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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K8 |
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管理番号 | 1325928 |
審判番号 | 不服2016-15885 |
総通号数 | 208 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-10-25 |
確定日 | 2017-03-16 |
意匠に係る物品 | ポンプ用シール部材 |
事件の表示 | 意願2015- 18887「ポンプ用シール部材」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,平成27年(2015年)8月28日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「ポンプ用シール部材」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由および引用意匠 原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとし,その拒絶の理由として引用した意匠は,特許庁普及支援課が平成23年(2011年)2月10日に受け入れた米国特許商標公報2011年1月18日発行の「パッキング」(登録番号US D631,142S)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH23301212号)(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 3.本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の対比 (1)意匠に係る物品 両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「ポンプ用シール部材」で,引用意匠は,「パッキング」であるが,両意匠は,いずれも管状のものの隙間を封止するために用いられるものであるから,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。 (2)両意匠の形態 また,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。 なお,両意匠を対比するため,引用意匠のFIG.4を本願意匠の正面図の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定し,対比する。 (2-1)共通点 (A)全体を,やや厚みのある略倒短円筒形状の略リング状としたもので,側面視略倒凸字状に形成し,右側面側の外周を縮径し(以下,「右側面側小径部」という。),左側面側の外周の太い部分(以下,「左側面側大径部」という。)との間に傾斜面を形成している点, (B)右側面側小径部の厚みを左側面側大径部の厚みより薄く設けている点, において主に共通する。 (2-2)差異点 (ア)内周部について,本願意匠は,内周部を断面視して右側面側小径部端部から全体の深さの約1/3の位置に極細い傾斜面からなる段差部(以下,「段差部」という。)を形成しているのに対して,引用意匠は,内周部全体が平坦面である点, (イ)正面視した全体の高さと幅の縦横比について,本願意匠は,約1:2で幅が広いのに対して,引用意匠は,約1:4.4で幅が狭い点, (ウ)右側面側小径部の外周と左側面側大径部の外周との間の傾斜面を正面視した位置について,本願意匠は,右端寄りで小径側の幅が全体の約1/7の幅であるのに対して,引用意匠は,やや中央寄りで,小径側の幅が全体の約1/4の幅である点, において主な差異が認められる。 4.類否判断 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (2)両意匠の形態 (2-1)共通点 そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成ではあるが,全体を,やや厚みのある略倒短円筒形状の略リング状としたもので,側面視略倒凸字状に形成し,右側面側小径部と左側面側大径部との間に傾斜面を形成した態様は,全体の構成が共通するものではあるが,この種の物品分野においては両意匠以外にも既に普通に見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,全体の基本構成が共通している点のみでは両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。 次に,共通点(B)についても,右側面側小径部の厚みを左側面側大径部の厚みより薄く設けた態様が共通しているが,両意匠と同様に,右側面側小径部の厚みを左側面側大径部の厚みより薄く設けたものは,他にも見られる,さほど特徴のない態様といえるものであり,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 (2-2)差異点 これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。 すなわち,まず,差異点(ア)の内周面の段差部の有無について,本願意匠の段差部は,拡径した内周部が,プランジャの摺動によって生じるパッキンリングの滓を排出するための円筒状の空間を作り,パッキンリングの噛み込みによるプランジャの芯ずれやかじりを防止する機能を有するものであって,その用途及び機能の違いが形状に顕れたものであって,内周部全体が平坦面であり,正面視した全体の高さも低い引用意匠には,パッキンリングの滓を排出したり,プランジャの芯ずれやかじりを防止する機能はないことから,明らかに需要者に別異の印象を与えるものといえ,見た目の印象も異なるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 次に,差異点(イ)の正面視した全体の高さと幅の縦横比については,部分的な差異ではあるが,幅の広い本願意匠は,ややどっしりした印象を与えるもので,幅が狭い引用意匠は,華奢な印象を与えるもので,見た目の印象が明確に異なるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 また,差異点(ウ)の傾斜面を正面視した位置について,つまり,右側面側小径部の幅が全体に占める割合についても,部分的な特徴ではあるが,外周の態様は,需要者の注意を惹く部分であるから,本願意匠は,全体の高さに対して,右側面側小径部の幅が小さい印象を与えるもので,全体の高さに対して,右側面側小径部の幅が大きい印象を与える引用意匠とは,前記差異点(イ)と相俟って,需要者に与える印象が異なるもので,その差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-03-03 |
出願番号 | 意願2015-18887(D2015-18887) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(K8)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大峰 勝士 |
特許庁審判長 |
山田 繁和 |
特許庁審判官 |
正田 毅 斉藤 孝恵 |
登録日 | 2017-03-31 |
登録番号 | 意匠登録第1575039号(D1575039) |