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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D7
管理番号 1336217 
審判番号 不服2017-10288
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-10 
確定日 2017-12-05 
意匠に係る物品 折り畳み椅子 
事件の表示 意願2015- 19967「折り畳み椅子」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成27年(2015年)9月8日の意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「折り畳み椅子」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書及び願書添付の図面に記載したとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて,両意匠という。)は,特許庁が平成26年4月28日に発行した意匠公報掲載の意匠登録第1495888号(意匠に係る物品「折り畳み椅子」)の意匠である。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「折り畳み椅子」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「折り畳み椅子」であって,共に,折りたたんで収納,運搬し,展開して椅子として使用するものであるから,一致する。
(2)形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
(2-1)共通点
基本的構成態様として,
(A)全体は,主に角柱状のパイプ材(以下,角柱状材という。)で構成された骨組みと,背もたれから座面まで一連の布状部材とから成る折り畳み椅子である点,
(B)展開状態において,後方上端から前方脚部の下端接地部に至る左右それぞれの角柱状材の中程に略水平方向の肘掛け材が,また中程よりやや下方に座面を支持する略水平方向の角柱状材が前方に向けて連結され,その連結部から後脚となる角柱状材(以下,後脚部という。)が斜状に後方に向けて連結され,肘掛け材の前方下面から前方脚部の下端接地部近傍までを略垂直方向の角柱状材で支持し,正面視の座面下方と背面視の背もたれ中程から下方には,角柱状材が略X字状に組み合わされている点,
具体的構成態様として,
(C)側面視において,背もたれと座面の長さ比率は約8:5であり,座面は前方に向けてやや上向きに傾斜し,背もたれは,垂直方向から立ち上がりで約35度後方(背方)に傾斜したものである点,
(D)背もたれから座面まで一連の布状部材について,共に暗調子であって,左右の角柱状材を袋状に覆って,背もたれ及び座面を形成し,各可動部(背もたれ部中程左右連結部,左右肘掛け部基部及び座面周辺左右連結部,座面前方略垂直方向の角柱状材左右連結部)周囲は切り欠き部とし,特に左右肘掛け部基部から背もたれと座面の連結部にかけては,正面視略楔状に大きく切り欠いている点,
(E)肘掛け部は,角柱状材からなり,先端が僅かに湾曲したものである点,
(F)肘掛け材を除く,各角柱状材端部は,暗調子部材が端部に嵌まっている点,
で共通している。
(2-2)相違点
具体的構成態様として,
(ア)本願意匠の背もたれ部及び座面部について,本願意匠は,背もたれの縦幅と横幅の長さの比率が約6:5で,座面の横幅と奥行きの長さの比率は約11:9であるのに対し,引用意匠は,背もたれ部は約6,5:7であって,座面部は約11:8である点,
(イ)後脚部の態様について,本願意匠が,後脚部の端部について,接地面直上からアール状に屈曲し,側面から見て,接地面近傍で連結された後方の略X字状部から後方に向けて水平状に延出して形成しているのに対し,引用意匠は,上端から下端まで直線状で後方の略X字状部に端部近傍で連結され,屈曲せず後方には延出していない点,
(ウ)前方及び後方の略X字状部のクロス部において,本願意匠が一材から成る直線状の角柱状材と中央部にクランク状部材を設けた段違いの角柱状材を中央で組み合わせて,クロス部を構成しているのに対し,引用意匠は,2本の一材から成る直線状の角柱状材を中央で重ねて留めつけて,クロス部を構成している点,
(エ)骨組みを形成する各角柱状材について,本願意匠は各周面がほぼ平滑なものであるのに対し,引用意匠の角柱状材は長手方向に複数本の縦筋が形成されている点,
で相違している。

2.両意匠の類否
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の意匠全体としての類否を検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,形態については,以下のとおりである。
(1)共通点の評価
基本的構成態様としてあげた共通点(A)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであって,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。次に,共通点(B)も,この種折り畳み椅子の物品分野においては,このような角柱状材からなる折り畳み可能な椅子とした態様は,よく見受けられることから,この点が,看者の注意を惹くものとはいえず,また,具体的構成態様としてあげた共通点(C)も具体的な背もたれ部と座面の比率及び傾斜角度に係るものであるが,この点が,折り畳み椅子の物品分野において,両意匠にのみに共通する特徴であるとはいえず,そして,共通点(D)の座面と背もたれの連続した布状部材が,暗調子であって,左右角柱状を袋状に覆って背もたれ部及び座面を形成し,各可動部の周囲は切り欠き部とし,特に左右肘掛け部基部から背もたれと座面の連結部にかけては,正面視略楔状の切り欠き部を形成している点も,共通点(E)の肘掛け部の先端が僅かに湾曲したものである点も,共通点(F)の肘掛け材を除く,各角柱状材端部は,暗調子部材が端部に嵌まっている点も,この種折り畳み椅子の物品分野においては,いずれもありふれた態様であって,これらの点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
よって,共通点(A)ないし(F)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は共に小さく,共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
(2)相違点の評価
これに対して,両意匠の具体的構成態様に係る各相違点は,相違点(ア)については,構成部品として最も大きな範囲を占める背もたれ及び座面についての具体的な形状の差異であるが,双方共に,この種折り畳み椅子の物品分野において,よく見られる構成比率であって,若干の構成比率の差異であるから,全体の印象を異にする差異とまではいえず,この点が類否判断に与える影響は小さい。
次に相違点(イ)については,後脚部の後端側の相違ではあるが,接地面直上からアール状に屈曲し,側面から見て,接地面近傍で連結された後方の略X字状部から後方に向けて水平状に延出している後脚部は本願意匠独自の態様であって,側面視においては,十分看取でき,接地状態における後脚の安定に関して,需要者は,特に注目することとなるので,両意匠の印象に深く関わるから,この相違点の類否判断に与える影響は大きい。
また,相違点(ウ)については,一見して看取できる略X字状部の構成に係る差異ではあるが,本願意匠のように一材から成る直線状の角柱状材と中央部にクランク状部材を設けた段違いの角柱状材を中央で組み合わせて,クロス部を構成しているものも,引用意匠のように2本の一材から成る直線状の角柱状材を中央で重ねて留めつけて,クロス部を構成しているものも双方共に折り畳み椅子の物品分野において,よく見られる態様であるから,この点が類否判断に与える影響は大きいとはいえない。
そして,相違点(エ)の骨組みを形成する各角柱状材について,本願意匠は各周面がほぼ平滑なものであるのに対し,引用意匠の角柱状材は長手方向に複数本の縦筋が形成されている点は,双方共によく見受けられる角柱状材の態様であって,類否判断に与える影響を一定程度に留まるものである。
そうすると,相違点(イ)は,需要者が特に注目する差異であるから,両意匠の類否判断に与える影響は大きく,その余の差異点が両意匠の類否判断に与える影響が大きくないとしても,相違点は,共通点を凌駕して,両意匠を別異のものと印象づけるものであるから本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。
(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠は,意匠全体として別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-11-22 
出願番号 意願2015-19967(D2015-19967) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北代 真一前畑 さおり 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
正田 毅
登録日 2018-01-12 
登録番号 意匠登録第1596566号(D1596566) 
代理人 片山 修平 

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