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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C4
管理番号 1335192 
審判番号 不服2017-8073
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-06 
確定日 2017-11-06 
意匠に係る物品 マスク 
事件の表示 意願2016- 6635「マスク」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,平成28年(2016年)3月28日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「マスク」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面代用写真に現されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が平成19年(2007年)1月26日に受け入れた株式会社ガードナー発行の内国カタログ「ADCLEAN アドクリーン AE CATALOG クリーンルーム用 消耗品&什器カタログ VOL.3」第12頁所載の「衛生マスク」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC18061113号)(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同頁に掲載された写真に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「マスク」であり,引用意匠は,「衛生マスク」であるが,いずれも人の耳にかけ,鼻から口を覆うためのマスクであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
(1)共通点
(A)全体を,薄い略横長長方形状のマスク本体部(以下,「本体部」という。)と,本体部の左右端部の上下端部寄りに,左右対称状に設けた略倒U字状の細い耳掛け紐(以下,「耳掛け紐」という。)とし,本体部の四辺に,細かい点状の四角形状が連続する溶着部を設けた点,
(B)本体部の周縁部に帯状の折り返し片(以下,「折り返し片」という。)を設け,水平方向に3本の車ひだを形成している点,
(C)本体部の背面側,耳掛け紐,折り返し片は白色とし,正面側の折り返し片の内側に本体部より一回り小さな横長長方形の着色部分(以下,「着色部分」という。)を形成している点,
(D)本体部の正面側の上辺の折り返し片において,溶着部が水平状に2段に設けられた枠内の左右中央寄りに,鼻に沿って曲げるための白色の細い帯状部材が設けられている点,
において主に共通する。
(2)差異点
(ア)本体部の左右辺の折り返し片の態様について,本願意匠は,上下端部が上下辺の折り返し片より上下にはみ出して突出し,本体部が略H字状であるのに対して,引用意匠は,上下端部が上下辺の折り返し片の端部と同じ位置までで,本体部が横長長方形である点,
(イ)着色部分の態様について,本願意匠は,紫色のまだら模様であるのに対して,引用意匠は,灰色がかった青色一色である点,
(ウ)背面側の溶着部の態様について,本願意匠は,上辺と下辺が小型横長長方形状の溶着部で,小型横長略長方形状の部位が略破線状に,上辺には二列,下辺には一列に表れ,上辺の二列の間に小型縦長長方形の溶着部を隔離して配し,下辺の左寄りに溶着部が途切れている部分があり,左右辺は小型正方形状の溶着部で,上下が密集していて中央寄りが疎らな一列であるのに対して,引用意匠は,全てが小型正方形状の溶着部で,左右辺が均等に密集した二列ずつで,下辺に途切れたところがない点,
(エ)正面側の車ひだの位置について,本願意匠は,3本の車ひだの下のラインが着色部の上下中央寄りであるのに対して,引用意匠は,下方寄りである点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
(1)共通点
そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成ではあるが,全体を,薄い略横長長方形状の本体部と,本体部の左右端部の上下端部寄りに,左右対称状に設けた略倒U字状の細い耳掛け紐とし,本体部の四辺に,細かい点状の四角形状が連続する溶着部を設けた態様は,全体の構成が共通するものではあるが,この種の物品分野においては,両意匠以外にも既に多数見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,また,本体部の具体的な態様において両意匠の各部位には差異点が認められ,全体の基本構成が共通している点のみでは両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
次に,共通点(B)についても,本体部の周縁部に帯状の折り返し片を設け,水平方向に3本の車ひだを形成した態様が共通しているが,この種の物品分野においては,両意匠以外にも既に多数見られる,ありふれた態様といえるものであるから,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また,共通点(C)についても,本体部の背面側,耳掛け紐,折り返し片は白色とし,正面側の折り返し片の内側に本体部より一回り小さな横長長方形の着色部分を形成した態様が共通しているが,この種の物品分野においては,着色部分を設けたものは,両意匠以外にも既に多数見られ,着色部分自体に特徴があるものとはいえず,また,本体部の背面側,耳掛け紐,折り返し片を白色とした点も,この種のマスクにおいては,普通に見られるありふれた態様といえるものであるから,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
さらに,共通点(D)についても,本体部の正面側の上辺の折り返し片において,溶着部が水平状に2段に設けられた枠内の左右中央寄りに,鼻に沿って曲げるための白色の細い帯状部材が設けられた態様が共通するとしても,細部に係る部分的な共通点といえるもので,目立つものとはいえず,この点によってのみでは,両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
(2)差異点
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,まず,差異点(ア)の本体部の左右辺の折り返し片の態様については,上下端部が上下辺の折り返し片より上下にはみ出して突出し,本体部が略H字状である本願意匠は,変化のある印象を与えるもので,上下端部が上下辺の折り返し片の端部と同じ位置までで,本体部が横長長方形である引用意匠とは,見た目の印象が明確に異なるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)の着色部分の態様について,紫色のまだら模様である本願意匠の態様は,まだら模様が特徴的なものといえ,灰色がかった青色一色である引用意匠の態様とは,視覚的な印象を異ならせるものであり,マスクの正面側の態様については,使用時に需要者の関心を惹く部分であるから,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
また,差異点(ウ)の背面側の溶着部の態様について,それぞれは細部に係る部分的な特徴ではあるが,左右辺の溶着部が一列で上下が密集していて中央寄りが疎らである本願意匠の態様は,他に見当たらず特徴的なものといえ,この種のマスクを使用する場合,どのように顔にフィットさせて使用するかについては,需要者の関心が高い部分に関する差異であるから,その差異を無視することができず,溶着部の疎密の具合により両意匠の使用時の印象が異なるもので,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
さらに,差異点(エ)の正面側の車ひだの位置について,細部に係る態様で,どちらもありふれた態様ではあるが,3本の車ひだの下のラインが着色部の上下中央寄りである本願意匠は,すっきりした軽い印象であるのに対して,ラインが着色部の下方寄りである引用意匠は,やや重い印象であるから,その差異は,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。
(3)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-10-19 
出願番号 意願2016-6635(D2016-6635) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 桐野 あい 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 斉藤 孝恵
宮田 莊平
登録日 2017-12-08 
登録番号 意匠登録第1594292号(D1594292) 
代理人 小谷 悦司 
代理人 上田 知恵 
代理人 小谷 昌崇 
代理人 並川 鉄也 
代理人 川瀬 幹夫 

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