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審決分類 |
審判 査定不服 意9条先願 取り消して登録 D7 審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 D7 |
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管理番号 | 1333283 |
審判番号 | 不服2017-1643 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-03 |
確定日 | 2017-08-02 |
意匠に係る物品 | 風呂椅子 |
事件の表示 | 意願2015-24426「風呂椅子」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯及び本願意匠 本願は,平成27年(2015年)10月31日の意匠登録出願であって,平成28年7月26日付けで,意匠法第9条第1項についての拒絶理由が通知され,同年10月27日付けで拒絶査定がされ,平成29年2月3日に本件審判請求がされ,同年6月12日にされた手続補正により,本願の願書に,意匠登録第1555208号を本意匠とする旨の本意匠の表示が追加された。 そして,本願に係る意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「風呂椅子」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び先願意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,意匠登録第1555208号の意匠(以下「先願意匠」という。別紙第2参照)に類似するものと認められるので,最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないため,意匠法第9条第1項の規定により意匠登録を受けることができない,というものである。 第3 当審の判断 上記第1に示すように,本願は,先願意匠を本意匠とする関連意匠の出願とされたから,本願意匠が,意匠法第10条第1項に規定する関連意匠に該当するか否かを検討した後,原査定の理由を検討する。 1.両意匠の対比 本願意匠と先願意匠(以下「両意匠」という。)は,意匠に係る物品が「風呂椅子」という点で一致するが,形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 <共通点> (A)全体は,平面視略かまぼこ状の座面から略放射状に外に広がるように4本の脚部が設けられている点。 (B)正面の胴部及び脚部は,略倒コ字状の面で構成されており,左右側面と背面の胴部及び脚部は,一つながりの面で構成されており,両構成の面の境界が,平面視略ハ字状の稜線で表れている点。 (C)胴部は,正背面及び左右側面の略中央が外に膨出するように湾曲すると共に,下方に向けて広がるように傾斜することで,正背面及び左右側面の略中央の胴部下端が,脚部の上部よりも外に張り出しており,正背面視及び側面視で,左右の胴部下端から脚部につながる庇状の稜線が表れる点。 (D)座面の略中央に,平面視略隅丸矩形状の貫通孔が設けられている点。 (E)座面は,背面側の外周が高く,外周から貫通孔に向けて低くなるように湾曲している点。 (F)4本の脚部の下端には,同じ高さの滑り止め部が設けられている点。 <相違点> (ア)本願意匠は,座面の上に厚みが略均一なクッションが設けられ,貫通孔がクッションも貫通するように設けられているのに対して,先願意匠は,クッションが設けられていない点。 (イ)本願意匠は横幅よりも高さが低いのに対して,先願意匠は横幅よりも高さが高い点。 (ウ)正背面視左右及び右側面視左の庇状の稜線が,本願意匠はかぎ状であるのに対して,先願意匠は緩やかな曲線状である点。 (エ)正面の胴部及び脚部を構成する面と,左右側面と背面の胴部及び脚部を構成する面との境界が,本願意匠は正面視左右の外形線の内側に表れるのに対して,先願意匠は正面視左右の外形線と一致して表れる点。 2.両意匠の類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 (1)両意匠の形態についての共通点の評価 本願意匠に係る物品である風呂椅子は,使用の際に,主に上から見下ろすように観察されるものであることから,共通点(A)及び(B)は,非常に目に付きやすいものといえる。また,風呂椅子の物品分野(以下「この種物品分野」という。)においては,丸みを帯びた形態が一般的であることから,共通点(A)に係る,座面が平面視略かまぼこ状である点や,共通点(B)に係る,胴部及び脚部を構成する面の境界が平面視略ハ字状の稜線となって表れている点は,両意匠のほかには,あまり見られない形態であって,両意匠が共通するという印象を強く与え,両意匠の類否判断に大きな影響を与えているといえる。 これに対して,共通点(C)のうち,胴部は,正背面及び左右側面の略中央が外に膨出するように湾曲すると共に,下方に向けて広がるように傾斜することで,胴部下端が脚部の上部よりも外に張り出している点は,俯瞰して観察する際に目に付くものではあるが,この種物品分野において,他にも見られるものである。また,共通点(C)のうち,正背面視及び側面視左右の胴部下端から脚部につながる庇状の稜線が表れる点は,俯瞰した状態では観察できないものであるから,共通点(C)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいというべきである。 また,共通点(D)及び(E)は,目に付きやすいものではあるが,座面の略中央に平面視略隅丸矩形状の貫通孔を設ける形態や,座面の背面側の外周が高く,外周から貫通孔に向けて低くなるように湾曲している形態は,この種物品分野において,ありふれた形態であるから,共通点(D)及び(E)が両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。 さらに,共通点(F)は,俯瞰して観察する際に目に付くものではあるが,脚部の下端に同じ高さの滑り止め部を設ける形態は,ありふれたものであるから,共通点(F)が両意匠の類否判断に与える影響も微弱である。 (2)両意匠の形態についての相違点の評価 これに対して,相違点(ア)は,本願意匠は,座面の上に厚みが略均一なクッションが設けられ,貫通孔がクッションも貫通するように設けられているのに対して,先願意匠は,クッションが設けられていないというものであり,俯瞰した際にも目に付きやすいものではあるが,そもそもクッションは,風呂椅子を構成する部材の一つであって,座面に沿って均一な厚みで設けられていることから,共通点(A)の印象に埋没してしまう程度の部分的な差異にすぎない。 したがって,相違点(ア)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。 また,相違点(イ)ないし(エ)は,俯瞰して観察した際には,ほとんど気付かないものであるから,相違点(イ)ないし(エ)が両意匠の類否判断に与える影響は,微弱なものである。 (3)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,形態においても,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいというべきであるのに対して,相違点の印象は共通点の印象に埋没してしまう程度のものであるから,意匠全体として見た場合,本願意匠は先願意匠に類似する。 3.先願意匠に係る出願の出願人,出願日及び公報発行日 先願意匠に係る出願の出願人は,新輝合成株式会社であるから,本願の出願人と同一人である。 また,先願意匠に係る出願の出願日は,平成27年8月31日であり,先願意匠に係る出願が掲載された意匠公報の発行日は,平成28年8月1日であるから,本願の出願日は,先願意匠に係る出願の出願日以降であって,上記公報の発行日前である。 4.関連意匠の適否及び原査定の理由の検討 以上のとおり,本願の出願人は,先願意匠に係る出願の出願人と同一人であり,本願意匠は先願意匠と類似し,本願の出願日は,先願意匠に係る出願の出願日以降であって,先願意匠に係る出願が掲載された意匠公報の発行日前であるから,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に適合し,先願意匠を本意匠とする関連意匠であると認めることができる。 したがって,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 第4 むすび 以上のとおり,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定する関連意匠に該当するから,本願は,原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,さらに審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-07-12 |
出願番号 | 意願2015-24426(D2015-24426) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(D7)
D 1 8・ 4- WY (D7) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 前畑 さおり |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 刈間 宏信 |
登録日 | 2017-10-27 |
登録番号 | 意匠登録第1591571号(D1591571) |
代理人 | 神保 欣正 |