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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C5
管理番号 1336210 
審判番号 不服2017-11055
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-25 
確定日 2017-11-28 
意匠に係る物品 コーヒーメーカー 
事件の表示 意願2016- 10829「コーヒーメーカー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成28年(2016年)年5月20日(パリ条約による優先権主張2015年11月26日 世界知的所有権機関)の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「コーヒーメーカー」とし,その形態を願書及び願書に添付された写真に現されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。

この種コーヒーメーカーにおいて,全体が有底円筒形状を基調とした本体部とプレスシャフトにつながる円板状のつまみ部を有する蓋部とからなり,本体部は内容器部と外筒部とからなり,外筒部には,上下に縁部を残し,該縁部をつなぐ態様で柱部を形成して窓状開口部を形成すると共に,背面側に略コ字状の取っ手を形成し,正面側上端部に注ぎ口を形成したものが,本願意匠の出願前に公然知られている(意匠1)。
同様に,外筒部の窓状開口部を外周を二分する態様で大きく形成し,蓋部の背面側に矩形状の小突片を形成したものが,本願意匠の出願前に公然知られている(意匠2)。
本願意匠は,その出願前公然知られた意匠1の意匠に基づき,当業者にとってありふれた手法を用いて,意匠2の意匠の様に窓状開口部を大きく形成すると共に,蓋部に矩形状の突片を形成したまでのものにすぎないから,容易に意匠の創作をすることができたものと認められる。
なお,本願意匠が外筒部下端に鍔状の環状凸部を有していない点は,この種物品において普通に見受けられる(例えば,意匠登録第1541678号意匠参照)ものであるから,この点が本願意匠のみの特徴といえるものではなく,創作非容易性の判断に影響を及ぼすものとは認められない。

意匠1(別紙第2参照)
特許庁総合情報館が1997年 4月18日に受け入れた
アメリカ意匠公報:オフィシャルガゼット 1997年 1月 7日1号
第775頁所載
コーヒーポットの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH10034598号)

意匠2(別紙第3参照)
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2010年5月31日
受入日 特許庁意匠課受入2010年6月4日
掲載者 ボダムエージー
表題 BODUMR-make taste,not waste-CH
掲載ページのアドレス http://www.bodum.com/ch/de-ch/shop/detail/11134-01/
に掲載された「コーヒーポット」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ22013516号)

3.請求人の主張の要旨
本願意匠は各公知意匠を組み合わせて得られるものではなく,従って,当業者が容易に創作できたものではない。
拒絶査定では,取っ手の位置は同様のものが普通に知られているとされているが,意見書において述べているのは取っ手の位置ではなく,縁部の間をつなぐ柱部の位置である。
即ち,公知意匠2において,上下の縁部の間をつなぐ柱部は,注ぎ口の位置と,取っ手の位置に設けられており(右側面図においては左右),注ぎ口の位置と取っ手の位置との中間の位置に柱部が設けられた本願意匠(右側面図では手前と奥)とでは,柱部の位置が90度異なっている。
したがって,公知意匠1に対して,公知意匠2の様に窓状開口部を大きく形成しても,公知意匠2と本願意匠とでは柱部の位置が90度異なり,注ぎ口の位置と取っ手の位置に窓状開口部が設けられた本願意匠を得ることはできない。
意匠審査基準では,「第2部 意匠登録の要件 第3章 創作非容易性」において,「公然知られた意匠の特定の構成要素を当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠に置き換えて構成したにすぎない意匠」は当業者が容易に創作できるとされている。
その一方で,同審査基準において,同じ前提下でも創作性が肯定される事例が示されている。その事例では,スピーカーボックスの上に単純に箱状のスピーカーを加えたに過ぎない意匠であっても,箱状のスピーカーが公知でないことを理由に創作性が肯定されている。
本件においても,同様に,注ぎ口の位置と取っ手の位置に柱部が設けられた意匠は公知(公知意匠2)であっても,注ぎ口の位置と取っ手の位置との中間の位置に柱部が設けられた意匠は,公然知られた意匠ではなく,かかる意匠を公知意匠1に加えた本願意匠は,審査基準に照らしても,公知意匠から容易に創作できたものとは言えない。

4.当審の判断
本願意匠が,当業者であれば,容易にその意匠の創作をすることができたものか否かについて,以下検討する。
(1)本願意匠(別紙第1参照)
本願意匠は,意匠に係る物品を「コーヒーメーカー」としたもので,その形態は,蓋部を除いた縦の長さと直径の比を約2:1とする円筒状の胴部(以下「胴部」という。)と略円盤状の蓋部及び取っ手部から成り,内部中央に細い垂直の軸を配し,下方に押し下げ用の円盤状部を有しているものであり,蓋部の上面中央に細い軸の上に円盤状のボタンを側面視略T字状に設け,蓋部の正面側に略半円錐台形状の注ぎ口を設け,背面側に長方形状の板状の突片(以下「突片」という。)を設け,蓋部の左右の側面にくの字を並列した略矢羽根状の模様を配したもので,胴部の内側に円筒状の透明部を設け,その外側に開口部を有する枠部(以下「枠部」という。)を,蓋部の下方の細帯状の環状の上枠部(以下「上枠部」という。)と,底面側に全体の高さの約2/9の太帯状の環状の下枠部(以下「下枠部」という。),及び環状の上下枠部を繋ぐ側面視,胴部の幅の約1/3程度の縦長太帯状の柱状の縦枠部(以下「縦枠部」という。)によって形成し,平面視して縦枠部から角度が90度の位置の背面側に,上枠部から下枠部にかけて側面視隅丸コの字状の取っ手部を設けたもので,取っ手部は扁平な板状で縦枠部よりやや細い太幅としたものである。
(2)原査定の拒絶の理由の引用意匠
(ア)意匠1(別紙第2参照)
意匠1は,意匠に係る物品を「コーヒーポット」としたもので,その形態は,縦の長さと直径の比を約2:1とする円筒状の胴部と略円盤状の蓋部及び取っ手部から成り,内部中央に細い垂直の軸を配し,下方に押し下げ用の円盤状部を有しているものであり,蓋部の上面中央に細い軸の上に円盤状のボタンを側面視略T字状に設け,胴部の上端の正面側に平面視緩やかな半円弧状の注ぎ口を設けたもので,胴部の内側に円筒状の透明部を設け,その外側に開口部を有する枠部を,蓋部の下方に余地部を設けて配した細帯状の環状の上枠部と,底面側に全体の高さの約2/9で下端に鍔状の突出部を有する太帯状の環状の下枠部,及び環状の上下枠部を繋ぐ左右側面及び正背面に胴部の直径の約1/7程度の帯状の柱状の縦枠部によって形成し,背面側に上枠部から下枠部にかけて側面視隅丸コの字状の取っ手部を設けたもので,取っ手部は扁平な板状で縦枠部よりやや太幅としたものである。
(イ)意匠2(別紙第3参照)
意匠2は,意匠に係る物品を「コーヒーポット」とし,その形態は,縦の長さと直径の比を約2:1とする円筒状の胴部と略円盤状の蓋部及び取っ手部から成り,内部中央に細い垂直の軸を配し,下方に押し下げ用の円盤状部を有しているものであり,蓋部の上面中央に球状のボタンを設け,蓋部の正面側に略半円錐台形状の注ぎ口を設け,背面側に長方形状の板状の突片を設けたもので,胴部の内側に円筒状の透明部を設け,その外側に開口部を有する枠部を,蓋部の下方の細帯状の環状の上枠部と,底面側に全体の高さの約2/9で下端に鍔状の突出部を有する太帯状の環状の下枠部,及び環状の上下枠部を繋ぐ縦枠部を正背面に設け,縦枠部の上下が円弧状に繋がり,背面側の縦枠部の位置に上枠部から下枠部にかけて側面視隅丸コの字状の取っ手部を設けたもので,取っ手部は略扁平な板状としたものである。
(3)創作容易性の判断
まず,蓋部を除いた縦の長さと直径の比を約2:1とする円筒状の胴部と略円盤状の蓋部及び取っ手部から成り,内部中央に細い垂直の軸を配し,下方に押し下げ用の円盤状部を有し,胴部の内側に円筒状の透明部を設け,その外側に開口部を有する枠部を設けたコーヒーメーカーは,本願出願前よりこの種の物品分野において,既に見られるありふれた態様といえるものである。
また,底面側に全体の高さの約2/9の高さまでの太帯状の環状の下枠部を設け,上枠部から下枠部にかけて側面視隅丸コの字状の取っ手部を設けたものも,本願出願前よりこの種の物品分野において,既に見られる態様といえるものである。
そして,蓋部の上面中央に細い軸の上に円盤状のボタンを側面視略T字状に設け,取っ手部を扁平な板状とした態様も意匠1に見られるように,本願出願前より既に知られた態様といえるものである。
さらに,本願意匠が属するコーヒーメーカーの物品分野においては,蓋部の正面側に略半円錐台形状の注ぎ口を設け,背面側に長方形状の板状の突片を設けた態様は,意匠2に見られるように,本願出願前より既に公然と知られた態様といえるものである。
しかしながら,意匠1は,胴部の上端の正面側に平面視緩やかな半円弧状の注ぎ口を設けたもので,蓋部の下方に余地部を設けて細帯状の環状の上縁枠部を設けており,その態様は,本願意匠の蓋部の正面側に略半円錐台形状の注ぎ口を設け,蓋部の下方に環状の上枠部を設けた態様とは大きく異なるものである。
また,意匠2は,蓋部の正面側に略半円錐台形状の注ぎ口を設け,背面側に長方形状の板状の突片を設けたもので,蓋部の下方に細帯状の環状の上縁枠部を設けたものではあるが,蓋部の上面中央に球状のボタンを設けたもので,縦枠部の位置は正面側と背面側にあり,縦枠部の上下が円弧状に繋がり,その態様は,本願意匠の上面中央に細い軸の上に円盤状のボタンを側面視略T字状に設けた態様や,平面視して縦枠部から角度が90度の位置の背面側に取っ手部を設けた態様とは異なるものである。
蓋部を除いた縦の長さと直径の比を約2:1とする円筒状の胴部と略円盤状の蓋部及び取っ手部から成り,内部中央に細い垂直の軸を配し,下方に押し下げ用の円盤状部を有し,胴部の内側に円筒状の透明部を設け,その外側に開口部を有する枠部を有し,底面側に全体の高さの約2/9の高さまでの太帯状の環状の下枠部を設け,上枠部から下枠部にかけて側面視隅丸コの字状の取っ手部を設けた態様は,従来より公然知られた態様といえるものであり,蓋部の正面側に平面視略半円錐台形状の注ぎ口を設け,背面側に長方形状の板状の突片を設けたもので,蓋部の下方に細帯状の環状の上枠部を設けた態様は,意匠2に既に見られる態様であるが,仮に,意匠2の蓋部に意匠1のボタンを組合せ,下端に太帯状の環状の下枠部を設けたとしても,縦枠部と取っ手部の位置関係や縦枠部の太さが異なることから,意匠1や意匠2の胴部に上枠部と下枠部を設け,上枠部から下枠部にかけて側面視隅丸コの字状の取っ手部を設けた態様に,意匠2の蓋部を設け,意匠1のボタンを組み合わせて,下端に太帯状の環状の下枠部を設けたとしても,本願意匠の態様を導き出すことはできないものである。
本願意匠の態様は,平面視して柱部から角度が90度の位置の背面側に縦枠部よりやや細い太幅の取っ手部を設け,上枠部と下枠部の間の左右側面に側面視した胴部の幅の約1/3程度の太い縦枠部を設けた態様が特徴的で,さらに,蓋部の左右の側面にくの字を並列した略矢羽根状の模様を配したもので,他には同様の態様が見られないものであるから,意匠2の蓋部に意匠1のボタンを組合せ,下端に太帯状の環状の下枠部を設けたとしても本願意匠の態様が容易に創出し得るものであるということはできない。
よって,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,意匠1及び意匠2に見られる,日本国内において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠ということはできない。

5.むすび
したがって,本願意匠は,原査定の拒絶の理由によっては,意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-11-14 
出願番号 意願2016-10829(D2016-10829) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 油科 壮一 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 斉藤 孝恵
宮田 莊平
登録日 2018-01-05 
登録番号 意匠登録第1596040号(D1596040) 
代理人 大塚 雅晴 
代理人 山田 卓二 
代理人 田中 光雄 
代理人 中野 晴夫 

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