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審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 D3 |
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管理番号 | 1333302 |
審判番号 | 不服2017-7341 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-22 |
確定日 | 2017-10-03 |
意匠に係る物品 | 検査用照明器具 |
事件の表示 | 意願2016- 11131「検査用照明器具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成28年(2016年)5月25日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「検査用照明器具」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものであって,「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という)。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び本意匠 原審における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠(意願2016-11113号(意匠登録第1567600号)の意匠。)に類似する意匠と認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものである。 願書に記載した本意匠は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成28年(2016年)5月25日(本願と同日)に出願され,同年12月16日に登録の設定をされたものであり,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「検査用照明器具」とし,その形態は,願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,願書に記載した本意匠について意匠登録を受けようとする部分を「本意匠部分」という。)。(別紙第2参照) 第3 手続の経緯 原審の上記拒絶の理由に対して,出願人は,平成28年12月19日に意見書を提出し,本願意匠は本意匠に類似するため,意匠法第10条第1項の規定により,意願2016-11113号の意匠を本意匠とする関連意匠として意匠登録されるべきものであると主張したが,平成29年2月16日付けで拒絶査定がなされたため,平成29年5月22日に審判請求書を提出し,29年7月28日に願書に記載の「本意匠の表示」を削除する手続補正書を提出し,本願を関連意匠の意匠登録出願ではないものに変更した。 第4 当審の判断 1.本願意匠と本意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「検査用照明器具」であり,願書に記載した本意匠の意匠に係る物品は,「検査用照明器具」であって,本願意匠と願書に記載した本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,一致する。 (2)本願意匠部分と本意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ,及び範囲 本願意匠部分と本意匠部分(以下「両意匠部分」という。)は共に,全体が略横長直方体状であって,上面の長手方向角部の一方を段状に形成したものであり, 略横長直方体状の検査用照明器具の底面側放熱フィン部及び長手方向両端側を除く,上方中央部分を区画した部分であって,縦方向略半ばから上方の部分であり,製品の検査を目的として内部のLED光をロッドレンズで集光して上面の透光板を介して外部に射出する機能を有することから,その用途及び機能,並びに位置,大きさ,及び範囲は共通する。 (3)形態 本願意匠部分と本意匠部分の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,願書に記載した本意匠にもあてはめることとする。 (3-1)共通点 基本的構成態様として, (A)全体が略横長直方体状であって,上面の長手方向角部の一方を段状に形成したものである点が共通し, 具体的構成態様として, (B)検査用照明器具の透光板(平面)について 検査用照明器具の上面の透光板部は,正面及び背面側の側壁部が透光板面より僅かに高く縁状に形成され、挟まれた透光板面は平坦なものである点, (C)側壁部について 両意匠部分の背面側の段状部の下側(下段側壁部)は長手方向いっぱいの溝部と平坦面からなるものである点,が共通する。 (3-2)相違点 具体的構成態様として, (ア)上面部奥行き幅と段状部の高さ奥行き比率について 本願意匠部分は,透光板を有する上面部の奥行き幅が全体の奥行き幅の約2分の1であって,段状部の上段側の側壁部(上段側壁部)の高さと下段の段状部上面の奥行き幅が約3:2であるのに対し,本意匠部分は上面部の奥行き幅が約4分の3で,段状部の上段側壁部の高さと下段の段状部上面の奥行き幅が2:1である点, (イ)背面側側壁部の態様 本願意匠部分の上段側壁部には,長手方向いっぱいに低い凸条部が設けられ,段の角部(稜部)は,長手方向いっぱいに面取りされており,下段側壁部の溝部が下端寄りに設けられているのに対し,本意匠部分の上段側壁部にはそのような凸部は無く平坦であって,段の角部(稜部)には,面取りは施されておらず,下段側壁部の溝部が上端寄りに設けられている点, (ウ)正面側側壁部の態様 本願意匠部分では正面側の側壁部について 本願意匠部分は正面側の側壁部下端寄り長手方向いっぱいに溝部を設けているのに対し,本意匠部分では正面側の側壁部に溝部はない点, (エ)側壁部の区画部について 本願意匠部分の正面側及び背面側の上段側壁部上端寄りには上下に平行する2本の長円状区画で左右を挟まれた横長矩形区画が横方向に2単位繰り返して配されているのに対し、本意匠部分には,上段側壁部上端寄りにそのような区画部はなく,平坦なものである点,が相違する。 2.類否判断 以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 (1)意匠に係る物品の評価 前記,第4の1.(1)のとおり,両意匠の意匠に係る物品は,一致するが,同様の意匠に係る物品(本願意匠においては「検査用照明器具」)であるものは,多数見受けられ,意匠に係る物品が一致することにより,両意匠の類否判断に与える影響は,小さいものである。 (2)用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲の評価 前記,第4の1.(2)のとおり,両意匠部分は,その用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通するが,両意匠の意匠に係る物品「検査用照明器具」の物品分野において,両意匠部分と同様の部分として対比可能な,用途及び機能並びに大きさを有する意匠は,本願出願前に見受けられるので,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 (3)形態の評価 (3-1)形態の共通点の評価 基本的構成態様としてあげた共通点(A)は,両意匠部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであって,上面の角部を段状に形成することもこの分野でよく見受けられるものであるから,この点をもって,両意匠部分の類否を決定するものとはいえない。また,具体的構成態様としてあげた共通点(B)は,透光板を通して照明光が射出されるから,この種「検査用照明器具」の物品分野においては,需要者が注意を向けるところといえるが,縁部が僅かに高く形成され、透光板面が平坦なものであるのものは,本願出願前に普通に見受けられることから,この点が,両意匠部分の類否及ぼす影響は小さい。共通点(C)の両意匠部分の下段側壁部が長手方向いっぱいに設けられた溝部と垂直状の平坦面からなるものである点は,側壁部が平坦面と溝部から構成されたものは「検査用照明器具」の物品分野において,本願出願前に普通に見受けられることから,格別, 需要者の注意を惹くものとはいえず,これらの点が両意匠部分の類否判断に与える影響は小さい。 したがって,共通点(A),(B)及び(C)の両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共に小さく,共通点全体であいまって生じる効果を考慮したとしても,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (3-2)形態の相違点の評価 これに対して,両意匠部分の具体的構成態様に係る相違点は,相違点(ア)は,両意匠部分の各部の構成比率に関わるものであって、特に透光板部については,需要者も十分注意を払うところであるから,透光板部の全体に対する大きさが本願意匠が3分の2であるのに対し,本意匠が4分の3である点については,一見して目に付く相違であって,両意匠部分の類否判断に大きな影響を与えるものである。相違点(イ)は,段状部の上段部及び下段部の具体的態様に係るものであって,低い凸条部及び面取りの有無や溝部の位置など部分的相違ではあるものの,目に付く段状部周辺の相違であって,両意匠部分の類否判断に一定の影響を及ぼすものである。相違点(ウ)は,正面側の溝部の有無にかかる相違であるが,この種「検査用照明器具」の物品分野において、側壁部が平坦なものも溝部があるものも普通に見受けられる態様であるから,両意匠部分の類否判断に与える影響は小さい。そして相違点(エ)は,正面側及び背面側の上端部長手方向いっぱいに亘って区画部を配したか否かの相違であり,透光板周辺の,一見して看取可能な相違であって,この点が両意匠部分の類否判断に与える影響は大きい。 (3-3)形態の総合評価 そうすると,形態における共通点(A),(B)及び(C)の両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は,共に小さいものであって,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,形態の相違点(ウ)が両意匠部分の類否判断に与え得る影響は小さいとしても,相違点(イ)は,両意匠部分の類否判断に一定の影響を与え,相違点(ア)及び相違点(エ)は,両意匠部分の類否判断に大きな影響を与えるものであって,それら相違点(ア)ないし相違点(エ)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると,相違点は,共通点を凌駕して,両意匠部分を別異のものと印象付けるものである。 3.小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,一致し,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置、大きさ及び範囲において共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠部分を,全体として別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,願書に記載した本意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,願書に記載した本意匠に類似せず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであるが,前記第3に記載のとおり,請求人が平成29年7月28日に提出した手続補正書によって本願願書の本意匠の表示を削除する補正がなされ,原審の拒絶の理由は解消しているので,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-09-21 |
出願番号 | 意願2016-11131(D2016-11131) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(D3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 朝康 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
正田 毅 渡邉 久美 |
登録日 | 2017-10-20 |
登録番号 | 意匠登録第1590570号(D1590570) |
代理人 | 西村 竜平 |
代理人 | 齊藤 真大 |