幅比と構成態様の相違は,本物品を使用し,ガス検知器やガスボンベを挿入する際に,最も注意して観察する部分であり,使用者の動作もしくは両意匠部分の観察の視点の相違となって表れることから,見るものに両意匠部分を別異のものと印象づけるといわざるを得ない。

そうすると,両意匠は,意匠に係る物品については一致するが,両意匠部分の配置や形態において,その相違点が共通点を凌駕し,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。
したがって,本願意匠は,本意匠に類似しないものと認められる。


第5.むすび

以上のとおり,本願意匠は,本意匠に類似するものとは認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであるから,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものではあるが,前記第3に記載のとおり,平成28年12月15日に提出した手続補正書によって,本願の願書に記載していた「本意匠の表示」の欄を削除する補正がなされていることから,原査定の拒絶の理由によっては,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-02-24 
出願番号 意願2015-22232(D2015-22232) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (J1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 杉山 太一 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 正田 毅
山田 繁和
登録日 2017-03-17 
登録番号 意匠登録第1574320号(D1574320) 
代理人 宮地 正浩 

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