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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1329162 
審判番号 不服2017-3960
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-17 
確定日 2017-06-19 
意匠に係る物品 マッサージ器具 
事件の表示 意願2016-10950「マッサージ器具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成28年(2016年)5月23日に出願されたものであって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「マッサージ器具」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,具体的には,本願意匠と引用意匠は,この種マッサージ器具の分野では特徴的な,全体を平面視略四つ葉状の各葉状部間の切り込みが顕著な略シート体とし,その正面側中央に略円盤状のコントローラ部を設け,略葉状部各面の正面側に薄い丘状面,及び背面側に略隅丸矩形状の電極部を左右対称に設けた基本的な構成態様が共通しており,両意匠は類似するものと判断される,というものである。
また,原査定における拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1545925号(意匠に係る物品,トレーニング機器)の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)である。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.両意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「マッサージ器具」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「トレーニング機器」であって,表記は異なるが,本願意匠の願書及び願書に添付した図面の記載並びに引用意匠に係る公報の記載によれば,両意匠の意匠に係る物品は,いずれも,筋肉を電気的に刺激するための器具として共通する。

(2)両意匠の形態
両意匠を対比すると,主に以下の共通点及び相違点を認めることができる。(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)

<共通点>
基本的態様として,
(A)全体は,正面視左右が線対称形状である略平板状のものであって,中央に偏平な略円形柱状の操作部を設け,その周囲に略5角形状の電極パッドを放射状に配置した略4つ葉状である点。
(B)底面視中央に略円形の蓋部を設け,それと接続するように設けられた4つの電極が,略同大の略隅丸長方形状である点。
具体的態様として,
(C)電極内に同形の区画が多数密に配されて,中央の区画は大きく,上下の区画は中央から離れる程小さくなっている点。
(D)正面の操作部には,「+」と「-」の模様が上下に配されている点。

<相違点>
具体的態様として,
(ア)平面視で,本願意匠は,上下が線対称形状であるのに対して,引用意匠は,上下については,電極パッドの左右端を上に寄せたような非対称形状である点。
(イ)平面視で,電極パッドの略中央に,本願意匠は,略隅丸長方形のごく低い隆起が設けられているのに対して,引用意匠は,電極パッドと略相似な5角形状の細溝線が3重に設けられている点。
(ウ)隣接する電極パッド間の切り込みが,本願意匠は角度の緩やかな略V字形状であるのに対して,引用意匠は角度のきつい略V字形状である点。
(エ)平面視及び底面視で,本願意匠は操作部の上下左右に楕円形状の模様が設けられているのに対して,引用意匠は操作部の左右に隅丸逆三角形状の通気孔が設けられている点。
(なお,本願の「内部構造を省略したA-A線切断面端面図」を参照すると,操作部の上下の楕円形状の部分にハッチングが施されていることから,当該楕円形状のものが「孔」であると認めることはできない。)
(オ)操作部の正面視形状が,本願意匠は縦長の楕円形状であるのに対して,引用意匠は円形状である点。
(カ)本願意匠は,外周の近傍に断面視略台形状にごく僅かに上方に隆起する一定幅の突起が設けられているのに対して,引用意匠は,パッドの外周を囲むような筋模様が設けられている点。
(キ)底面視で,本願意匠は4つの電極及び蓋部を囲むように筋模様が設けられているのに対して,引用意匠にはそのような模様が設けられていない点。
(ク)電極内の同形の区画が,本願意匠は略長円形であり,電極の外縁寄りには配されておらず,余地部が形成されているのに対して,引用意匠は略6角形であり,電極のほぼ一杯に配されて,余地部が形成されていない点。

2.両意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)両意匠の意匠に係る物品の評価
両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,筋肉を電気的に刺激するための器具(以下「この種器具」という。)は,本願の出願時に広く知られた物品であるから,両意匠の意匠に係る物品が共通することが,両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。

(2)両意匠の形態についての共通点の評価
基本的態様としてあげた共通点(A)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであって,この種器具において,正面視左右が線対称形状である略平板状であって,中央に偏平な略円形柱状の操作部を設けることは,ありふれた形態である。また,電極パッドが略5角形状である形態は,本願の出願時にすでにいくつか見られるものであり,両意匠のみに共通する形態とまではいうことができないので,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまるものといわざるを得ない。
また,共通点(B)のうち,底面視中央に略円形の蓋部を設けることは,この種器具においてありふれた形態であるし,それと接続するように設けられた電極が略同大の略隅丸長方形状であることや,共通点(C),すなわち電極内に同形の区画が多数密に配されて,中央の区画は大きく,上下の区画は中央から離れる程小さいことは,本願の出願時にすでにいくつか見られるものであって,両意匠のみに共通する形態とまではいうことができない。さらに,共通点(B)及び共通点(C)は,底面視における形態であって,この種器具を皮膚に当接して使用する際には目に付くものではないことを鑑みると,共通点(B)及び共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいというほかない。
そして,操作部に「+」と「-」の模様を配することは,この種器具においてありふれた形態であるから,共通点(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も小さいものであり,共通点全体としても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(3)両意匠の形態についての相違点の評価
これに対して,両意匠の具体的態様に係る相違点(ア)ないし(エ)は,非常に目に付き易い部位に係るものであるから,これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいか,一定程度以上あるというべきである。
とりわけ,相違点(ア)は,平面視で,本願意匠は,上下が線対称であるのに対して,引用意匠は,上下については,電極パッドの左右端を上に寄せたような非対称形状であるというものであって,全体の外形状に係る相違であるから一見して目に付くものといえる。この種器具において,上下及び左右が線対称であることがありふれた態様であることを考慮すると,引用意匠において上下が非対称であることは,一見して器具の上下を認識させる視覚効果をもたらすといえるから,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといわざるを得ない。
次に,相違点(イ)は,電極パッドの略中央に,本願意匠は,略隅丸長方形のごく低い隆起が設けられているのに対して,引用意匠は,電極パッドと略相似な5角形状の細溝線が3重に設けられているというものであるところ,電極パッドの略中央にごく低い隆起を設けることは,この種器具において,ありふれた形態であるとしても,電極パッドの外形と隆起の形状が相応していない形態は,他にはあまり見られないことから,相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きいというべきである。
また,相違点(ウ)は,電極パッド間の切り込みが,本願意匠は角度の緩やかな略V字形状であるのに対して,引用意匠は角度のきつい略V字形状であるというものであり,本願意匠は4つの電極パッドが相互に強く結びついた印象をもたらすのに対して,引用意匠は4つの電極パッドが分離した印象をもたらすことから,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるといえる。
そして,相違点(エ)は,本願意匠は操作部の上下左右に楕円形状の模様が設けられているのに対して,引用意匠は操作部の左右に隅丸逆三角形状の通気穴が設けられているというものであり,この種器具において,そのような模様を設けることは他にはあまり見られないが,模様自体は大きなものではないから,相違点(エ)は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるといえる。
他方,相違点(オ)は,操作部が,本願意匠は縦長の楕円形状であるのに対して,引用意匠は円形状であるというものであるが,縦長の楕円形状の操作部は,本願の出願時にすでにいくつか見られるから,相違点(オ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。
また,相違点(カ)は,本願意匠は,外周の近傍に断面視略台形状にごく僅かに上方に隆起する一定幅の突起が設けられているのに対して,引用意匠は,パッドの外周を囲むような筋模様が設けられているというものであるが,隆起の程度がごく僅かであるから,相違点(カ)が両意匠の類否判断に与える影響も小さいものである。
さらに,相違点(キ)は,底面視で,本願意匠は4つの電極及び蓋部を囲むように筋模様が設けられているのに対して,引用意匠にはそのような模様が設けられていないというものであり,相違点(ク)は,電極内の同形の区画が,本願意匠は略長円形であり,電極の外縁寄りには配されておらず,余地部が形成されているのに対して,引用意匠は略6角形であり,電極のほぼ一杯に配されて,余地部が形成されていないというものであるが,この種器具を皮膚に当接して使用する際には目に付くものではないから,相違点(キ)及び相違点(ク)が両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。
以上をまとめると,相違点(ア)ないし(ウ)が類否判断に及ぼす影響は共に大きく,相違点(エ)が類否判断に一定程度の影響を与えることから,相違点(オ)ないし(ク)が類否判断に小さいか微弱な影響しか与えないとしても,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,視覚的印象を異にするというべきである。

(4)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-06-07 
出願番号 意願2016-10950(D2016-10950) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 原川 宙 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 刈間 宏信
渡邉 久美
登録日 2017-06-30 
登録番号 意匠登録第1581887号(D1581887) 
代理人 金子 宏 

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