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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H2 |
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管理番号 | 1331283 |
審判番号 | 不服2017-3623 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-03-10 |
確定日 | 2017-07-11 |
意匠に係る物品 | 電源供給器 |
事件の表示 | 意願2016- 11446「電源供給器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成28年(2016年)5月30日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「電源供給器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願において意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。)。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似する意匠)に該当するため,同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)は,本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載され,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,下記の意匠である。(以下では,引用意匠のうち,本願意匠部分に対応する部分を「引用意匠部分」といい,本願意匠部分と合わせて「両意匠部分」という。) 【引用意匠】(別紙第2参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1475440号 (意匠に係る物品,電源供給器)の意匠において,この意匠登録出願の意匠登録を受けようとする部分に相当する,正面部における上下の端子台部エリアを除いた中間部分の意匠 第3 当審の判断 1 両意匠の対比 (1)両意匠の意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は「電源供給器」であり,一致する。 (2)両意匠部分の用途及び機能 両意匠部分の用途及び機能を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。 <共通点> (A)電源供給のための各種部品を搭載するハウジングの前面部の一部である点。 <相違点> (ア)本願意匠部分は「端子台」の用途及び機能を有するのに対し,引用意匠部分は「端子台」の用途及び機能を有しない点。 (3)両意匠部分の位置,大きさ及び範囲 両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は,ハウジングの前面中央部分であるので,おおむね一致する。 (4)両意匠部分の形態 両意匠部分の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。 <共通点> (B)ハウジングの前面部のうち,上端部及び下端部を除いた中間部を,正面視略縦長長方形の略平面状とし, (C)前面部と左側面部との間の角部,及び前面部と右側面部との間の角部の,垂直方向略中央に,左右一対となる略縦長六角形状の面取り部を形成し, (D)前面部の中央に縦長の溝部を設け, (E)溝部の右側の上寄りの位置に,正面視略円形状の小さな凹部を設けた点。 <相違点> (イ)本願意匠部分では,溝部上方の右寄りの位置に,正面視略長方形状の小型の端子台が正面側に僅かに突出して形成されているのに対し,引用意匠部分では,当該位置に端子台が形成されていない点。 (ウ)溝部の形態に関し,本願意匠部分では,溝部の上端が面取り部の上端よりも低い位置にあるとともに,溝部の下端が面取り部の下端よりも高い位置にあり,溝部の縦方向の長さが面取り部よりも短いのに対し,引用意匠部分では,溝部の上端と面取り部の上端の高さがほぼ一致するとともに,溝部の下端と面取り部の下端の高さがほぼ一致し,溝部の縦方向の長さが面取り部と略同一である点。 (エ)引用意匠部分では,正面視略円形状の小さな凹部の上方に,正面視略横長長方形状の小さな凹部が設けられているのに対し,本願意匠部分では,そのような凹部が設けられていない点。 (オ)本願意匠部分では,正面視略円形状の小さな凹部の中に,正面視略十字状の凹凸が形成されているのに対し,引用意匠部分では,そうした凹凸が形成されていない点。 2 両意匠の類否判断 上記1(1)及び(3)のとおり,両意匠は,意匠に係る物品は一致し,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲はおおむね一致するが,両意匠部分の用途及び機能並びに形態については,以下のとおりである。 (1)共通点について ア 共通点(A)及び(B)に係る用途及び機能並びに形態は,当該物品分野においてごく普通に見られるものであり,端子台の有無といった相違があるから,共通点(A)及び(B)が両意匠の類否判断に与える影響は,小さい。 イ 共通点(C)に係る形態は,目に付きやすい部位に係るものであり,かつ,引用意匠以前にはあまり見られなかった特徴的なものであるから,この特徴的な形態についての角部の共通点(C)が両意匠の類否判断に与える影響は,一定程度ある。 ウ 共通点(D)に係る形態は,非常に目に付きやすい部位に係るものではあるが,溝部自体の形態には特に目新しいところはなく,また,両意匠部分の溝部の具体的態様は相違点(ウ)の点で相違するから,共通点(D)が両意匠の類否判断に与える影響は,一定程度にとどまる。 エ 共通点(E)は,ごく小さな部位に係るものに過ぎないから,両意匠の類否判断に与える影響は,小さい。 オ 上記アないしエのとおり,共通点(A)ないし(E)が両意匠の類否判断に与える影響はいずれも一定程度のものであるか小さいものであり,共通点全体があいまって生じさせる美感を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (2)相違点について ア 相違点(ア)及び(イ)は,前面部中央上方という,非常に目に付きやすい部位に係るものである。また,当該物品の需要者にとって,配線作業の効率性や配線の整然性は重大な関心事であるから,端子及び端子台の形状及び位置には,特に大きな注意を払うものと認められる。 そうすると,相違点(ア)及び(イ)は,需要者の注意を強くひく用途及び機能若しくは部位に係るものであるといえるから,相違点(ア)及び(イ)が両意匠の類否判断に与える影響は,いずれも大きい。 イ 相違点(ウ)は,部分的な相違に過ぎないが,相違点(ウ)に係る形態と相違点(イ)に係る形態とを併せて考慮すると,本願意匠部分では,端子台,溝部及び面取り部が一体感をもって形成されることにより,引用意匠部分にはみられない美感を生じさせているといえる。 したがって,相違点(ウ)が単独で両意匠の類否判断に及ぼす影響はそれ程のものではないとしても,相違点(イ)とあいまって両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きい。 ウ 相違点(エ)及び(オ)は,ごく細部における相違点にすぎないものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。 エ 上記アないしウのとおり,相違点(エ)及び(オ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものの,相違点(ア)及び(イ)が両意匠の類否判断に与える影響は大きく,また,相違点(ウ)が相違点(イ)とあいまって両意匠の類否判断に与える影響も大きい。 (3)小括 上記1(1)及び(3)のとおり,両意匠は,意匠に係る物品は一致し,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲はおおむね一致するものの,両意匠部分の用途及び機能並びに形態においては,上記(1)オのとおり,共通点が両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し,上記(2)エのとおり,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕(りょうが)し,両意匠は,視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-06-27 |
出願番号 | 意願2016-11446(D2016-11446) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 北代 真一 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 須藤 竜也 |
登録日 | 2017-08-18 |
登録番号 | 意匠登録第1585753号(D1585753) |
代理人 | 山田 卓二 |
代理人 | 岡崎 博之 |
代理人 | 大塚 雅晴 |
代理人 | 田中 光雄 |