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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 J1
管理番号 1327054 
審判番号 不服2016-16743
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-08 
確定日 2017-03-29 
意匠に係る物品 ガス検知器用検査機 
事件の表示 意願2015- 22235「ガス検知器用検査機」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)10月8日に出願された意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)を,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「ガス検知器用検査機」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものであって,「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界を示す線である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由及び本意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠は願書に記載した本意匠に類似する意匠とは認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しない,としたものであって,本意匠は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)10月8日の意匠登録出願であって,平成28年(2016年)7月1日に意匠権の設定の登録がなされ,同年8月1日に意匠公報が発行された意願2015-22236号(意匠登録第1555279号)の意匠であり,意匠に係る物品を「ガス検知器用検査機」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界を示す線である。」としたものである(以下,本意匠について意匠登録を受けようとする部分を「本意匠部分」といい,「本願部分」とあわせて「両意匠部分」という。)。(別紙第2参照)


第3 手続の経緯

原査定の拒絶の理由に対して,請求人は意見書を提出し,本願意匠は本意匠に類似する意匠であって,意匠法第10条第1項の規定に該当する旨主張したが,平成28年8月24日に拒絶の査定がなされたため,同査定を不服として平成28年11月8日に審判を請求したが,その後,平成29年2月3日に手続補正書を提出して,本願の願書に記載していた「本意匠の表示」の欄を削除した。


第4 当審の判断

以下,本願意匠が意匠法第10条第1項の規定に該当するものであるか否かを,主に,本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)を対比し,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行うことにより,本願意匠が本意匠に類似するか否かについて検討し,判断する。

1.共通点及び相違点の認定
両意匠の意匠に係る物品は,ともにガス検知器が正常に動作するか否かを検査するのに用いられる「ガス検知器用検査機」であり,一致する。
両意匠部分の用途及び機能,並びに大きさ及び範囲は,いずれもガス検知器用検査機本体正面のパネルの検査対象のガス検知器を装着する長方形の孔とガスボンベを装着するための円形の孔を,一点鎖線で略長方形状に囲んだ部分を意匠登録を受けようとする範囲としたものであるから,共通する。

しかしながら,両意匠部分の位置については,本願部分が,ガス検知器用検査機本体の正面の下方左端において,ガス検知器を装着する長方形の孔を斜面に配置し,ガスボンベを装着するための円形の孔を垂直面に配置して,それらを正面視において一点鎖線で横長略長方形状に囲んだ部分としているのに対し,本意匠は,ガス検知器用検査機本体の正面のパネルの上方にガス検知器を装着する長方形の孔とガスボンベを装着するための円形の孔を横に並べて一点鎖線で略長方形状に囲んだ部分を配置していることから,相違する。

次に,両意匠部分の形態については,略長方形の孔と円形の孔を設け,それらを一点鎖線で略長方形状に囲んだ部分としている点は共通するものの,本願部分は略長方形の孔を囲んだ面と円形の孔を囲んだ面の間に段差があるのに対し,本意匠は,略長方形の孔と円形の孔を囲んだ面は平坦な面で構成されていることが,相違する。

2.共通点及び相違点の評価
以下,共通点及び相違点の評価を行う。
(1)共通点についての評価
両意匠部分を,正面パネルの略長方形で囲んだ範囲に,検査対象のガス検知器やガスボンベを挿入する孔を並べて配置したとする用途及び機能,並びに大きさ及び範囲の共通点は,正面パネルの検査対象のガス検知器を1個とガスボンベを1本挿入する孔を並べた部分を,単に長方形で囲んだにすぎない概念的な共通点にすぎず,両意匠部分の共通点が類否判断を決定づけるまでの影響を及ぼすものではなく,共通の印象を与えるものとはいえない。
次に,略長方形の孔と円形の孔を設け,それらを一点鎖線で略長方形状に囲んだ部分とする両意匠部分の形態の共通点は,使用時において見えやすい部分の共通点ではあるが,部分全体から見た場合,正面視において長方形であるといった一部分の共通点に留まるものであり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。

(2)相違点についての評価
両意匠部分における配置の相違は,本願部分は正面の左下の斜面にガス検知器を装着する長方形の孔を配置し,その右の垂直面にガスボンベを装着するための円形の孔を横に並べて配置しているのに対し,本意匠部分は正面パネルの上方にガス検知器を装着する長方形の孔とガスボンベを装着するための円形の孔を平坦な面に横に並べて配置していることから,ガス検知器用検査機の使用時に,ガス検知器及びガスボンベを挿入する動作もしくは両意匠部分の観察の視点の相違となって表れ,明らかに需要者に与える印象を異ならせるものであって,類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
次に,両意匠部分の一点鎖線で略長方形状に囲んだ部分の形態において,略長方形の孔を囲んだ面と円形の孔を囲んだ面の間に段差があるか否かの相違点は,ガス検知器の挿入角度の違いとなって表れることから,使用者の注意を惹き,見るものに両意匠部分を別異のものと印象づけるものであって,類否判断に大きな影響を与えるものといえる。

そうすると,両意匠は,意匠に係る物品については一致し,用途及び機能,並びに大きさ及び範囲が共通するものであるが,両意匠部分の配置や形態において,その相違点が共通点を凌駕し,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。
したがって,本願意匠は,本意匠に類似しないものと認められる。


第5.むすび

以上のとおり,本願意匠は,本意匠に類似するものとは認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであるから,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものではあるが,前記第3に記載のとおり,平成29年2月3日に提出した手続補正書によって,本願の願書に記載していた「本意匠の表示」の欄を削除する補正がなされていることから,原査定の拒絶の理由によっては,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-03-15 
出願番号 意願2015-22235(D2015-22235) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (J1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 杉山 太一 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 正田 毅
山田 繁和
登録日 2017-04-14 
登録番号 意匠登録第1576279号(D1576279) 
代理人 宮地 正浩 

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