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審決分類 審判 査定不服   取り消して登録 M2
管理番号 1332302 
審判番号 不服2017-7028
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-16 
確定日 2017-09-01 
意匠に係る物品 締付用ノブ 
事件の表示 意願2016-9298「締付用ノブ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)4月27日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「締付用ノブ」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で,それ以外の部分を破線で表わした。各図において表われる一点鎖線は,部分意匠として登録を受けようとする部分とそれ以外の部分の境界のみを表している。」というものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由において示した引用意匠及び引用相当部分並びに拒絶査定において示した参考意匠は,以下のとおりである。

(1)引用意匠及び引用相当部分(別紙第2参照)
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2011年8月29日
受入日 特許庁意匠課受入2011年9月2日
掲載者 SHENG TAI BRASSWARE CO.,LTD
表題 Bathroom Brassware | Sanitary Brassware | Bathroom Faucets Manufacture
掲載ページのアドレス http://www.justime.com/ProductDetail.aspx?PROID=28
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ23025709号)に掲載された「給水栓用ノブ」の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)における本願実線部分に相当する部分(以下「引用相当部分」といい,本願実線部分と合わせて「両意匠部分」という。)

(2)参考意匠1(別紙第3参照)
意匠登録第152114号の意匠

(3)参考意匠2(別紙第4参照)
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2014年10月14日
受入日 特許庁意匠課受入2014年10月31日
掲載者 W.W. Grainger,Inc.
表題 KISSLER & CO Handle,Moen,Metal - Faucet Repair Parts - 32PE98|46-6791
掲載ページのアドレス http://www.grainger.com/product/KISSLER-CO-Handle-32PE98?s_pp=false&picUrl=//static.grainger.com/rp/s/is/image/Grainger/32PE98_AW01?$smthumb$
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ26042680号)に掲載された「給水栓用ハンドル」の意匠

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「締付用ノブ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「給水栓用ノブ」であるところ,給水栓用ノブは,ノブを回転させることで給水栓を締め付けるものであるから,両意匠の意匠に係る物品は,締め付けを行うためのノブとして共通する。

(2)両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分は,締め付けを行うためのノブの回転軸先端部分と,ノブの中央部を除く,ほぼ全体を占める部分であるから,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は一致する。
また,両意匠部分は,ノブを回転させることで締め付けを行う用途及び機能を有するから,両意匠部分の用途及び機能も一致する。

(3)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。(なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)

<共通点>
(A)全体は,略円筒状の回転軸を中心に,3つの略球状の指掛け部(以下「略球状部」という。)が放射状に膨出し,隣接する略球状部の間が滑らかな凹曲面で接続されている点。

<相違点>
(ア)平面視でのノブの中心と,略球状部の球の中心の距離が,本願意匠部分では,略球状部の直径よりも長いのに対して,引用相当部分では,略球状部の直径よりも短い点。
(イ)ノブの上面について,本願意匠部分は,ノブの中心側に向けて,略球状部の頂点の高さよりも漸次高くなるように凸曲面が形成されているのに対して,引用相当部分は,ノブの中心側に向けて,略球状部の球面に沿うように凹曲面が形成されている点。
(ウ)略球状部から回転軸に至るノブの底面側について,本願意匠部分は,略球状部の球面から斜め下方に傾斜した後,下方に向きを変えて回転軸につながる,滑らかな凸曲面が形成されているのに対して,引用相当部分は,底面側の形態が不明な点。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲が一致するが,形態については,以下のとおりである。

(1)両意匠部分の形態についての共通点の評価
共通点(A)は,ノブの全体が,略円筒状の回転軸を中心に,3つの略球状の指掛け部が放射状に膨出し,隣接する略球状部の間が滑らかな凹曲面で接続されているというものであるが,このような形態は,両意匠部分のほかにもいくつか見られるものであって,両意匠部分のみに見られる形態とまではいうことができないから,共通点(A)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできず,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(2)両意匠部分の形態についての相違点の評価
これに対して,相違点(ア)ないし(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,以下に示すように,それぞれ大きいものである。
まず,相違点(ア),すなわち平面視でのノブの中心と,略球状部の球の中心の距離が,本願意匠部分では,略球状部の直径よりも長いのに対して,引用相当部分では,略球状部の直径よりも短いことは,非常に目に付きやすいものであるし,これにより,本願意匠部分は略球状部が中心軸よりも離れることで,指を掛けやすく,ノブを強く締め付けられる印象を与えるのに対して,引用意匠部分は略球状部が中心軸に近づくことで,略球状部の丸みが強調され,小さくまとまった印象を与えることから,相違点(ア)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。
また,本願の願書の意匠に係る物品の説明によれば,本願意匠に係るノブは,食品機器や医療機器等に使用されるものであるところ,食品機器や医療機器は,衛生上の管理が厳しく求められることから,需要者は,本願意匠に係るノブについても,清潔さを保つことに高い関心を示すといえる。これを踏まえると,相違点(イ),すなわちノブの上面について,本願意匠部分は,ノブの中心側に向けて,略球状部の頂点の高さよりも漸次高くなるように凸曲面が形成されているのに対して,引用相当部分は,ノブの中心側に向けて,略球状部の球面に沿うように凹曲面が形成されている点は,非常に目に付きやすいものである上に,清潔さを保つことに高い関心を示す需要者に対して,本願意匠部分は引用相当部分のような凹みがないことから,汚れがたまりにくい印象を与え,相違点(イ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きいといえる。
また,相違点(ウ),すなわち略球状部から回転軸に至るノブの底面側について,本願意匠部分は,略球状部の球面から斜め下方に傾斜した後,下方に向きを変えて回転軸につながる,滑らかな凸曲面が形成されていることは,目に付きやすいものではないが,清潔さを保つことに高い関心を示す需要者に対して,汚れを洗い流しやすい印象を与えるといえるから,相違点(ウ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きいといわざるを得ない。
そして,相違点(ア)ないし(ウ)があいまった視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠部分は,視覚的印象を異にするというべきである。

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲が一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠部分は視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-08-17 
出願番号 意願2016-9298(D2016-9298) 
審決分類 D 1 8・ 131- WY (M2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 樫本 光司 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 刈間 宏信
渡邉 久美
登録日 2017-09-29 
登録番号 意匠登録第1588787号(D1588787) 
代理人 恩田 誠 
代理人 恩田 博宣 

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