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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1331279 |
審判番号 | 不服2016-16749 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-08 |
確定日 | 2017-07-11 |
意匠に係る物品 | 包装用容器 |
事件の表示 | 意願2016- 420「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成28年(2016年)1月12日に意匠登録出願されたものであり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形態を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は,特許庁が平成14年6月4日に発行した意匠公報に記載された,意匠登録第1142465号(意匠に係る物品,包装用容器)の意匠であり,引用意匠の本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)を本願部分と対比の対象となる部分としたものであって,引用意匠及び引用部分の形態は,同公報に掲載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 第3 当審の判断 以下,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するか否かについて,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)を対比し,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行うことにより,本願意匠が引用意匠に類似するか否かを検討し,判断する。 なお,両意匠の対比にあたっては,意匠に係る物品はもとより,本願が物品の部分について意匠登録を受けようとするものであるから,本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)について,その用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲(以下「位置等」という。)を対比し,そして,両部分の形態を対比し,それらを踏まえて,本願意匠が引用意匠に類似するか否かを判断する。 (なお,対比するにあたり,引用意匠の図面の向きを本願意匠の図面の向きに合わせて認定する。具体的には,引用意匠の平面図を右に90度回転させたものを平面図として,引用意匠の他の図もそれに倣って認定する。) 1.両意匠の共通点及び相違点 (1)意匠に係る物品について 意匠に係る物品については,両意匠ともに「包装用容器」であるから,共通する。 (2)両部分の用途及び機能について 両部分の用途及び機能については,両部分ともに,略上半部を両部分それぞれが占める隆起部分(以下,「仕切部」という。)が,主に食品を盛りつけた後,透明な蓋を被せた状態で販売される容器において,食品を盛りつける凹状部(以下「食品収納部」という。)を複数に仕切るためのものであるから,共通する。 なお,請求人は請求書において,本願部分の仕切部は,一対の仕切部のうちの片方を前提としたものであり,破線で表したもう片方の仕切部とともに食品収納部の中央部を形成する用途及び機能を有したものであるのに対して,引用部分の仕切部は,単一の仕切部を前提としたものであり,本願部分のような用途及び機能を有したものではない旨主張するが,前述のとおり,両部分は,食品収納部を複数に仕切るためのものであるという点が共通しており,両部分の用途及び機能として,食品収納部のどの箇所を形成するための仕切部であるかという点についてまでも共通性を求めるものではなく,両部分の用途及び機能が非類似であるとするまでの相違とはいえない。 また,請求人は,本願部分は,仕切部の側面視左右両端部が容器本体の鍔部と接したものではなく,鍔部との間に凹状段差部が形成されており,内嵌合式の蓋体を装着しやすく,蓋体の嵌合部が凹状段差部に接して,嵌合した状態をしっかり維持することができるものであるのに対して,引用部分は,側面視左右両端部の上面が容器本体の鍔部と接触したものであり,本願部分と鍔部との間に見られる凹状段差部はなく,本願部分が有する用途及び機能を有したものではない旨主張するが,前記凹状段差部は破線で描かれており,本願部分に含まれる部分ではないから,請求人が主張する用途及び機能は,本願部分についてのものとはいえない。 (3)両部分の位置等について 両部分の位置等について,両部分ともに,仕切部の略上半部分であり,仕切部は,食品収納部の平面視上辺の右寄りから下辺の中央へ向けて設けたものである点が,共通する。 しかし,具体的に見れば,以下(ア)ないし(エ)の点が相違する。 (ア)平面視において,本願部分は,仕切部の上端が食品収納部の上辺の右から約3分の1のところに位置し,仕切部の下端が食品収納部の下辺の約中央のところに位置したものであるのに対して,引用部分は,仕切部の上端が食品収納部の上辺の右から約4分の1のところに位置し,仕切部の下端が食品収納部の下辺の右から約2.7分の1のところに位置したものである。 (イ)本願部分は,仕切部の高さを容器本体の深さよりも高く形成したものであり,側面視において,その中央寄りの頂部の位置が容器本体の周側面の上端よりも上方に位置したものであるのに対して,引用部分は,仕切部の高さを容器本体の深さと同じか,それよりも低くしたものであり,側面視において,その中央寄りの頂部の位置が容器本体の周側面の上端の高さと同じか,それよりも下方に位置したものである。 (ウ)本願部分は,上方へ向けて先細りする傾斜角度が略上半部分と略下半部分とでは大きく異なる仕切部の,略上半部分に位置したものであるのに対して,引用部分は,上方へ向けてほぼ一定の角度で漸次先細りする仕切部の,略上半部分に位置したものである。 (エ)本願部分は,仕切部の側面視左右両端と容器本体の鍔部との間に設けた凹状段差部の存在により,側面視左右両端が容器本体の鍔部と接触しない部分に位置したものであるのに対して,引用部分は,側面視左右両端が容器本体の鍔部と接触した部分に位置したものである。 (4)両部分の形態について まず,共通点として,主に,以下の(A)ないし(C)の点が認められる。 (A)平面視略ノ字状としたものである。 (B)側面視上辺について,左右両端寄りを末広がりの傾斜状とし,中央部を水平としたものである。 (C)厚みについて,側面視上方に向かって漸次薄くしたものである。 次に,相違点として,主に,以下の(a)及び(b)の点が認められる。 (a)本願部分は,断面形状を裾拡がりの略台形状とする基部の上部に形成した,垂直に近い角度で上方へ向けて漸次先細りし,頂面と側面が接する稜線に僅かな丸みを付けたものであるのに対して,引用部分は,斜視図や平面図から認定できる範囲において,断面形状を裾拡がりの略台形状の略上半部とし,頂面に太幅の平坦面が表れるものである。 (b)平面視において仕切部が容器本体に対してどの程度左右に傾斜したものであるかについて,仕切部の平面視上端から容器本体の下辺へ向けて鉛直に引いた仮想線に対する,仕切部の平面視上端から平面視下端へ向けて斜めに引いた仮想線の傾斜角度に基づけば,本願部分は,約30度傾斜したものであるのに対して,引用部分は,約10度傾斜したものである。 2.共通点及び相違点の評価 (1)共通点の評価 まず,意匠に係る物品については,共通していても,この共通点のみで類否を決することはできない。 次に,位置等の共通点については,両部分の位置等を大まかに捉えたものにすぎず,この共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響を大きく評価することはできない。 そして,形態の共通点(A)ないし(C)については,いずれも両部分の特徴を大まかに捉えたものにすぎず,この物品分野の仕切部において,いずれも従来から見られるものであるから,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きく評価することはできない。 (2)相違点の評価 まず,位置等の相違点(ア)ないし(エ)は,これらの相違点の全てを合わせた位置等の相違が,ありふれた範囲内に止まるものとはいえず,両部分の類否判断に及ぼす影響は,大きいものである。 次に,形態の相違点(a)は,断面形状に係る相違であるが,本願部分については,薄い壁状のものという印象を需要者に与え,その印象は,位置等の相違点(イ)で認定した,本願部分の頂部が容器本体の周側面の上端寄りも上方に位置している点,によって強調されるものであり,他方,引用部分については,厚い土手状のものという印象を需要者に与え,その印象は,位置等の相違点(イ)で認定した,引用部分の頂部が容器本体の周側面の上端と同じか,それよりも下方に位置している点,によって強調されるものであり,相違点(a)が両部分の類否判断に及ぼす影響は,大きいものである。 そして,形態の相違点(b)は,平面視における傾斜角度の相違であるが,本願部分は引用部分の約3倍大きく傾斜したものであり,その相違は,位置等の相違点(ア)で認定した,平面視における両部分の位置の相違と相俟って,食品の盛りつけ方や見え方の違いを生じさせるものであって,需要者は注視する観点の相違といえるから,相違点(b)が両部分の類否判断に及ぼす影響は,大きいものである。 以上の相違点を総合すると,位置等の相違点(ア)ないし(エ)と形態の相違点(a)及び(b)が相俟って,両部分について,需要者に異なる印象を与えるから,これらの相違点は,両部分の類否判断を決するものである,といえる。 3.類否判断 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については共通するものであるが,本願部分の位置等における本願部分の形態と引用部分の位置等における引用部分の形態とを対比した場合の相違点が相俟って生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕するものであって,需要者に異なる美感を起こさせるものである。 したがって,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと認められる。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠に類似する意匠ではなく,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-06-27 |
出願番号 | 意願2016-420(D2016-420) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 成田 陽一 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
正田 毅 江塚 尚弘 |
登録日 | 2017-08-10 |
登録番号 | 意匠登録第1585334号(D1585334) |
代理人 | 打越 佑介 |
代理人 | 下坂 スミ子 |