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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L4 |
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管理番号 | 1329146 |
審判番号 | 不服2016-19312 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-12-26 |
確定日 | 2017-05-19 |
意匠に係る物品 | 軒樋取付具 |
事件の表示 | 意願2015- 21308「軒樋取付具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成27年(2015年)9月29日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は「軒樋取付具」であり,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似する意匠)に該当するため,同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)は,本願の出願日よりも前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載され,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,下記の意匠である。 <引用意匠>(当審注:別紙第2参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1453223号 (意匠に係る物品,軒樋吊具)の意匠 第3 当審の判断 1 両意匠の対比 (1)両意匠の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「軒樋取付具」であり,引用意匠に係る物品は「軒樋吊具」であるが,いずれも軒先に樋を取り付けるための部品であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (2)両意匠の形態 両意匠の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。 まず,共通点として, (A)全体は,本物品を建物の壁面等に取り付けるための取付部(以下「壁面取付部」という。)から,軒樋を支持するアーム(以下「アーム部」という。)が軒先に向かって形成され,そのアーム部先端部分及びアーム部付け根下側部分に軒樋を固定するための係止部(以下,先端側のものを「先端係止部」,付け根側のものを「後方係止部」という。)が形成された構成としている点, (B)壁面取付部は,右側面視を幅広な略T字状に形成し,その前面側角部を斜めに面取りし,その左右端部及び下端部中央部分に同径の円形貫通孔を1つずつ形成している点, (C)アーム部は,その中央に垂直板(以下「中央垂直部」という。)を設け,その上辺及び下辺部分に細幅帯状の水平板(以下,上辺部分のものを「上側水平部」といい,下辺部分のものを「下側水平部」という。)を配設し,側面から見た端面形状を略I字状になるように構成している点, (C-1)中央垂直部は,その先端部分を略三日月状に延伸した正面視扁平な略横S字状の垂直面としている点, (C-2)上側水平部は,壁面取付部上端部から先端部に向かって,水平部分,下向きの湾曲した長いスロープ部分,上向きの湾曲した短いスロープ部分,及び水平部分をなだらかにつないだ構成の略細幅帯状傾斜面としている点, (C-3)下側水平部は,壁面取付部中央やや上方部分から先端部に向かって,下向きに折曲したスロープ部分,水平部分,及び上側水平部下側部分に先端部付近で接合する上向きの湾曲した短いスロープ部分をなだらかにつないだ構成の略細幅帯状面としている点, (D)先端係止部は,上側水平部の先端部分を略L字状に折曲した形態としている点, (E)後方係止部は,壁面取付部と下側水平部の下向きに折曲したスロープ部分で構成される倒凹状に切り欠いたような形態としている点, が認められる。 他方,相違点として, (ア)後方係止部の態様について,本願意匠は,壁面取付部下方部分に形成された斜め上向きの板状突起部と,下側水平部の略直角に折曲したスロープ部分の外側中央部分に形成された縦長のリブ部によって軒樋端部を係止する構成としているのに対して,引用意匠は,壁面取付部に形成された上下2つの短いリブ部と,下側水平部の鈍角に折曲したスロープ部下端部から後方側に突出して形成された水平な板状突起部により軒樋端部を係止する構成としている点, (イ)壁面取付部の態様について,本願意匠は,T字状壁面取付部の左右内隅部分を斜め直線状に形成し,その他の角部分を隅丸に形成し,壁面取付部の下方部分に斜め段差部を一段形成し,壁面取付部の上方左右端部の小円形貫通孔の下側に大円形貫通孔を一つずつ形成しているのに対して,引用意匠は,T字状の全ての角部及び隅部分を隅丸に形成している点, (ウ)下側水平部の先端部下側部分に形成された板状片の有無について,本願意匠は,該部位に略直角二等辺三角形状の板状片を形成しているのに対して,引用意匠には,何も形成していない点, (エ)先端係止部の態様について,本願意匠は,上側水平部の厚みと同程度の高さに形成しているのに対して,引用意匠は,上側水平部のスロープ部分の約2倍の厚みと同程度の高さに形成され,その先端側部分を平面視略「〔(亀甲括弧)」形状に形成している点, (オ)上側水平部の態様について,本願意匠は,壁面取付部上端部側の水平部分の厚みを他の部分の約2倍とし,スロープ部との間に段差部を一段形成しているのに対して,引用意匠は,先端側水平部分の厚みを他の部分の2倍としている点, (カ)下側水平部の態様について,本願意匠は,略細幅帯状面全体を同幅としているのに対して,引用意匠は,下側水平部は,壁面取付部中央やや上方部分から下向きに折曲したスロープ部分の幅を他の部分の約1/2としている点, が認められる。 2.両意匠の形態の評価 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価する。 (1)共通点について 共通点(A)の全体の態様,及び共通点(B)ないし(E)の各部の態様は,この種軒樋取付具の分野において,本願意匠の出願前に既に見られるもの(例えば,参考意匠:特許庁意匠課が,2005年10月28日に受け入れた,積水化学工業株式会社が発行した内国カタログ「エスロン雨とい 住宅用 総合カタログ」第35頁所載の「樋用ブラケット」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC17046451号),別紙第3参照)であって,両意匠のみに共通する特徴であるとはいえないものであるから,これらの共通点(A)ないし(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響はそれほど大きいとはいえず,これらの共通点のみでは,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (2)相違点について 相違点(ア)の後方係止部の態様,及び(イ)の壁面取付部の態様については,本願意匠の軒樋取付具は,軒樋の外側に設けられた係止部を,壁面取付部の板状突起部に係止する方法で取り付けられるものであり,一方,引用意匠の軒樋吊具は,軒樋の外側に設けられた係止部を,下側水平部下端部の水平な板状突起部に係止する方法で取り付けられるものであるから,この物品の需要者である建築施工業者等が,軒樋の取付作業の際に特に注目する当該部分の相違は,それ以外の共通する態様に埋没してしまう程のものであるとはいえず,これらの相違点(ア)及び相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。 次に,相違点(ウ)の下側水平部の先端部下側部分に形成された板状片の有無については,使用時には取り付けられる樋材で隠れる小さな部位における相違であるが,該部位は取り付けられる樋材の形態に合わせて形成されるものであり,この物品の需要者が注視する部位であるから,この相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものである。 一方,相違点(エ)の先端係止部の態様,(オ)の上側水平部の態様,及び(カ)の下側水平部の態様については,この種物品分野では,各部位の厚みの変更等は極普通に行われる特段特徴のない改変に過ぎないものであるから,この相違点(オ)ないし(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。 そうすると,相違点(オ)ないし(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいとしても,特に相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点(イ)及び相違点(ウ)の及ぼす影響とも相俟って,これらの相違点(ア)ないし(カ)は,意匠全体として見た場合には,両意匠の類否判断を決定付けるほどのものであるといえる。 3.両意匠の類否判断 両意匠の意匠に係る物品の対比及び形態の評価を踏まえ,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。 上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品について共通し,形態については,共通点全体としては両意匠の類否判断を決定付けるとまでは至らないものであるのに対して,特に相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きく,相違点(ア)ないし(カ)は全体として両意匠の類否判断を決定付けているといえる。 したがって,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕(りょうが)し,両意匠は,視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-05-09 |
出願番号 | 意願2015-21308(D2015-21308) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中村 純典、木村 恭子 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 神谷 由紀 |
登録日 | 2017-06-02 |
登録番号 | 意匠登録第1579722号(D1579722) |
代理人 | 梅澤 修 |