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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1337113 
審判番号 不服2017-13007
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-04 
確定日 2018-01-09 
意匠に係る物品 包装用容器のスリーブ型紙 
事件の表示 意願2016- 24071「包装用容器のスリーブ型紙」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成28年(2016年)11月4日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用容器のスリーブ型紙」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであり,本願意匠が類似するとして原審が拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の公開特許公報(公報発行日:平成17年(2005年7月14日)に記載された,特開2005-186948の【図1】によって表されたカップ容器の外装紙カバーの意匠であり,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比・評価
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は,「包装用容器のスリーブ型紙」であり,当該物品分野における一般的な理解に基づけば,その用途及び機能は,包装用容器を手に持った際に,容器内部の飲食物等の熱が手に伝わりにくくすることを目的として,容器とに隙間を設ける等の処置を行い,容器側面の外側に装着することにより,容器に断熱効果を持たせるためのものと認められる。
一方,引用意匠に係る物品は,その発明の名称のとおり,「カップ容器の外装紙カバー」と認められ,上記公開特許公報の記載に基づけば,その用途及び機能は,飲食物を収納するカップ容器の展示販売効果などを補うことを目的として,表面に美麗な印刷を施し,容器側面の外側に装着することにより,美麗な印刷が難しいカップ容器に装飾効果を持たせるためのものと認められる。
したがって,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,使用時に装着する対象物が一致するものの,その主たる用途及び機能には共通性がない。

(2)形態の対比
両意匠の形態を対比すると,次の共通点及び相違点があるといえる。
ア 形態の共通点
(共通点1)両意匠は,いずれも全体形状が正面視を略扇台形とする平らなシート状である点で共通する。
(共通点2)両意匠は,正面視下方の片側角部に切り欠き部を有する点で共通する。
イ 形態の相違点
(相違点1)本願意匠は,切り欠き部が左下隅に形成されているのに対し,引用意匠は,切り欠き部が右下隅に形成されている点で相違する。
(相違点2)本願意匠は,切り欠き部が縦横比を約1:1.4とする略長方形状であるのに対し,引用意匠は,切り欠き部が縦横比を約1:1.7とする,上辺を傾斜させた略直角台形状である点で相違する。
(相違点3)本願意匠は,扇台形の中心角が約40度であるのに対し,引用意匠は,扇台形の中心角が約43度である点で相違する。
(相違点4)本願意匠は,切り欠き部右辺の延長上に小さな切り込みが入れられているのに対して,引用意匠は,切り込みがない点で相違する。
(相違点5)本願意匠は,各角部がアール状に形成されているのに対し,引用意匠は,角部がアール状に形成されていない点で相違する。
(相違点6)引用意匠は,扇台形の左右両側辺の内側に,両側辺と略平行直線状に,重ねて貼着する部分を示す破線が施されているのに対し,本願意匠は,破線が施されていない点で相違する。

(3)形態の共通点及び相違点の評価
上記の共通点及び相違点における形態が,注意を引きやすい形態か否かを評価する。
ア 形態の共通点の評価
共通点1は,全体形状の共通点であるが,全体形状を正面視略扇台形の平らなシート状とすることは,包装用容器のスリーブ型紙及びカップ容器の外装紙カバーの分野において,本願出願前からごく普通に見られるありふれた態様であるから,その形態が需要者の注意をひく程度は小さい。
共通点2は,切り欠き部を有することについての共通点であるが,下方の片側角部に切り欠き部を形成することは,包装用容器のスリーブ型紙及びカップ容器の外装紙カバーの分野において,本願出願前からごく普通に見られるありふれた態様であるから,その形態が需要者の注意をひく程度は小さい。
イ 形態の相違点の評価
相違点1は,切り欠き部の左右配置についての相違点であるが,全体形状が正面視左右対称形であることを考慮すれば,別異の美感を起こさせるほどとはいえない。
相違点2は,切り欠き部の具体的形状についての相違点であるが,包装用容器のスリーブ型紙及びカップ容器の外装紙カバーの分野において,本願出願前から,切り欠き部は様々な形状のものが見られるから,需要者は切り欠き部が具体的にどのような形状であるかに注目し,本願意匠の切り欠き部が,直角で二辺の長さにさほど差がない印象であるのに対し,引用意匠の切り欠き部は,鈍角で二辺の長さの差が大きい印象であり,両者は別異の美感を起こさせるものといえる。
相違点3は,扇台形の中心角の角度の相違点であるが,角度を測定して初めて気づく程度の相違であり,意匠全体の美感に与える影響は小さい。
相違点4は,切り欠き部上部の切り込みの有無についての相違点であるが,意匠全体としては細部に係る相違であるものの,包装用容器のスリーブ型紙の分野においては,本願出願前に切り込みを形成したものが見られないことから,需要者の注意をひき,切り込みがあるものとないものとして,明確に視覚的印象を異にしている。
相違点5は,角部の形状についての相違点であるが,角部をアール状に形成したものと形成しないもののいずれもが,包装用容器のスリーブ型紙及びカップ容器の外装紙カバーの分野において,本願出願前からごく普通に見られるありふれた態様であるから,その形態が需要者の注意をひく程度は小さい。
相違点6は,破線の有無についての相違点であるが,包装用容器のスリーブ型紙及びカップ容器の外装紙カバーの分野において,重ねて貼着する部分を示す破線を施したものが,引用意匠以外にも,本願出願前からごく普通に見られることから,さほど需要者の注意をひくものとはいえない。

2.両意匠の類否判断
上記のとおり,まず,意匠に係る物品について,使用時に装着する対象物については一致するものの,その主たる用途及び機能には共通性がないことから,両意匠の意匠に係る物品は類似しない。
次に,形態について,共通点1及び共通点2は,併せて意匠全体の骨格を構成するものではあっても,いずれもありふれた態様に係る共通点であり,需要者の注意をひく程度は小さいことから,共通点を総合しても,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいとはいえないのに対し,相違点2及び相違点4が,特徴的な形態として需要者の注意をひくものであることに加え,本願意匠において,相違点4の切り込みと,相違点5のアール状の角部の一部は,相違点2の切り欠き部とともに一体的に形成されているものであり,これらの形態を併せて観察し,引用意匠と比較してみると,本願意匠は,頂部が丸く,傾斜及び大きさが同じ程度の二つの下向き山型凸部が,切り込みがあることにより,前後に重なり合うかのようにして連なっているとの印象を受けるのに対し,引用意匠は,頂部が尖った,傾斜及び大きさが大きく異なる二つの下向き山型凸部が,単に横並びになっているとの印象を受けるものであり,この相違点2,相違点4及び相違点5が相まって表出する別異の印象は,印象の弱い部分的な相違にとどまらず,意匠全体の美感に大きな影響を及ぼすものといえるから,相違点を総合すると,両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいといえる。
したがって,両意匠は類似しないものである。

第4 むすび

以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-12-20 
出願番号 意願2016-24071(D2016-24071) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山永 滋石川 愛恵 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 竹下 寛
江塚 尚弘
登録日 2018-02-02 
登録番号 意匠登録第1598369号(D1598369) 
代理人 七條 耕司 
代理人 七條 耕司 

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