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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1340193 
審判番号 不服2017-13049
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-04 
確定日 2018-04-04 
意匠に係る物品 センサー取付け具 
事件の表示 意願2016- 16198「センサー取付け具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年(2016年)7月28日の意匠登録出願であって,平成29年1月30日付けの拒絶理由の通知に対し,平成29年3月15日に意見書が提出されたが,平成29年5月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,平成29年9月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,平成29年10月16日に審判請求書の請求の理由を変更する手続補正書が提出されたものである。

第2 本願意匠
本願意匠は,意匠に係る物品を「センサー取付け具」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する,というものである。

引用意匠は,日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成13年(2001年)1月15日)に記載された,意匠登録第1097148号(意匠に係る物品,センサー取付具)の意匠であり,その形態を,同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 対比
1.意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,送り仮名の表記の違いがあるものの,いずれも「センサー取付け具」であって,一致するといえる。

2.形態の対比
対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。
(1)形態の共通点
(共通点1)両意匠は,センサーを取り付ける本体部分(以下「胴体部」という。)を略円筒状とし,胴体部のセンサー取付け側端部に,フランジのような張出部分(以下「鍔部」という。)を形成し,胴体部のパイプとの溶接側端部に,パイプの曲面に合わせて湾曲させた平面視略中空円板状の張出部分(以下「湾曲鍔部」という。)を設けた全体の構成態様が共通する。
(共通点2)両意匠は,胴体部の形状において,いずれもその内周面にねじ山を形成し,センサー取付け側端部を鍔部と面一で水平な形状とし,パイプとの溶接側端部を湾曲鍔部と同様の曲面形状としている点が共通する。
(共通点3)両意匠は,鍔部の外形状を,いずれも略隅丸八角形状の板体としている点が共通する。

(2)形態の相違点
(相違点1)本願意匠は,胴体部のパイプとの溶接側先端部分に,胴体部より大径で,その先端部をパイプの曲面に合わせて切り欠いた略リング状の突出部を1つ配設しているのに対し,引用意匠には,そのような突出部を設けていない点で,両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠は,湾曲鍔部の形状が,外側先端部に向かってその厚みが漸次薄くなるのに対し,引用意匠は,湾曲鍔部の形状が,ほぼ一定の厚みである点で,両意匠は相違する。
(相違点3)本願意匠は,鍔部の厚みが肉厚であるのに対し,引用意匠は,鍔部の厚みが薄い点で,両意匠は相違する。

第5 判断
1.意匠に係る物品の類否判断
本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は,同一である。

2.形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品である「センサー取付け具」は,排気管内の酸素濃度や温度を測定するセンサーを排気管等に固定するために用いるものであり,その使用方法は,センサー取付け具の湾曲鍔部を,排気管等に設けた円孔を覆うように配置して溶接し,排気管等のパイプから立設させた胴体部にセンサーを螺着して取り付けるものであるから,センサー取付け具とパイプとの接合部分である,センサー取付け具のパイプとの溶接側端部の形状が需要者の特に注意を強く惹く部分であるといえる。

(1)形態の共通点の個別評価
共通点1は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであって,胴体部を略短円筒状とすることは,このセンサー取付け部の物品の形状としてはありふれたものであり,センサー取付け側端部にフランジのように張出部を形成すること,及びパイプとの溶接側端部に平面視略中空円板状の湾曲鍔部を設けることも,この種物品分野において既に見られるものであるから,共通点1が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
共通点2における胴体部の内周面にねじ山を形成すること,センサー取付け側端部を鍔部と面一な水平な形状とすることは,この種物品分野において既に見られるものに過ぎないものであり,胴体部のパイプとの溶接側端部を湾曲鍔部と同様の曲面形状とすることも,パイプの曲面部分に取り付けることを考慮すれば特段特徴のある形状であるとはいえず,共通点2が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
共通点3における鍔部の外形状は,従来見られない略隅丸八角形状ではあるが,センサー取付け具の溶接側端部の形状に比べ需要者の注意を惹く程度は小さい上に,その使用時にはセンサーの取付け用ナット等で隠される部分でもあるから,共通点3が意匠全体の美感に与える影響は一定程度にとどまる。

(2)形態の相違点の個別評価
相違点1における胴体部のパイプとの溶接側先端部の形状については,需要者が特に関心を持って観察するセンサー取付け具の溶接側先端部であるが,該部位に突出部があることによってパイプの円孔に嵌め入れやすい形状であるとの印象を与える本願意匠と,このような突起部のないためにセンサー取付け具の位置決めが困難な形状であるとの印象を与える引用意匠では,需要者に強い別異な美感を与える上に,本願意匠のように,突出部の直径を胴体部のものより大径としたものは,従来の周辺意匠には見られない特徴的なものであるから,両意匠は胴体部のパイプとの溶接側先端部の美感に大きな差異がある。
相違点2における湾曲鍔部の形状については,需要者の注意を惹く部分である溶接によりパイプと固着する部分であって,湾曲鍔部の外側先端部の厚みが漸次薄く形成することにより溶接しやすいとの印象を与える本願意匠と,そのような印象のない引用意匠では,需要者に異なる美感を与えるから,両意匠は湾曲鍔部の美感に大きな差異がある。
相違点3における鍔部の厚みについては,この種物品の先行意匠に照らして,肉厚のものも薄いものもどちらもありふれたものではあるから,両意匠の外形状が共通している鍔部の美感にはわずかな差異しか認められない。

3.両意匠の類否判断
両意匠の形態における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき,意匠全体として両意匠の全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合,両意匠は,需要者の注意を強く惹く胴体部のパイプとの溶接側先端部の形状及び湾曲鍔部の形状において美感に大きな差異があり,全体の構成態様,胴体部及び鍔部の外形状が共通することを考慮しても,意匠全体として観察した際には異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は同一であるが,その形態において,相違点が共通点を凌駕し,意匠全体として需要者に需要者に異なる美感を起こさせるものであって,両意匠は類似しないものである。

第6 むすび
以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2018-03-14 
出願番号 意願2016-16198(D2016-16198) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北代 真一 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 江塚 尚弘
宮田 莊平
登録日 2018-05-11 
登録番号 意匠登録第1605631号(D1605631) 
代理人 増田 恒則 

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