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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 B3 |
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管理番号 | 1332310 |
審判番号 | 不服2017-6868 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-12 |
確定日 | 2017-09-08 |
意匠に係る物品 | 腕章 |
事件の表示 | 意願2016-1914「腕章」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)1月29日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「腕章」とし,形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとし,「六面図において赤色に着色された部分を除く部分,及び端面図において実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。端面図を含めて意匠登録を受けようとする部分を特定している。透明部分を示す各参考図において,緑色に着色された部分及び薄墨を施した部分は透明である。各図において表面部全面に表された濃淡は,いずれも立体表面の形状を特定するためのものである。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照) そして,本願実線部分は,横長長方形の腕章の正面及び背面の左端上下に位置する,同形同大の2つの横長長方形部分を除く部分であって,本願実線部分の形態については,主に以下の点を認めることができる。 (形態A)全体は,高さと幅の比が略1:4の横長角丸長方形の薄いシート状の本体部の正面及び背面に,本体部と同じ高さで,本体部の略2/3の横幅のごく薄い透明シートを,左右に同じ幅の余地部を残して中央に設けたものである点。 (形態B)本体部並びに表面及び背面の透明シートの上端及び下端には接着部が設けられ,接着部以外では,本体部並びに表面及び背面の透明シートの間に隙間が設けられている点。 (形態C)全体の正面中央上端寄りに,本体部並びに表面及び背面の透明シートを貫通する丸穴が設けられている点。 第2 原査定における拒絶の理由及び公知意匠 1.拒絶の理由の概要 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,その概要は,この種の腕章の物品分野において,表面と裏面の両面に表示面を設けることは,例えば公知意匠2及び公知意匠3に見られるように公然知られた手法であり,本願意匠のように透明なポケット部があり台紙の差し替えができる差し替え式の腕章も,公知意匠1に示すように公然知られているので,本願意匠は,公然知られた公知意匠1の腕章の表面の形態を,単にそのまま腕章の表面と裏面の両面に設け,意匠登録を受けようとする部分としたまでに過ぎず,この種の物品分野における通常の知識を有する者であれば容易に創作できたものと認められる,というものである。 2.公知意匠 拒絶の理由において示された公知意匠は,以下のとおりである。 (1)公知意匠1 (別紙第2参照) ホームページの著作者:備後史探訪の会 表題:備後史探訪の会スタッフブログ「腕章を作りました」 掲載箇所:添付のイメージ中,2ページ目 媒体のタイプ:[online] 掲載年月日(公知日):2013年1月16日 検索日:[2016年10月5日検索] 情報の情報源:インターネット 掲載ページのアドレス:http://blogs.yahoo.co.jp/b_tan_kai/62317744.html に表された黄色の腕章の意匠(赤枠で囲み矢印で示した意匠) (2)公知意匠2 (別紙第3参照) ホームページの著作者:米国NPOインターネットアーカイブ(該当ページの著作者は水谷商会) 表題:ゲートボールJGUベルト式腕章セット(主審/副審2個・主将赤白1個・記録員/線審1個) 掲載箇所:添付のイメージ中、2ページ目 媒体のタイプ:[online] 掲載年月日(公知日):2013年6月27日 検索日:[2016年9月30日検索] 情報の情報源:インターネット 掲載ページのアドレス:http://web.archive.org/web/20130627053327/http://item.rakuten.co.jp/mizutanisyoukai/gb-jguw-set/ (該当ページのアドレスはhttp://item.rakuten.co.jp/mizutanisyoukai/gb-jguw-set/ ) に表された腕章の意匠(赤枠で囲み矢印で示した意匠) (3)公知意匠3 (別紙第4参照) 特許庁発行の登録実用新案公報記載 実用新案登録第3006827号 図1及び図2に表された腕章の意匠 第3 当審の判断 本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠が容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。 1.公知相当部分の形態 公知意匠1ないし公知意匠3において,本願実線部分に相当する部分(以下「公知相当部分1」などという。)の形態について,主に以下の点を認めることができる。(以下,本願意匠の図面における正面,背面等の向きを,公知意匠にもあてはめることとする。) (1)公知相当部分1 (形態1A)全体は,高さと幅の比が略1:5の横長角丸長方形の薄いシート状の本体部の正面に,本体部と同じ高さで,本体部の略8/9の横幅のごく薄い透明シートを,左右に同じ幅の余地部を残して中央に設けたものである点。 (形態1B)本体部及び表面の透明シートの間に隙間が設けられている点。 (形態1C)全体の正面中央上端寄りに,本体部及び表面の透明シートを貫通する丸穴が設けられている点。 (2)公知相当部分2 公知意匠2については,写真版において「表」として現されている面を正面として,図面の向きをあてはめることとする。 (形態2A)全体は,高さと幅の比が略1:3の略横長長方形の本体部の正面及び背面が,透明シートで覆われて,本体部の正面及び背面の左右端に,透明シートよりも縦幅の大きい略縦長D字状のベルト取付部を対称に設け,正面視右のベルト取付部に,ごく短い横幅のベルトを介してバックルを設け,正面視左のベルト取付部に,本体部の略1.5倍の横幅のベルトを設けた点。 (形態2E)本体部の正面及び背面の略中央の模様部を挟んで,左右に一文字分の文字部が設けられている点。 (3)公知相当部分3 公知意匠3については,図2の上に表されている面を正面として,図面の向きをあてはめることとする。 (形態3A)全体は,高さと幅の比が略1:4.5の横長長方形の薄いシート状の本体部である点。 (形態3C)全体の正面中央上端寄りに,貫通穴が横に並んで2つ設けられ,左端寄りに,貫通穴が縦に並んで2つ設けられ,右端寄りに,貫通穴が縦横に並んで4つ設けられている点。 (形態3E)本体部の正面の上下端及び中央には,グリーン系の色の横帯が合計3本設けられ,その間に白色の横帯が合計2本設けられており,背面の略中央を挟んで,左右に一文字分の文字部が設けられている点。 2.本願意匠の創作容易性について 本願実線部分の形態は,上記第1の形態Aないし形態Dに示すとおりであり,本願実線部分について,表面と背面では,形態が全く同一であることを認定することができる。 これに対して,公知相当部分2及び公知相当部分3の形態を参照すると,表面と裏面の両面に表示面を設けていることから,腕章の物品分野において,本願の出願前に,表面だけでなく背面についても何らかの表示を行う面として利用するという着想ないし思想が存在することは認めることができる。 しかし,その着想ないし思想を,物品の形態として具体化するにあたり,表面と背面で形態を全く同一にするという手法は,公知相当部分2の形態2Aにおける本体部,透明シート及びベルト取付部,並びに形態2Eの模様部及び文字部のみに見られるにすぎず,公知相当部分3にも見られるわけではない。また,腕章の物品分野において,上記の手法を示す証拠はほかにないから,表面と裏面の両面に表示面を設けることが,公知相当部分2及び公知相当部分3に見られるように公然知られているとしても,表面と背面の形態を同一とすることがありふれた手法であるということはできない。 そうすると,公知相当部分1の表面の形態と全く同一となるように,背面の形態を創作することは,当業者が容易になし得たものということはできない。 したがって,本願意匠は,当業者であれば,容易に創作することができたということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであり,その拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-08-29 |
出願番号 | 意願2016-1914(D2016-1914) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(B3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山永 滋 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 渡邉 久美 |
登録日 | 2017-09-22 |
登録番号 | 意匠登録第1588312号(D1588312) |
代理人 | 石井 隆明 |
代理人 | 藤本 昇 |
代理人 | 野村 慎一 |