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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M2 |
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管理番号 | 1338207 |
審判番号 | 不服2017-10606 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-07-14 |
確定日 | 2018-03-09 |
意匠に係る物品 | 結束バンド |
事件の表示 | 意願2016- 3141「結束バンド」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年(2016年)2月15日に出願された意匠登録出願であって,平成28年12月14日付けの拒絶理由通知に対し,平成29年1月31日に意見書が提出され,平成29年4月26日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成29年7月14日に審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願意匠は,意匠に係る物品を「結束バンド」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した見本のとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることができない意匠)に該当する,というものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成20年12月22日)に掲載された,意匠登録第1347302号(意匠に係る物品,物品保持具)の意匠であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 第4 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「結束バンド」であり,引用意匠に係る物品は,「物品保持具」であって表記は異なるが,ともに電線等を結束して固定するために使用されるものであるから,本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。 (2)形態 両意匠の形態を対比すると,その形態には,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。なお,本願意匠と引用意匠の対比にあたっては,本願意匠の見本を引用意匠の図の向き(図の表記)に合わせることとする。 まず,共通点として, (A)全体は,電線等に巻きつけられるベルト部と基盤等と嵌合する突起及びベルト部の係止孔を有する頭部からなる点, (B)頭部の具体的態様について,正面視して,(B-1)ベルト係止孔を有する部分は,長手方向にやや長い略直方体状で,中央に矩形状の貫通孔を有し,(B-2)突起部分は,中央の板状部材を挟んでV字状に配された摘部を有するL字状部材(以下「摘部材」という。)と,略直方体部分の端部寄りの両角部から摘部材と交差するように延伸し,取付け時に基盤を押圧する細幅板状部材(以下「突張り部材」という。)からなり,これらの部材は,それぞれが側面視して対角に配されており,正面視した摘部材は,下側で手前に,上側では奥に位置する。(B-3)摘部材は,先端寄りに基盤の取付孔からの抜け止め防止のための三角形状に張り出した引っかけ部を有し,後端はクランク状に屈曲して摘み部を形成している点, (C)ベルト部の具体的態様について,端部が背面側にへの字状に屈曲し,背面側の屈曲部のやや内側と頭部のやや内側からベルト両側部に縁を残して鋸刃状の細幅縞模様を形成しており,屈曲部先端は先細りで正面側に滑り止めの凸条を複数有している点, が認められる。 他方,相違点として, (ア)頭部とベルト部の接合位置について,本願意匠は,頭部の背面側とベルト部が略面一であるのに対して,引用意匠は,頭部の正面側とベルト部が略面一である点, (イ)頭部とベルト部の構成比について,本願意匠は,約1対8(見本の実測による。)であるのに対して,引用意匠は,約1対10である点, (ウ)頭部先端の突起部の具体的態様について,(ウ-1)摘部材につき,L字に屈曲した部位から端部までが,右側面視して,本願意匠は徐々に拡幅する略台形状に看取されるのに対して,引用意匠は端部のみが幅広でL字状に看取される点,(ウ-2)平面視して,本願意匠の摘部材と突張り部材はほぼ同じ幅であるのに対して,引用意匠は摘部材の幅が突張り部材の約2倍である点, (エ)頭部のベルト係止部分の具体的態様について,(エ-1)底面視して,本願意匠は,ベルトの下側に位置し,ベルトに連続する面は左斜め上方に傾斜しているのに対して,引用意匠は,ベルトの上側に位置し,ベルトに連続する面は左斜め下方に傾斜している点。(エ-2)本願意匠は,ベルトに連続する傾斜面の両側部に細幅のリブを形成しているのに対して,引用意匠はリブを有さない点, (オ)ベルト部の具体的態様について,(オ-1)正面視して,屈曲部表面の凸条につき,本願意匠が5本であるのに対して,引用意匠は3本である点,(オ-2)平面視して,本願意匠は,頭部との境界に括れ等を有さないのに対して,引用意匠は,頭部との境界の背面側に括れを有する点, が認められる。 2.両意匠の形態の評価 (1)形態の評価方法 両意匠の意匠に係る物品は,電線等を結束して基盤等に嵌合するための結束バンドであるから,結束作業に従事する作業者を含めた需用者の視点に基づいて,各共通点及び相違点が観察されやすい部分か否か,関心を持って観察する部分か否かを評価し,加えて,各部位の意匠全体に占める割合,両意匠と先行意匠との対比等に基づき,各共通点及び相違点における形態が両意匠の類否判断に及ぼす影響を,以下に評価する。 (2)形態の共通点の個別評価 共通点(A)のベルト部と頭部からなる態様は,この物品分野において数多く見られる態様であって,両意匠の基調をなす態様ではあるものの,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点であるから,この共通点が需用者の注意を引くものということはできない。 頭部の共通点の,(B-1)ベルト係止部分の略直方体状の態様や,(B-2)摘部材と突っ張り部材からなる突起部分の態様,及び(B-3)摘部材の具体的態様は,いずれも,この種の結束バンドにおいて既に見られる態様であり,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,類否判断に及ぼす影響は限定的なものにすぎない。 共通点(C)のベルト部の具体的態様についても,結束バンドのベルト部の形状としてごく一般的なものにすぎないから,類否判断に及ぼす影響も大きいとはいえない。 (3)形態の相違点の個別評価 相違点(ア)の頭部とベルト部の接合位置については,両意匠の外観に影響を及ぼす相違であって,特に,使用時において,本願意匠は,ベルト部が頭部を巻き込むようにして巻回されるのに対して,引用意匠は,ベルト部が頭部を避けるように頭部とは逆側に巻回され,視覚的印象が明確に異なるといえる。 相違点(イ)の頭部とベルト部の構成比率については,この種物品においては,結束する電線等の作業対象に応じて構成比率の異なる態様が見られることが普通であって,類否判断に及ぼす影響は限定的なものに過ぎない。 相違点(ウ)は頭部の突起部分についての具体的構成態様に関するものであるが,突起の形状は基盤等への着脱作業のしやすさに関わることから,需用者が関心を持って観察する部位であり,当該部位を対比した場合,本願意匠と引用意匠は,(ウ-1)は右側面視,(ウ-2)は平面視において外観が大きく異なるので,類否判断に影響を与えるものといえる。 相違点(エ)は頭部のベルト係止部分についての具体的構成態様に関するものであって,(エ-1)のベルト係止部の傾斜面の相違は,上記(ア)の頭部とベルト部の接合位置とあいまって両意匠の外観の違いを強調するものであって,類否判断に影響を与えるものといえるが,(エ-2)の傾斜面のリブの有無は,使用時において,本願意匠のリブが,電線等を固定する際に効果を発揮するとしても,当該部位に注目した際に気づく程度の細部の相違であるから,類否判断に与える影響は小さい。 相違点(オ)のベルト部の具体的構成態様については,(オ-1)の凸条の数,(オ-2)の括れの有無ともに,当該部位に注目した際に気づく程度の細部の相違であるから,類否判断に与える影響は小さい。 3.両意匠の類否判断 両意匠の形態における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき,意匠全体として両意匠の全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合,共通点(A),共通点(B-1)ないし(B-3),及び共通点(C)は,いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さく,共通点全体としても両意匠の類否判断を決定づけるまでには至らないのに対し,相違点(ア)及び相違点(ウ-1)及び(ウ-2)が類否判断に及ぼす影響は大きく,また,これらの相違点に相違点(エ-1)があいまって生じる効果を考慮すると,相違点(イ),(エ-2),及び(オ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいとしても,両意匠は意匠全体として需用者に強く別異の美感を起こさせており,これらの相違点は,両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼしているといえる。 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,その形態において,相違点が共通点を凌駕し,意匠全体として需用者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しない。 第5 むすび 以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に揚げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-02-27 |
出願番号 | 意願2016-3141(D2016-3141) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(M2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 外山 雅暁 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 温品 博康 |
登録日 | 2018-03-23 |
登録番号 | 意匠登録第1601957号(D1601957) |
代理人 | 清流国際特許業務法人 |