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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C4 |
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管理番号 | 1337110 |
審判番号 | 不服2017-10898 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-07-21 |
確定日 | 2018-01-04 |
意匠に係る物品 | 歯間清掃具 |
事件の表示 | 意願2016- 443「歯間清掃具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)1月12日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,「歯間清掃具」であり,本願意匠の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「赤色で着色された部分以外の部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。)。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,その具体的理由及び引用した意匠は,下記のとおりである。 「本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と、引用意匠のそれに相当する部分とは、略U字状杆の両端部間に、複数の糸(フロス)を笹の葉状に掛け渡した態様が共通しており、両部分は類似するものと認められます。 〈引例の意匠〉 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2009年 2月 3日に受け入れた Dent.Family ライオン 歯科用品カタログ 2009 第19頁所載 歯間清掃具(一番上に表された青緑色の歯間清掃具)の本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に対応する部分の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HC20027872号) 」 (別紙第2参照)(以下,上記の歯間清掃具の意匠を「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」といい,引用意匠のうち,本願意匠部分に相当する部分を「引用意匠部分」という。) 第3 本願意匠と引用意匠の対比 1.意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は,共に「歯間清掃具」であって,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。 2.用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願意匠部分は,略Fの字状の「歯間清掃具」の先端部で上下に対向する保持杆の間に掛け渡された歯間清掃用糸状部分,すなわちフロス部分であって,保持杆の間に掛け渡され,口腔内で歯間に差し入れて清掃に用いることができる程度の大きさのものであって,引用意匠部分も略Y字状の「歯間清掃具」先端部で左右に対向する保持杆の間に掛け渡された歯間清掃用糸状部分,すなわちフロス部分であって,保持杆の間に掛け渡され,口腔内で歯間に差し入れて清掃に用いることができる程度の大きさのものであって,物品全体の態様が異なっているとしても,意匠登録を受けようとする部分においては,いわゆる,歯間清掃具の先端の対向する保持杆の間の同程度の大きさのフロス部分として対比できる部分であって共通するところ,当該部分が歯と歯の間の清掃を行う用途及び機能を有することは明らかである。したがって,本願意匠部分と引用意匠部分(以下,「両意匠部分」という。)の物品全体の中での用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。 3.形態 両意匠部分の形態を対比すると,主として,以下の共通点と相違点が認められる。 (ア)共通点 (A)フロス部は,複数の糸から成り,対向する保持杆のそれぞれ一点にまとめて端部を留めつけられ,緩みをもって掛け渡されている点。 (イ)相違点 (a)本願意匠部分のフロス部は,4本の同形同大の糸が保持された端部から中央に向かって4本の糸同士の間隔が次第に広がっていき,中央付近でほぼ最大に大きくなっているのに対し,引用意匠部分のフロス部は保持されている複数本の糸が緩みをもって撓み,中央がやや膨らんでおり,糸同士の間隔は,その程度も含めて不明である点。 (b)本願意匠部分のフロス糸は細い糸状で,引用意匠部分のフロス糸は極めて細い繊維状のものと推認される点 第4 本願意匠と引用意匠の類否 以上の「意匠に係る物品」,「用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲」及び「形態の共通点と相違点」が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し, 総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 1.意匠に係る物品の評価 上記,第3の1.のとおり,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。 同様の意匠に係る物品(本願意匠においては「歯間清掃具」)であるものは,多数見受けられ,意匠に係る物品が一致することにより,両意匠の類否判断に与える影響は,小さいものである。 2.用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲の評価 上記,第3の2.のとおり,両意匠部分は,物品全体の中での用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。 「歯間清掃具」の物品分野において,両意匠部分と同様の,歯間清掃具の歯間清掃用糸状(フロス)部分として対比可能な,用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲を有する意匠は,本願出願前にごく普通に見受けられるので,両意匠の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲の共通点が,類否判断に与える影響は,小さい。 3.両意匠部分の形態の評価 (1)両意匠部分の形態の共通点の評価 共通点(A)については,確かに,両意匠部分のフロス部は,複数の糸から成り,対向する保持杆のそれぞれ一点にまとめて端部を留めつけられ,緩みをもって掛け渡されている点は,両意匠部分の共通する特徴であるが,歯間清掃具のフロス部において,緩みをもって糸が掛け渡されている物は本願出願前に他にも見受けられ(例えば,特開2013-244117の図1及び図2に示された歯間清掃具の意匠),複数の糸で構成されているものも見受けられる(例えば,特開2000-197647の図1に示された歯間清掃具の意匠)から,この共通点が類否判断に与える影響は一定程度にとどまる。 よって,共通点(A)の類否判断に与える影響は一定程度にとどまるものであって,両意匠部分の共通点は,この点のみを持って両意匠部分が類似するとまでいうことはできず,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (2)両意匠部分の形態の相違点の評価 これに対して,相違点(a)は,フロス部の具体的態様についての相違点であるが,本願意匠部分のフロス部は4本の糸が緩みをもって保持されている態様であって,その保持された端部から中央に向かって互いの間隔が次第に広がり,中央付近でほぼ最大に間隔が大きくなっている態様が観察できるのに対し,引用意匠部分のフロス部は保持されている複数本の糸が緩みをもって撓み,中央がやや膨らんだものとして観察できるものの,糸同士の互いの間隔については明瞭でなく,中央付近で互いの間隔がほぼ最大に大きくなっているとまではいえないものであるところ,フロス部の態様は,歯間で使用される歯間清掃具の機能に関わり,目につく箇所であるから,需要者の注目するところであり,一見して看取できる上に,視覚的に異なる印象を与えるものであるから,この相違点が類否判断に与える影響は極めて大きい。 相違点(b)は,糸部自体の具体的態様についての相違であって,フロス部の糸部の太さについて,本願意匠部分のフロス部は細い糸状で,引用意匠部分のフロス部は極めて細い繊維状のものと推認される点は,需要者に異なる視覚的印象を与えることから,相違点(b)が類否判断に与える影響は大きい。 (3)両意匠部分の形態の総合評価 そうすると,共通点(A)の両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し,相違点(a)及び相違点(b)が類否判断に与える影響は,相違点(a)は極めて大きく,相違点(b)は大きく,それら相違点(a)及び(b)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると,相違点は,共通点を凌駕して,両意匠部分を別異のものと印象付けるものである。 4.小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通するが,これらの共通点が類否判断に与える影響は小さく,形態においては,共通点が未だ両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠部分を,全体として別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-12-18 |
出願番号 | 意願2016-443(D2016-443) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 桐野 あい、伊藤 宏幸 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
正田 毅 渡邉 久美 |
登録日 | 2018-02-09 |
登録番号 | 意匠登録第1599014号(D1599014) |
代理人 | 青木 博通 |
代理人 | 片山 礼介 |
代理人 | 中田 和博 |
代理人 | 柳生 征男 |