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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 H2
管理番号 1335200 
審判番号 不服2017-10220
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-07 
確定日 2017-11-28 
意匠に係る物品 電線固定具用パッキン 
事件の表示 意願2016- 21893「電線固定具用パッキン」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2016年(平成28年)10月6日の意匠登録出願であって, その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「電線固定具用パッキン」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は意匠法第9条第1項に規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,2016年(平成28年)6月10日に出願され,その後,2017年(平成29年)2月24日に設定登録された,意願2016-12470号(意匠登録第1572512号)の意匠(以下,「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)であって,意匠に係る物品を「鳥害防止具用の電線保持スペーサー」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面の記載のとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠は,意匠に係る物品が「電線固定具用パッキン」であって,願書の意匠に係る物品の説明の記載によれば,「鳥の電線への飛来を防止するためにワイヤなどの索条を電線に沿って張架するための電線固定具に用いられる電線固定具用パッキンである」のに対し,引用意匠の意匠に係る物品は「鳥害防止具用の電線保持スペーサー」であって,願書の意匠に係る物品の説明の記載によれば,「電線の断面形状に関わらず電線を取り付けることのできる鳥害防止具用の電線保持スペーサー」であり,意匠に係る物品の表記は異なるが,いずれも,電線固定具に取り付けられ,電線の固定又は保持のために用いられる部品であるから,本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は,共通する。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)

ア.共通点
基本的構成態様として,
(ア)全体を,右側面視,略く字状に屈曲した扁平四角筒形状とし,正面部は,左右端部を残して筒方向に切り欠いたものとし,背面部は,上下端部中央をそれぞれ横長長方形状に切り欠いて背面視,略H字状としたものである点。

具体的な態様として,
(イ)正面部は,側面視,湾曲状とし,背面部は,側面視,鈍角状に角張っている点,

イ.相違点
具体的な態様として,
(A)本願意匠は,外側の面全体に横向き細幅の突条を上下に等間隔に多数形成しているのに対し,引用意匠は,全体が平坦面である点,
(B)正面部において,本願意匠は,左右端部の上端内側を直角に延出させて略矩形状の突起部を形成しているのに対し,引用意匠は,突起部を形成していない点,

2.類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,形態については,以下のとおりである。

(1)共通点の評価
当該物品が使用される電線固定具は,両意匠の願書に添付した図面(使用状態を示す参考図)に表されるとおり,その形態はほぼ共通したものであるところ,共通点(ア)の態様は,電線固定具の上側の固定部に密着して取り付けるため,縦,横,高さの寸法や屈曲角度は電線固定具の形状に依拠したものであり,また,切欠部の態様についても,本物品を上記固定部に装着し左右端部で挟みこんで保持するため,電線固定具の形状にあわせて切り欠いたものであって,これらは両意匠の物品特性から生じる形態がもたらす共通点に過ぎないものである。一方,背面部の,上下端部中央をそれぞれ横長長方形状に切り欠いて背面視,略H字状とした態様は,両意匠にのみに共通するものであるが,背面側に位置し,さほど目立つものではないことから,総合すると,共通点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。

次に,具体的な態様としてあげた共通点(イ)の態様についても,上記固定部の湾曲した態様にあわせて,隙間無く冠着するために湾曲状に折り曲げたものであるから,共通点(ア)と同様,電線固定具の形状に依拠したものであって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。

(2)相違点の評価
相違点(A)については,形態全体に関わるものであり,本願意匠の態様は,電線に接する面のみならず全体に突条を施したものであるから,需要者が使用する際,注目するものであり,全体が平坦面である引用意匠と比較すると,視覚的に大きく異なる印象を与えるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。

相違点(B)については,本願意匠は,正面部の左右端部の上端内側を直角に延出することで,左右端部が正面視,略逆L字状を成し,これによって切欠部上端の横幅の長さの比率は,下端の長さの比率の約3分の1と狭くなるものであって,左右端部が上下に均一幅である引用意匠と比較すると,この相違点は,視覚的に異なる印象を与えるから,両意匠の類否判断に影響を及ぼすものである。

以上のとおり,相違点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点(B)も両意匠の類否判断に影響を及ぼすものであるから,相違点全体が相まって両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第9条第1号に規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないものとはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-11-14 
出願番号 意願2016-21893(D2016-21893) 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (H2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山永 滋木村 智加石川 愛恵 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 江塚 尚弘
内藤 弘樹
登録日 2017-12-22 
登録番号 意匠登録第1595209号(D1595209) 
代理人 西教 圭一郎 

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