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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D4 |
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管理番号 | 1327055 |
審判番号 | 不服2016-16422 |
総通号数 | 209 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-02 |
確定日 | 2017-04-03 |
意匠に係る物品 | エアーコンディショナー |
事件の表示 | 意願2015- 8082「エアーコンディショナー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成27年(2015年)4月9日の意匠登録出願であって,本願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「エアーコンディショナー」であり,本願意匠の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものである。 特許庁発行の意匠公報に記載された, 意匠登録第1507424号(意匠に係る物品「スプリット型エアーコンディショナー」)の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)。 第3 本願意匠と引用意匠の対比 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「エアーコンディショナー」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「スプリット型エアーコンディショナー」である。 2 本願意匠と引用意匠の形態 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 (1)共通点 両意匠の形態には,以下の共通点が認められる。 (A)全体の構成態様 全体が,前後に厚みのある略横長直方体状であって,上面,側面,下面及び背面を占める本体部と,その前面に配された,正面視略横長長方形状のパネル部から成り,本体部上面の大部分に吸い込み口部が設けられて,パネル部の下方に,パネル部に連なるように底面視略横長長方形の吹き出し口部が設けられている。 (B)パネル部 正面から見て,左右全幅のほぼ一杯の横幅で,全高よりもやや小さい縦幅を占めるものであって,上端から中央部にかけてごく緩やかに後退して曲面を形成し,下端付近では大きく後退して曲面が急になっている。 (C)本体部 側面から見て,背面が鉛直状に表されており,上面が前端にいくにつれて下方に下がって緩傾斜曲面状に表されて,前端付近の曲面が急になっている。 (D)吸い込み口部 平面から見て,吸い込み口部はやや左寄りに配されており,吸い込み口部の内部には,5本の縦桟と複数本の横桟が設けられている。 (E)吹き出し口部 正面から見て左右全幅のほぼ一杯の横幅を占めており,側面から見ると,吹き出し口部はパネル部及び本体部下面と面一致状に連続しており,凸弧状の板状に表されている。 (2)差異点 一方,両意匠の形態には,以下の差異点が認められる。 (a)本体底面部の形状,及び吹き出し口部の位置 側面から見て,本願意匠の吹き出し口部は,本体部前後方向のほぼ中間位置にあり,その吹き出し口部は緩傾斜状に表されて,吹き出し口部の後端から背面部後端まで本体部の底面が平坦状に表されている。 これに対して,側面から見た引用意匠の吹き出し口部の位置は本体部前後方向中間点よりも前に位置しており,その吹き出し口部の傾斜は本願意匠の吹き出し口部に比べて急であり,吹き出し口部の後端から背面部後端までの本体部底面が,略凸弧状面として下方に膨出して表されている。 (b)側面視区画部の形状 本願意匠では,左側面から見て前端寄りに湾曲くさび状区画部が略J字状に表されており,右側面から見ると同区画部が略J字状の対称形に表されている。これに対して,引用意匠では,右側面から見て外周に沿ってほぼ一定幅の区画部が略u字状に表されており,左側面から見ると同区画部が略u字状の対称形に表されている。 (c)パネル部の突出の有無 本願意匠のパネル部の上端は,本体部の上面前端よりも僅かに上方に突出しているが,引用意匠では,パネル部上端は突出していない。 (d)吸い込み口部及びその周囲の態様 引用意匠の吸い込み口部の横桟は4本であり,平面視右方の余地部にその横桟が延長したような水平状の凸リブが4本形成されているが,本願意匠の横桟は2本であり,平面視右方の余地部に凸リブは形成されていない。 (e)色彩の有無 引用意匠のパネル部及び吹き出し口部は濃赤色に表されており,更にパネル部の上縁及び左右縁並びに吹き出し口部の左右縁が乳白色に表されているが,本願意匠にはそのような色彩は表されていない。 第4 類否判断 1 意匠に係る物品 前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は共に「エアーコンディショナー」に係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 2 両意匠の形態の共通点の評価 両意匠の共通点(A)ないし(D)の態様は,「エアーコンディショナー」の物品分野の意匠においては広く知られた態様であるといえるから,これらの共通点に対して需要者が特に注目するとはいい難いので,共通点(A)ないし(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 また,共通点(E)の態様,すなわち,吹き出し口部が左右全幅のほぼ一杯の横幅を占めてパネル部及び本体部下面と面一致状に連続し,凸弧状の板状に表された態様も,「エアーコンディショナー」の物品分野の意匠においては広く知られた態様である(例えば,意匠登録第1385905号の意匠。別紙第3参照。)から,需要者が共通点(E)に対して特別に注意を払うとはいい難いので,共通点(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといわざるを得ない。 そうすると,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいということができる。 3 両意匠の形態の差異点の評価 これに対して,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 まず,差異点(a)で指摘した,吹き出し口部が本体部前後方向のほぼ中間位置にあるか(本願意匠),中間点よりも前に位置しているか(引用意匠)の差異,及び,吹き出し口部の後端から背面部後端までの本体部底面が平坦状であるか(本願意匠),略凸弧状面として膨出しているか(引用意匠)の差異は,需要者が一見して気付く差異であって,吹き出し口部や本体部底面が天井よりに設置されるエアーコンディショナーの通常の使用状態において目立つ部位であることを踏まえると,これらの差異は,需要者に異なる視覚的印象を与えるとともに,両意匠を意匠全体で比較した際にも異なる美感を起こさせるものであるというべきであるから,差異点(a)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというほかない。 また,差異点(b)で指摘した側面視区画部の形状についての差異,すなわち,略U字状区画部が形成されているか(引用意匠),湾曲くさび状の区画部が形成されているか(本願意匠)の差異については,引用意匠の略U字状区画部が略凸弧状面としての膨出を強調しているといえるので,そうではない本願意匠と比べた際に,略U字状区画部であるか否かの差異は上記差異点(a)を助長するかのように両意匠が需要者に与える視覚的印象に変化をもたらしているというべきであるから,差異点(b)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。 そして,差異点(c)で指摘したパネル部の突出の有無の差異については,パネル部上端が本体部の上面前端よりも上方に突出した態様が「エアーコンディショナー」の物品分野の意匠において他にも見られる態様であるとしても,側面方向又は斜め方向から見たときに,需要者はその突出の有無の差異に注意を払うというべきであるから,差異点(c)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。 他方,差異点(d)の吸い込み口部の横桟の本数や凸リブの有無の差異については,横桟の本数は様々であって需要者が特にその本数に注視するとはいい難く,引用意匠に見られる凸リブも目立つものではないから,両意匠を意匠全体で比較した際には差異点(d)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。また,色彩の有無の差異点(e)についても,引用意匠に見られる濃赤色の色彩は単一色であって,パネル部及び吹き出し口部に一様に表されているだけであるから,需要者がその色彩を注視するとはいい難く,縁が乳白色に表されていることを勘案したとしても,両意匠の美感を異にするほどのものということはできず,本願意匠には色彩が表されておらずむしろありふれた態様であることを踏まえると,差異点(e)を本願意匠の引用意匠に対する差異として殊更高く評価することはできないので,差異点(e)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も小さい。 4 総合判断 以上のとおり,両意匠の形態の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいのに対して,両意匠の形態の差異点を総合すると両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ず,両意匠を意匠全体として比較した際には,形態の差異点が共通点を圧して,両意匠を全体として別異のものと印象付けるということができる。 5 小括 したがって,両意匠の意匠に係る物品は共通するが,両意匠の形態については,差異点が共通点を圧して両意匠を全体として別異のものと印象付けるので,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと認められる。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は原査定の拒絶の理由により,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-03-22 |
出願番号 | 意願2015-8082(D2015-8082) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 宏幸、越河 香苗 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 小林 裕和 |
登録日 | 2017-04-14 |
登録番号 | 意匠登録第1576214号(D1576214) |
代理人 | 原田 雅美 |
代理人 | 松原 美代子 |
代理人 | 川越 弘 |
代理人 | 渡邉 知子 |