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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C1 |
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管理番号 | 1336221 |
審判番号 | 不服2017-5487 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-17 |
確定日 | 2018-01-16 |
意匠に係る物品 | 一組の自動車用フロアマットセット |
事件の表示 | 意願2016- 14626「一組の自動車用フロアマットセット」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし,意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠を秘密にすることを請求した,平成28年(2016年)7月8日付けの意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「一組の自動車用フロアマットセット」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は,以下のとおりのものである(別紙第2参照)。 表題 Honda Civic 2016 Custom Car Mat With Side Sewing + Heelpad | MyCarMat - Customized Car Mat: 掲載年月日 2016年 7月 6日 検索日 [2016年 8月 30日] 媒体のタイプ [online] 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス URL: http://www.mycarmat.com/index.php/2016/07/honda-civic-2016-custom-car-mat-with-side-sewing-heelpad/ に掲載された「一組の自動車用フロアマットセット」の意匠 第3 当審の判断 以下,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するか否かについて,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)を対比し,両意匠の共通点及び相違点の認定と評価を行うことにより,本願意匠が引用意匠に類似するか否かを検討し,判断する。 1.両意匠の共通点及び相違点 (1)共通点 意匠に係る物品については,両意匠ともに「一組の自動車用フロアマットセット」であるから,一致し,形態については,以下の(A)ないし(C3)の点が主に共通する。 (A)右に配した運転席用マットと左に配した助手席用マットからなる,一組のセットものであって,全体を平板なシート状部材としたものであり,平面視によると,運転席用マットは,略長方形の本体部と,本体部上方から延設した凸部からなるものであり,助手席用マットは,縦横比を約3対2とする縦長の略四角形状としたものであり,どちらのマットも外周を,細い一定幅で縁取ったものであって,運転席用マットの大きさと助手席用マットの大きさに,大きな差はないものである。 (B)運転席用マットの具体的な態様は,(B1)本体部については,(B1-1)右辺を,上側の輪郭を上方へ向けて僅かに左側に傾斜した斜線状(以下「右肩斜線部」という。)とし,(B1-2)左辺を,中央が僅かに窪む湾曲状とし,(B1-3)下辺を,左側2分の1弱を直線状に切り欠いて,中央やや左寄りの右下がりの短い傾斜部を介して略クランク状に屈曲させた形状としたものであり,(B2)凸部については,左辺を,上方へ向けて僅かに左側に傾斜した斜線状としたものである。 (C)助手席用マットの具体的な態様は,(C1)左側上部の輪郭形状を,上辺の左側約3分の1を斜め下方に向けて緩やかな弧状に切り欠くとともに,左辺の上側約2分の1を緩やかな弧状に切り欠いて,2段の連続する緩やかな湾曲状とし,(C2)右辺は,上端寄りを,略横倒「へ」の字形状の切り欠き部とし,下端寄りを,下方へ向けて僅かに外側へ拡がる傾斜部とし,(C3)下辺は,右側2分の1弱を直線状に切り欠いて,中央やや右寄りの左下がりの短い傾斜部を介して略クランク状に屈曲させた形状としたものである。 (2)相違点 形態について,以下の(ア)ないし(ツ)の点が主に相違する。 (2-1)運転席用マットの具体的な態様について (ア)本体部を基準とした凸部の大きさについては,凸部の突出長さにつき,本願意匠はやや短いのに対して,引用意匠はやや長く,凸部の横幅につき,本願意匠はやや狭いのに対して,引用意匠はやや広く,その結果,凸部の面積が,本願意匠はやや小さいものであるのに対して,引用意匠はやや大きいものである。 (イ)本体部の右辺における鉛直線部と右肩斜線部の比率を,本願意匠は,約2対1としたものであるのに対して,引用意匠は,約1対1としたものである。 (ウ)本体部の右肩斜線部を,本願意匠は,C取り(角面取り)としたものであるのに対して,引用意匠は,R取り(丸面取り)としたものである。 (エ)本体部の右側上辺を,本願意匠は,直線としたものであるのに対して,引用意匠は,左端に窪み部を設けた上で凸部右辺につなげたものである。 (オ)本体部の左辺を,本願意匠は,上側に僅かに鉛直線部を設け,その下側を「く」の字状に窪ませたものであるのに対して,引用意匠は,上側の鉛直部から緩やかな弧状としたものであり,その結果,本願意匠の左上角と左下角は,左右方向で同じ位置としたものであるのに対して,引用意匠は,左上角より左下角が僅かに左へ張り出し,裾広がり状としたものである。 (カ)本体部の下辺を,本願意匠は,直線部を水平としたものであるのに対して,引用意匠は,僅かに傾斜状としたものである。 (キ)凸部の右辺を,本願意匠は,下側約3分の2が僅かに左側に傾斜した斜線状としたものであるのに対して,引用意匠は,全体が僅かに右側に傾斜した斜線状としたものである。 (ク)凸部の右上角を,本願意匠は,直角としたものであるのに対して,引用意匠は,瘤状の膨らみを設けたものである。 (ケ)ヒールパッドについて,本願意匠はヒールパッドを設けていないのに対して,引用意匠は,横長長方形のヒールパッドを設けたものである。 (コ)取り付け金具について,本願意匠は,本体の下側に,左端と中央やや右寄りに取り付け金具を設けたものであるのに対して,引用意匠は,取り付け金具を設けていないものである。 (2-2)助手席用マットの具体的な態様について (サ)上辺を,本願意匠は,水平としているのに対して,引用意匠は,極僅かに倒立「へ」の字形状に屈曲したものである。 (シ)右辺における,上端寄りの略横倒「へ」の字形状の切り欠き部の具体的な形状を,本願意匠は,その長辺部を上端から下方に向けて僅かに内側へすぼまる傾斜部としたものであるのに対して,引用意匠はその長辺部を略垂直部(当該部分について,審判請求人は請求書において,外側へ拡がる傾斜部と認定しているが,むしろ内側へ極僅かにすぼまる傾斜部又は垂直部に見えるから,当合議体においては略垂直部と認定した。)としたものである。 (ス)右辺における,上端寄りの切り欠き部と下端寄りの傾斜部との間の中間付近を,本願意匠は,頂部に小さな窪みを有するなだらかな横倒山形の膨出部としたものであるのに対して,引用意匠は,下端寄りの傾斜部と同様に下方へ向かって僅かに外側へ拡がる直線(傾斜部)としたものである。(なお,本願意匠の右辺の中間付近の形状の認定にあたっては,上端寄りの切り欠き部の一部を構成する短く外側へ拡がる傾斜部分を含めて山形の膨出部と認定した。) (セ)左辺の下側約2分の1を,本願意匠は,垂直部としたものであるのに対して,引用意匠は,僅かに外側へ拡がる傾斜部としたものである。 (ソ)下辺の切り欠き部の深さを,本願意匠に対して引用意匠は相対的に深くしたものである。 (タ)全体的に角部の丸みを,本願意匠に対して引用意匠は相対的に大きくしたものである。 (2-3)運転席用マットと助手席用マットを並べた状態の態様について (チ)運転席用マットの本体部左辺の下から約5分の4部分と助手席用マットの右辺の下から約3分の2部分について,本願意匠は,2つの山括弧(「〈」と「〉」)を略左右対称形に対向させた態様として表れているものであるのに対して,引用意匠は,そのような対称形として表れていないものである。 (ツ)運転席用マットの本体部下辺と助手席用マットの下辺とが,本願意匠は,切り欠き部の深さや長さがほぼ同一の左右対称形として表れているものであるのに対して,引用意匠は,切り欠き部の深さが異なり,対称形として表れていないものである。 2.共通点及び相違点の評価 以下,形態について,その共通点及び相違点の評価を行う。 (1)共通点について 共通点(A)は,全体を極めて大まかに捉えたものであって,この物品分野において従来から極普通に見られるものであるから,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。 共通点(B)ないし(B2)は,運転席用マットの具体的な態様に係るものであるが,いずれもこの物品分野において両意匠のみに見られる特徴といえるものではなく,構成要素の1つである運転席用マットの形態として需要者に一定の共通感を起こさせるに止まるものであるから,共通点(B)ないし(B2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きいとはいえない。 共通点(C)ないし(C3)は,助手席用マットの具体的な態様に係るものであるが,共通点(C1)の,左側上部の輪郭形状を,上辺の左側約3分の1を斜め下方に向けて緩やかな弧状に切り欠くとともに,左辺の上側約2分の1を緩やかな弧状に切り欠いて,2段の連続する緩やかな湾曲状とした形状は,特徴的であり,共通点(C2)及び(C3),そして共通点(A)と相まって,構成要素の1つである助手席用マットの形態として需要者に強い共通感を起こさせるものである。そうすると,共通点(C)ないし(C3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きいといえる。 (2)相違点について 相違点(ア)ないし(コ)は,運転席用マットの具体的な態様の相違であるが,相違点(ア)及び(キ)に共通点(B2)を合わせることによって,本願意匠の凸部は,左に傾いたやや小さい平行四辺形であるのに対し,引用意匠の凸部は,やや大きい倒立台形であり,また,本願意匠は,本体部の左辺における「く」の字状の窪みの上半分部分,凸部の左辺,凸部の右辺における斜線状部及び右肩斜線部における長い方の斜線によって,本体部の半分より上側が凸部を含めて,全体に左に傾いているように見えるのに対して,引用意匠は,そのように見えず,この本体部の半分より上側に異なる印象を与えるのであり,更に,相違点(イ)及び(カ)とともにその余の相違点も加わり,構成要素の1つである運転席用マットの形態として需要者に別異の印象を起こさせるものである。そうすると,相違点(ア)ないし(コ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きいといえる。 相違点(サ)ないし(タ)は,助手席用マットの相違であるが,相違点(サ)は,上辺を水平としたか,それとも倒立「ヘ」の字形状としたかの相違であるが,引用意匠の傾斜部の角度が極僅かなものであって,特に目立つものではなく,相違点(シ)は,右辺の上端寄りの形状の相違であるが,本願意匠の傾斜部の角度が僅かなものであり,引用意匠もどちらかといえば,前述したとおり,本願意匠と同様に内側へすぼまる傾斜部又は垂直部に見えるものであるから,この相違は目立つものではなく,相違点(ス)は,右辺の中間付近の形状の相違であるが,本願意匠の膨出部の膨らみが大きいものではなく,全体観察においては部分的であり,相違点(セ)は,左辺の下側約2分の1を垂直部としたか,それとも傾斜部としたかの相違であるが,引用意匠の傾斜部の角度が僅かなものであって,目立つものではなく,相違点(ソ)は,下辺の切り欠き部の深さの相違であるが,僅かな相違であって,共通点(C3)に内包するものであり,相違点(タ)は,角部における丸みの大小の相違であるが,細部に係る僅かな相違にすぎず,いずれの相違も軽微な相違といえるものであって,構成要素の1つである助手席用マットの形態として需要者に別異の印象を起こさせるものではない。そうすると,相違点(サ)ないし(タ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きいとはいえない。 相違点(チ)及び(ツ)は,運転席用マットと助手席用マットを並べた状態における相違であるが,本願意匠の態様は,運転席用マットと助手席用マットとの間に,まとまりのある印象を需要者に与えるものであり,特に相違点(チ)は,両意匠について別異の印象を起こさせるものであるから,相違点(チ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きいといえるものであり,相違点(ツ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度認められるものである。 (3)小括 以上を踏まえると,助手席用マットについては,共通点が相違点を凌駕するものの,運転席用マットについては,相違点が共通点を凌駕するものであり,全体に係る共通点(A)の評価は小さく,運転席用マットと助手席用マットを並べた状態の態様における相違については,相違点(チ)の評価は大きく,相違点(ツ)の評価は一定程度認められ,両意匠に別異の印象を起こさせるから,組物の意匠全体としてみれば,相違点が共通点を凌駕するものといえる。 3.類否判断 上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品は一致するものの,両意匠に係る形態の相違点が相まって生じる視覚的効果は,両意匠の共通点のそれを凌駕するものであって,需要者に異なる美感を起こさせるものである。 したがって,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと認められる。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-12-28 |
出願番号 | 意願2016-14626(D2016-14626) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 竹下 寛、長谷川 翔平 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2018-01-26 |
登録番号 | 意匠登録第1597925号(D1597925) |
代理人 | 牛木 護 |