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審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 M2 |
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管理番号 | 1339237 |
審判番号 | 不服2017-15191 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-10-12 |
確定日 | 2018-04-10 |
意匠に係る物品 | 配管用保護キャップ |
事件の表示 | 意願2016- 17972「配管用保護キャップ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この意匠登録出願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,平成28年8月24日の意匠登録出願であって,平成29年2月24日付けの拒絶理由の通知に対し,平成29年4月10日に意見書が提出されたが,平成29年7月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,平成29年10月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願意匠は,意匠に係る物品を「配管用保護キャップ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 具体的には,上方を小径に下方を大径に形成した正面視略凸字形状となる略円筒状の外部材小径部と,上方を小径に下方を大径に形成した正面視略凸字形状となる略円筒状の内部材大径部とを僅かに離間し,取り外し可能に二重管状に構成したものであり,外部材の具体的な形態は,高さ方向の略中央にテーパー状段部を設け,全体の高さ,小径部の直径及び大径部の直径の寸法比を,約1.1:0.8:1とし,小径部の高さ,テーパー状段部の高さ及び大径部の高さの寸法比を,約2.6:1:3.6としたものであり,内部材の具体的な形態は,高さ方向の略中央にテーパー状段部を設け,大径部下端に下方に向かい拡径するテーパー部を形成し,全体の高さ,小径部の直径,大径部の直径及び下端テーパー部の直径の寸法比を,約2.3:1:1.2:1.8とし,小径部の高さ,テーパー状段部の高さ,大径部の高さ及び下端テーパー部の高さの寸法比を,約4.2:1:3.9:1.7としたものであって,内部材の下端テーパー部の外周面が外部材のテーパー状段部の内周面と密着することで上方には抜けず,内部材のテーパー状段部及び小径部が,外部材上端から上方に突出した形態となっている。 第3 原査定の拒絶の理由及び本意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,願書において本意匠の表示の欄に記載された出願の意匠(以下「本意匠」という。)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しない,としたものである。 本意匠は,本願意匠の出願日と同日の平成28年8月24日に出願され,平成29年4月7日に意匠権の設定の登録がなされ,平成29年5月8日に意匠公報が発行された,出願番号を意願2016-17970号とする,意匠登録第1575816号(意匠に係る物品,配管用保護キャップ)の意匠である(別紙第2参照)。 本意匠の形態は,上方を小径に下方を大径に形成した正面視略凸字形状となる略円筒状の外部材小径部と略円筒状の内部材円筒部とを僅かに離間し,取り外し可能に二重管状に構成したものであり,外部材の具体的な形態は,高さ方向の略中央にテーパー状段部を設け,全体の高さ,小径部の直径及び大径部の直径の寸法比を,約1.1:0.8:1とし,小径部の高さ,テーパー状段部の高さ及び大径部の高さの寸法比を,約2.6:1:3.6としたものであり,内部材の具体的な形態は,円筒部下端に下方に向かい拡径するテーパー部を形成し,全体の高さ,円筒部の直径及び下端テーパー部の直径の寸法比を,約1:1:1.4とし,円筒部の高さと下端テーパー部の高さの寸法比を,約2.5:1としたものであって,内部材の下端テーパー部の外周面が外部材のテーパー状段部の内周面と密着することで上方には抜けず,内部材の円筒部上端が,外部材上端から上方に僅かに突出した形態となっている。 第4 本願意匠と本意匠の対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「配管用保護キャップ」であり,一致している。 2 形態の対比 (1)形態の共通点 (共通点1)両意匠は,上部において外部材と内部材とを僅かに離間した二重管状に形成した点において共通する。 (共通点2)両意匠は,外部材の形態が共通する。 (共通点3)両意匠は,内部材の形態のうち,外部材小径部内側の円筒部と下端テーパー部の形態が共通する。 (2)形態の相違点 (相違点1)両意匠は,内部材の形態のうち,外部材小径部から突出する部分について,本願意匠はテーパー状段部と小径の円筒部とが突出しているのに対し,本意匠は外部材小径部内側の円筒部が延長して僅かに突出している点で,両意匠は相違する。 第5 判断 以下,両意匠の対比に基づいて,両意匠が類似し,意匠法第10条第1項の規定に該当するものか否かについて検討する。 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は,同一である。 2 形態の共通点及び相違点の評価 両意匠は,上下に開口し,上部が各種配管と接続し,下部がその配管の保護管と接続する配管用保護キャップの意匠であり,上部の配管接続部を二重管状とし,その内部材を取り外し可能とすることにより,上部開口部の径を簡易に変更でき,2種類の異なる径の配管に接続することを可能としたものである。当該態様は,この種物品分野の先行意匠には見受けられない特徴的なものであるから,需要者は,両意匠を観察する場合に,二重管状で内部材を簡易に取り外し可能としている点を最も注目するといえる。 (1)形態の共通点 共通点1に係る内部材と外部材とを僅かに離間した二重管状に形成した態様は,上記のとおり需要者が最も注目する点であり,径の異なる配管に接続可能との印象を与え,離間していることから内部材を簡易に取り外し可能との印象を与えることから,両意匠の美感には大きな共通性があるといえる。 共通点2に係る外部材の形態は,高さ方向の略中央にテーパー状段部を設け,下方の開口が広く形成されており,下方の開口からのみ内部材を簡易に取り外し可能との印象を与えるものであるから,需要者はこの形態に注目し,両意匠に共通する美感をもたらしているといえる。 共通点3に係る内部材の外部材小径部内側の円筒部と下端テーパー部の形態は,需要者が注目する二重管の部分であり,また,下端テーパー部により外部材に密着して係止されることによって,水や埃等の進入を防止することができ,二重管構成とする上で重要な部分に係る形態であることから,共通点3も両意匠の美感に与える影響は大きい。 (2)形態の相違点 相違点1に係る内部材の外部材小径部から突出する部分の形態は,外部材に隠されず見えやすい部分ではあるものの,需要者が最も注目する二重管状で内部材を簡易に取り外し可能としている点に直接的に関わる形態ではなく,需要者が注目する程度は小さいから,相違点1が両意匠の美感に与える影響は小さい。 3 両意匠の類否判断 両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき,意匠全体として総合的に観察した場合,両意匠の特徴として最も需要者が注目する二重管状で内部材を簡易に取り外し可能としている点に関わる形態について,共通点1ないし3のとおり両意匠は共通していることから,全体として美感に大きな共通性があるといえる。そうすると,相違点1の外部材から突出する内部材の形態が異なることを考慮しても,両意匠は,意匠全体として観察した際に共通の美感を起こさせるものといえる。 したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であり,その形態において,需要者に共通の美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似する。 第6 むすび 以上のとおり,本願意匠は本意匠に類似し,意匠法第10条第1項の規定に該当するものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-03-29 |
出願番号 | 意願2016-17972(D2016-17972) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(M2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 外山 雅暁 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
竹下 寛 江塚 尚弘 |
登録日 | 2018-04-20 |
登録番号 | 意匠登録第1604591号(D1604591) |
代理人 | 特許業務法人R&C |