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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L6
管理番号 1334436 
審判番号 不服2017-8888
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-19 
確定日 2017-11-02 
意匠に係る物品 壁板材 
事件の表示 意願2016-4649「壁板材」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,平成28年(2016年)3月2日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「壁板材」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「この意匠は,正面に表れる上下方向幅において,420ミリメートル程度である。この意匠は,正面図において左右に連続する。」というものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1184764号(意匠に係る物品,壁用化粧材)の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)であり,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものであって,「この意匠は正面図において左右にのみ連続するものである。」というものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.両意匠の対比
(1)両意匠に係る物品
本願意匠に係る物品は「壁板材」であり,引用意匠に係る物品は「壁用化粧材」であって,表記は異なるが,いずれも壁に用いる板材であるから,両意匠に係る物品は一致する。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
<共通点>
(A)全体は,上下端に接続部を有する横長長方形板状の正面に,横筋状の凸模様を上下略等間隔に多数設けている点。
(B)接続部を除く背面は平坦である点。
(C)凸模様の表面が粗く形成されている点。

<相違点>
(ア)引用意匠は,上下に隣接する凸模様を押し潰したような縦筋模様が,上下及び左右に間隔を空けて,複数設けられているのに対して,本願意匠は,そのような縦筋模様が設けられていない点。
(イ)本願意匠は,上下に隣接する2本の凸模様が1本に合一し,その後,再び2本に分岐する,合一部及び分岐部が含まれているのに対して,引用意匠は,そのような合一部及び分岐部が含まれていない点。
(ウ)凸模様が,本願意匠は略直線状であるのに対して,引用意匠は僅かに波状である点。
(エ)板材が,本願意匠は表面材,芯材及び裏面材で構成され,中実であるのに対して,引用意匠は一部材で構成され,横に延びる中空部が上下に多数設けられている点。
(オ)上端の接続部が,本願意匠は,裏面材が上に長く延び,芯材略中央が上に突出して,側面視略倒「て」字状であるのに対して,引用意匠は,背面側が上に突出して,側面視略「L」字状である点。
(カ)下端の接続部が,本願意匠は,裏面材が上に長く欠け,芯材略中央が上に凹んでいるのに対して,引用意匠は,表面側が下方に延び,中央部が上に凹んで,側面視略倒「つ」字状である点。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,形態については,以下のとおりである。
(1)両意匠の形態についての共通点の評価
共通点(A)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるし,壁板材の物品(以下「この種物品」という。)の分野において,横筋状の凸模様を上下略等間隔に多数設けた形態は,両意匠のほかにも見られるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。また,共通点(B)及び共通点(C)はこの種物品分野においてありふれた形態であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であり,共通点全体としても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(2)両意匠の形態についての相違点の評価
これに対して,相違点(ア)は,引用意匠は,上下に隣接する凸模様を押し潰したような縦筋模様が,上下及び左右に間隔を空けて,複数設けられているのに対して,本願意匠は,そのような縦筋模様が設けられていないというものであるところ,壁板材は,建築物の壁面を装飾する部材であって,正面の態様は非常に目に付きやすく,需要者が最も関心をもって観察するから,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きいというべきである。
また,相違点(イ)は,本願意匠は,上下に隣接する2本の凸模様が1本に合一し,その後,再び2本に分岐する,合一部及び分岐部が含まれているのに対して,引用意匠は,そのような合一部及び分岐部が含まれていないというものであり,合一部及び分岐部は,この種物品の先行意匠に照らして,本願のみの特徴であるから,この相違点も両意匠の類否判断に及ぼす影響が非常に大きいといわざるを得ない。
他方,相違点(ウ)は,凸模様が本願意匠は略直線状であるのに対して,引用意匠は僅かに波状であるというものであるが,波の程度も僅かであるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまるものである。
また,相違点(エ)ないし(カ)は,いずれも側面視で観察して気付くものであり,この種物品の施工後には見ることができない上に,本願意匠のような形態の上端及び下端接続部は,他にも見られることから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点(ア)及び(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,いずれも非常に大きいことから,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響が一定程度にとどまり,相違点(エ)ないし(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響が,いずれも小さいものであるとしても,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-09-26 
出願番号 意願2016-4649(D2016-4649) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富永 亘 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2017-11-24 
登録番号 意匠登録第1593175号(D1593175) 

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