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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L4 |
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管理番号 | 1337115 |
審判番号 | 不服2017-14922 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-10-05 |
確定日 | 2018-01-12 |
意匠に係る物品 | 建物用扉 |
事件の表示 | 意願2016- 18121「建物用扉」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成28年(2016年)8月25日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「建物用扉」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであり,本願意匠が類似するとして原審が拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成24年(2012年)12月17日)に記載された,意匠登録第1457796号(意匠に係る物品,建物用扉)の意匠(以下「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,ともに建物の開口部に取り付けられる建物用扉であるから一致するものである。 (2)形態 両意匠の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び差異点が認められる。 まず,共通点として, (A)全体は,一枚の扉の左右端部に設けられた縦長長方形板状の枠体(以下「縦框」という。)の対向する内側側面部中央部分に,垂直なスリット状の切り欠き部を1条形成し,その左右切り欠き部に縦長長方形板状の透光性を有する素材からなる薄い板体(以下「透光板体部」という。)を嵌め込んだものとし,その透光板体部の正背両面に細長長方形状の薄い板体(以下「縦格子」という。)を略等間隔に複数本配設した構成からなるものであって, (B)透光板体部の上下端部には,左右の縦框を連結するための部材(以下,「連結部材」という。)が設けられ,扉全体として上下対称の形態である点, (C)縦框は,透光板体部側の側面角部にC面取りを施し,扉外側の側面角部には面取りを施さず直角に形成している点, が認められる。 他方,差異点として, (ア)連結部材の態様について,本願意匠は,左右縦框上面部及び底面部の透光板体部側端部中央部分に,直線の先端部が円形状となる形態の浅い切り欠き部を形成し,その左右切り欠き部に円板状金具を両端部に設けた細径ワイヤーを螺着して,透光板体部を固定しているのに対して,引用意匠は,左右縦框上面部及び底面部の透光板体部側端部中央部分に,略横U字状の浅い切り欠き部を形成し,その左右切り欠き部に2つの円孔を両端部に並設した断面視横コの字状の連結部材(以下「コの字状連結部材」という。)を取り付けて,このコの字状連結部材部材のコの字部分に透光板体部を嵌め込んで固定している点, (イ)縦格子の態様について,本願意匠は,角部が全て直角な平面視横長長方形状の部材であって,【E-E部におけるG-G拡大断面図】によると,透光板体部から突出する片側の縦格子と縦框の板全体の厚さの比が約1:7.5であるのに対して,引用意匠は,透光板体部から突出する部分の角部にC面取りを施した平面視略横長長方形状の部材であって,その上下端部の透光板体部側にコの字状連結部材と嵌合する鈎状の切り欠き部(以下「鈎状の切り欠き部」という。)を形成したものであって,【B-B部分のC-C線拡大断面図】によると,透光板体部から突出する片側の縦格子と縦框の板全体の厚さの比が約1:3.5である点, (ウ)縦格子上下端部のキャップ部の有無について,本願意匠は,各縦格子の上下端部に,正面視の横幅が縦格子とほぼ等しく,断面視が略コの字状の透明な部材からなるキャップ(以下「キャップ部」という。)を冠着しているのに対して,引用意匠には,そのようなキャップ部を設けていない点, (エ)縦格子の数について,本願意匠は,4つ配設しているのに対して,引用意匠は,5つ配設している点, が認められる。 2.両意匠の形態の評価 以上の共通点及び差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。 まず,共通点(A)の全体の態様,及び共通点(B)の透光板体部上下端部に連結部材を設けて上下対称とした態様における共通点は,板体の中央部分に透光板体部を設け,その正背両面に縦格子を複数配した上下対称形の建物用扉の態様を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この共通性のみをもって両意匠の類否判断を決定することはできない。 次に,共通点(C)の縦框の態様についても,角部の面取りが本願の出願前より一般に見受けられるものであることを考慮すると,この共通点は特段特徴のあるものとはいえず,意匠上高く評価することはできないものであるから,この共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるといわざるを得ない。 そして,これらの共通点(A)から共通点(C)の態様によって生じる視覚的効果は,これらを全体としてみても大きいものとはいえず,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 これに対し,差異点(ア)の連結部材の態様については,建物用扉の分野において,透光板体部が細長い扉であれば,透光板体部の上下端部に連結部材が表れないものは既に見られるものの,透光板体部が扉の4割を占める本願意匠のような扉において,扉の上端部から下端部にかけて透光部分がフレームレスで連続するものは,先行意匠に照らすところ見つけることができず,該部位の態様は引用意匠にはない本願意匠の特徴点であるとして認められ,需要者に別異な印象を与えるものといえるから,この差異点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものである。 次に,差異点(イ)の縦格子の態様,及び差異点(ウ)の縦格子上下端部のキャップ部の有無については,該部位にキャップ部を冠着することで,透光板体部からの突出が小さな縦格子が扉に確実に固定されているとの印象を与える本願意匠の態様と,縦格子の鈎状切り欠き部をコの字状連結部材に嵌め合わせてはいるものの該部位の態様は目立たず,透光板体部からの突出が大きな縦格子の固定について,不確かな印象を与える引用意匠の態様とは,需要者に別異な印象を与えるものと認められるから,これらの差異点(イ)及び差異点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。 そして,これらの差異点(ア)から差異点(ウ)によって生じる視覚的効果は需要者に別異な印象を与えるものであって,それらが相まって生じる別異の印象は,両意匠の類否判断を決定付けるほど大きいものである。 一方,差異点(エ)の縦格子の数については,該部位の本数の増減は,この建物用扉の分野では,例を挙げるまでもなく常套的に行われている改変によるものにすぎず,この差異点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は軽微なものである。 3.両意匠の類否判断 上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,同一の物品であると認められるものの,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,差異点(エ)を除いた各差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,これら差異点が相まって生じる視覚的効果は共通点のそれを凌駕して類否判断を支配し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするものである。 したがって,本願意匠と引用意匠とは類似しないものと認められる。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-12-27 |
出願番号 | 意願2016-18121(D2016-18121) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 智加 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 竹下 寛 |
登録日 | 2018-02-16 |
登録番号 | 意匠登録第1599250号(D1599250) |
代理人 | 藤本 昇 |
代理人 | 野村 慎一 |