• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B7
管理番号 1329153 
審判番号 不服2016-17230
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-18 
確定日 2017-05-22 
意匠に係る物品 コンパクト容器 
事件の表示 意願2015- 28561「コンパクト容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成27年(2015年)12月22日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「コンパクト容器」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁が平成18年(2006年)10月2日に発行した意匠公報掲載の意匠登録第1282665号「コンパクト」の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「コンパクト容器」であり,引用意匠は,「コンパクト」であるが,いずれも固形化粧料などを装填して持ち運ぶための小型の容器であるコンパクト容器であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
(1)共通点
(A)全体を,扁平な円錐台形状を大きな径の方で上下に二つ重ね合わせた略円盤形状とし,上部を略円錐台形状の蓋部(以下,「蓋部」という。)とし,薄い略凹板状の中蓋部(以下,「中蓋部」という。)を挟んで下部を略逆円錐台形状の化粧料を充填する本体部(以下,「本体部」という。)とし,本体部と蓋部とを蝶番で接続した点,
(B)蓋部は,平面視を円形状とし,上面を多角形状の平坦面として,その周囲にはダイヤモンドのクラウン部のラウンドブリリアントカット状(以下,「ダイヤモンドカット状」という。)に,二等辺三角形や菱形を面取り状に配した点,
において主に共通する。
(2)差異点
(ア)蓋部の態様について,本願意匠は,不透明体の一層構造でダイヤモンドカット状の外形状が稜線として表れるのに対して,引用意匠は,外層を透明体とし,内層を不透明体とする二層構造で,外層の稜線に加えて内層の稜線が視認される点,
(イ)正面視の厚みに対する横幅の比率について,本願意匠は,正面視の厚みに対する横幅の比率が約1:2.8で厚みが薄いのに対して,引用意匠は,約1:2.2で厚みがある点,
(ウ)中蓋部の態様について,本願意匠は,蓋部と同様に蝶番で本体部と接続されているのに対して,引用意匠は,蝶番で接続されていない点,
(エ)蓋部周囲を平面視した態様について,本願意匠は,ダイヤモンドカット状の面取りが蓋部の縁の外径端部から始まり,平面視した外周の円形と多角形の角が接しているのに対して,引用意匠は,極細い帯状の縁部を平面視した外周の円形に沿って外径端部に設けている点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
(1)共通点
そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成ではあるが,全体を,扁平な円錐台形状を大きな径の方で上下に二つ重ね合わせた略円盤形状とし,上部を略円錐台形状の蓋部とし,薄い略凹板状の中蓋部を挟んで下部を略逆円錐台形状の化粧料を充填する本体部とし,本体部と蓋部とを蝶番で接続した態様は,全体の構成が共通するものではあるが,この種の物品分野においては両意匠以外にも既に多数見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,また,両意匠の各部位には差異点が認められ,全体の基本構成が共通している点のみでは両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
次に,共通点(B)についても,蓋部が,平面視を円形状とし,上面を多角形状の平坦面として,その周囲にはダイヤモンドカット状に,二等辺三角形や菱形を面取り状に配した態様が共通しているが,両意匠と同様にダイヤモンドカット状に二等辺三角形や菱形を面取り状に配した態コンパクト容器は,他にも見られる態様といえるものであり,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
(2)差異点
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,まず,差異点(ア)の蓋部の態様については,不透明体の一層構造でダイヤモンドカット状の外形状が稜線として表れる本願意匠は,蓋部がシンプルな印象を与えるもので,外層を透明体とし,内層を不透明体とする二層構造で,外層の稜線に加えて内層の稜線が視認される引用意匠は,複雑で細かい印象を与えるもので,外層を透明体としていることによって,見た目の印象が明確に異なるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)の正面視の厚みについては,厚みが厚いものも薄いものも,いずれもありふれた態様といえるものであるので,類否判断にさほど大きな影響を与えるものとはいえないが,本願意匠は,本体部の厚みが明らかに薄く形成されており,本体部も厚めに形成されている引用意匠とは,視覚的な印象を異ならせるものといえ,蓋部と本体部の厚みについては,使用時に需要者の関心を惹く部分であるから,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
また,差異点(ウ)の中蓋部が蝶番で接続されているか否かについて,部分的な特徴であり,どちらの態様もありふれた態様といえるものではあるが,使用時にはパフを置くなどして,需要者が手にとって身近に観察する部分であるから,その差異を無視することができず,両意匠の使用時の印象が異なるもので,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
さらに,差異点(エ)の蓋部周囲を平面視した態様について,細部に係る態様ではあるが,本願意匠は,ダイヤモンドカット状の面取りが蓋部の縁の外径端部からすぐに始まり,平面視した外周の円形と多角形の角が接していることから,面取りがはっきり印象付けられるものといえ,極細い帯状の縁部を平面視した外周の円形に沿って外径端部に設けている引用意匠とは,その印象が異なるものといえるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。
(3)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-04-26 
出願番号 意願2015-28561(D2015-28561) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木本 直美上島 靖範 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 正田 毅
斉藤 孝恵
登録日 2017-06-09 
登録番号 意匠登録第1580236号(D1580236) 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ