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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1334432 
審判番号 不服2017-10498
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-14 
確定日 2017-11-01 
意匠に係る物品 電子計算機 
事件の表示 意願2016- 17533「電子計算機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成28年(2016年)8月17日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「電子計算機」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由として引用した意匠は,特許庁が平成25年(2013年)8月12日に発行した意匠公報掲載の意匠登録第1476784号「カメラ付き携帯電話機」の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
本願意匠は,「電子計算機」で,引用意匠は,「カメラ付き携帯電話機」であるが,いずれも,携帯して用いられる,小型の情報端末機器であるから,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
(1)共通点
(A)全体を,正面視の縦横比を約2:1とした正面視隅丸長方形状の薄い略板状の縦長直方体としたもので,正面視した上下に余地部を設けて左右幅一杯に縦長長方形の液晶表示部を設け,正面視した外周に枠状の縁状部(以下,「縁状部」という。)を設け,縁状部の内側に透明板を配し,正面視した右下に円形部を設けた点,
(B)側面視した周側面の上下端面及び平底面視した周側面の左右端面を略凸円弧状とし,背面を緩やかに膨出して形成している点,
(C)背面の上方寄りの左右中央に円形状のカメラを配した点,
において主に共通する。
(2)差異点
(ア)周側面の前後方向の厚みについて,本願意匠は,厚みが薄いのに対して,引用意匠は,本願意匠の約1.5倍程度の厚みがある点,
(イ)周側面の側面視した上下端面及び平底面視した左右端面の形状について,本願意匠は,端部が凸円弧状であるのに対して,引用意匠は,中央部分が膨出した略「く」の字状である点,
(ウ)周側面の操作部の態様について,本願意匠は,右側面上方寄りに短い縦長長円形状の操作ボタンと長い縦長長円形状の操作ボタンを配しているのに対して,引用意匠は,上面中央に横長長円形状の操作ボタンを配している点,
(エ)背面の膨出の態様について,本願意匠は,周側面から滑らかに曲線状に立ち上がり,背面中央部付近に平坦面を設けているのに対して,引用意匠は,周側面とは別のごく緩やかな曲線状で全体が緩やかな凸曲面を形成している点,
(オ)カメラ及びその周囲の態様について,本願意匠は三重円からなる大きめのカメラとその下方に横長長円形状部分が設けられているのに対して,引用意匠は,四重円からなる小さめのカメラとその下方に小円形状のモバイルライトを設け,カメラの左側に横長長円形状の赤外線通信部,カメラの右側に細い横長長円形状のスピーカーが設けられている点,
(カ)正面視した上下の余地部について,本願意匠は,上下の余地部の縦幅の比が約1:1で上下がほぼ等しく,液晶表示部が中央寄りに配されているのに対して,引用意匠は,約1:2で上側の余地部の縦幅が短く,下側の余地部の縦幅が長く,液晶表示部がやや上寄りに配されている点,
(キ)本願意匠は,底面左寄りにヘッドホンジャックがあるのに対して,引用意匠は,上面右寄りにある点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
(1)共通点
そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成ではあるが,全体を,正面視の縦横比を約2:1とした正面視隅丸長方形状の薄い略板状の縦長直方体としたもので,正面視した上下に余地部を設けて左右幅一杯に縦長長方形の液晶表示部を設け,正面視した外周に枠状の縁状部を設け,縁状部の内側に透明板を配し,正面視した右下に円形部を設けた態様は,全体の構成が共通するものではあるが,この種の物品分野においては,正面視した上下に余地部を設けて左右幅一杯に縦長長方形の液晶表示部を設け,正面視した外周に枠状の縁状部を設け,縁状部の内側に透明板を配し,正面視した右下に円形部を設けた態様は,両意匠以外にも既に見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,また,周側面や背面において両意匠の各部位には差異点が認められ,全体の基本構成が共通している点のみでは両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
次に,共通点(B)についても,側面視した周側面の上下端面及び平底面視した周側面の左右端面を略凸円弧状とし,背面を緩やかに膨出して形成した態様が共通しているが,いずれもこの種の機器の処理として普通に見られるありふれたものであり,細部に係る目立たない共通点といえるもので,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また,共通点(C)について,背面の上方寄りの左右中央に円形状のカメラを配した態様が共通しているが,この種のカメラを有し携帯して用いられる小型の情報端末機器においては,ありふれた態様といえるもので,目立つ共通点とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
(2)差異点
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,まず,差異点(ア)の厚みの差異については,この種の物品は,手にとって使用するものであるから,厚みの薄い本願意匠は,スマートな印象を与えるもので,厚みがある引用意匠は,どっしりとした印象を与えるもので,見た目の印象が明確に異なるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)の周側面の側面視した上下端面及び平底面視した左右端面の形状について,細部に係る部分的な差異ではあるが,端面が凸円弧状である本願意匠は,柔らかい印象を与えるもので,中央部分が膨出した略「く」の字状である引用意匠は,膨出した端面形状が硬い印象を与えるものといえ,本願意匠の態様とは,印象が明確に異なるものといえ,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
また,差異点(ウ)の周側面の操作部の態様について,部分的な特徴ではあるが,この種の小型の情報端末機器においては,操作部がどこに設けられているかについては,需要者の関心が特に高い部分に関する差異であるから,その差異を無視することができず,両意匠の使用時の印象が異なるもので,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
そして,差異点(エ)の背面の態様について,それ自体のみでは目立つ態様とはいえず,どちらもありふれた態様ではあるが,本願意匠は,背面に平坦面を有することから,厚みが薄い,軽い印象を与えるものといえ,全体が緩やかな凸曲面である引用意匠は,厚みのある,やや重い印象を与えるものといえ,両意匠は,その印象が異なるものといえるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。
また,差異点(オ)のカメラ及びその周囲の態様について,三重円からなる大きめのカメラとその下方に横長長円形状部分が設けられている本願意匠は,カメラが目立ち,シンプルな印象を与えるものといえ,四重円からなる小さめのカメラとその下方に小円形状のモバイルライトを設け,カメラの左側に横長長円形状の赤外線通信部,カメラの右側に細い横長長円形状のスピーカーが設けられている引用意匠は,周囲に様々な機能を連想させ,複雑な印象を与えるものといえるから,両意匠は,その印象が異なるものであって,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
そして,差異点(カ)の正面視した上下の余地部と液晶表示部について,細部に係る差異ではあるが,余地部の縦幅によって,引用意匠は,均等な余地部の高さで中央寄りに液晶表示部がある本願意匠より,液晶表示部がやや上寄りに配されていることとなるから,全体の印象に与える影響を無視することができず,その差異は,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。
さらに,差異点(キ)のヘッドホンジャックの位置について,細部に係る部分的な差異ではあるが,使用時にその位置については,需要者が関心を持つ部位であることから,その差異は,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。
(3)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-10-18 
出願番号 意願2016-17533(D2016-17533) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 智加 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 斉藤 孝恵
正田 毅
登録日 2017-12-01 
登録番号 意匠登録第1593802号(D1593802) 
代理人 田▲崎▼ 聡 
代理人 久我 貴洋 

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