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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1330153 
審判番号 不服2017-1144
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-26 
確定日 2017-06-02 
意匠に係る物品 包装用容器 
事件の表示 意願2016- 4873「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成28年(2016年)3月4日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は「包装用容器」であり,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものであって,「赤色に着色した部分以外の部分(端面図においては実線であらわした部分)が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願において意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似する意匠)に該当するため,同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)は,本願の出願日よりも前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載され,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,下記の意匠である。(以下では,引用意匠のうち,本願意匠部分に対応する部分を「引用意匠部分」といい,本願意匠部分と合わせて「両意匠部分」という。)

【引用意匠】(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1496346号
(意匠に係る物品、包装用容器)の意匠

第3 当審の判断
1 両意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,いずれも「包装用容器」であり,一致する。

(2)両意匠部分の用途及び機能
両意匠部分はいずれも包装用容器の胴部と認められるから,両意匠部分の用途及び機能は一致する。

(3)両意匠部分の位置,大きさ及び範囲
両意匠部分の位置及び範囲は共通するものと認められる。
他方,両意匠部分の大きさを対比すると,下記の点において相違するものと認められる。
<相違点>
(ア)本願意匠部分は,引用意匠部分よりも縦長である点。

(4)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。
<共通点>
(A)胴部は,上下端の略円柱状の部分から中央部に向かって徐々に縮径しつつ,まず略六角柱状となるよう形成されたのち,さらに,胴部周面の6面の中央には大きな凹部が形成された態様であり,中央部における断面が略星形となるよう形成されている点。

<相違点>
(イ)本願意匠部分では,胴部の縦横比が約1.4:1であるのに対し,引用意匠部分では約1.1:1であり,本願意匠部分は引用意匠部分よりも胴部が縦長である点,
(ウ)本願意匠部分では,胴部周面に6つの凹曲面と6つの凸曲面が滑らかに連続して交互に形成され,両側面視において胴部の左右両端が緩やかな円弧状にすぼんだ形状として表れるのに対し,引用意匠部分では,各凹部の中心を頂点とした略平面状の4つの傾斜面が形成され,凹部中心の上下左右には傾斜面の境界線が明瞭に表れるとともに,両側面視において胴部の左右両端が略くの字状にすぼんだ形状として表れる点。

2 両意匠の類否判断
上記1(1)ないし(3)のとおり,両意匠は,意匠に係る物品は一致し,両意匠部分の用途及び機能は一致し,両意匠部分の位置及び範囲は共通するが,大きさ及び形態については以下のとおりである。
(1)共通点について
ア 共通点(A)のうち,胴部が上下端の略円柱状の部分から中央に向かって徐々に縮径しつつ略六角柱状となるよう形成された態様,及び胴部周面の6面に凹部を形成した態様については,下記参考意匠に見られるように,当該物品分野において公然知られた態様であり,特段目新しいものではない。
他方,共通点(A)のうち,中央部における断面が略星形となるよう形成された点については,引用意匠以前には見られない,独特の態様といえるものである。
しかしながら,胴部周面の具体的態様においては,相違点(ウ)において相違するから,当該態様が両意匠の類否判断に与える影響を大きく評価することはできない。
また,本願意匠及び引用意匠の平面図及び底面図からも明らかなように,両意匠部分の略星形の断面形状は通常の使用状態においては観察することが困難なものであり,また,当該物品分野における取引の実態を見ても,需要者が断面形状を特に注意して観察しているという事実は認められない。
そうすると,共通点(A)が両意匠の類否判断に与える影響は,小さくはないものの,一定程度にとどまるものであるといえる。
イ 上記アのとおり,共通点(A)が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度にとどまるものであって,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

【参考意匠】(別紙第3参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1440817号
(意匠に係る物品、包装用容器)の意匠

(2)相違点について
ア 相違点(ア)及び(イ)については,当該物品分野においてよく見られる範囲内の相違にすぎないから,これらが単独で両意匠の類否判断に与える影響は,小さい。
イ これに対し,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に与える影響は,大きい。
すなわち,相違点(ウ)は,使用に際して需要者が直接手に触れる部位に係るものであって,両意匠部分に占める面積の割合も大きいから,非常に目に付きやすく,需要者の注意を強くひくものであるといえる。
そして,上記相違点(ウ)により,本願意匠が曲線的で有機物的な印象を与えるものであるのに対し,引用意匠は角張った無機物的な印象を与えるものであるといえ,両意匠がもたらす視覚的印象に対して大きな影響をもたらしているといえる。
ウ また,相違点(ア)及び(イ)は両意匠の上記印象をさらに強調するものであるといえるから,相違点(ア)及び(イ)が相違点(ウ)と相まって両意匠の類否判断に与える影響は,大きい。
エ 上記アのとおり,相違点(ア)及び(イ)が単独で両意匠の類否判断に与える影響は小さいものの,上記イのとおり,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に与える影響は大きく,また,上記ウのとおり,相違点(ア)及び(イ)が相違点(ウ)と相まって両意匠の類否判断に与える影響も,大きい。

(3)小括
上記1(1)ないし(3)のとおり,両意匠は,意匠に係る物品は一致し,両意匠部分の用途及び機能は一致し,両意匠部分の位置及び範囲は共通するものの,両意匠部分の大きさ及び形態においては,上記2(1)イのとおり,共通点が両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し,上記2(2)エのとおり,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕(りょうが)し,両意匠は,視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-05-23 
出願番号 意願2016-4873(D2016-4873) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 並木 文子 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 須藤 竜也
江塚 尚弘
登録日 2017-07-07 
登録番号 意匠登録第1582520号(D1582520) 
代理人 永井 浩之 
代理人 朝倉 悟 
代理人 佐藤 泰和 
代理人 中村 行孝 
代理人 矢崎 和彦 

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