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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J3
管理番号 1340196 
審判番号 不服2017-14189
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-26 
確定日 2018-04-17 
意匠に係る物品 ネットワークカメラ 
事件の表示 意願2016- 9979「ネットワークカメラ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年5月11日の意匠登録出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年12月26日付け:拒絶理由の通知
平成29年2月20日:意見書の提出
平成29年6月26日付け:拒絶査定
平成29年9月26日:審判請求書の提出

第2 本願意匠
本願意匠は,意匠に係る物品を「ネットワークカメラ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する,というものである。
引用意匠は,特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成13年9月17日)に記載された,意匠登録第1121588号(意匠に係る物品,監視用テレビカメラ)の意匠であり,その形態を,同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 対比
1 意匠に係る物品
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,意匠に係る物品の記載によれば,本願は「ネットワークカメラ」であり,引用は「監視用テレビカメラ」であって,表記は異なるものの,いずれも天井や壁面に取り付けて設置場所の周囲の様子を監視したり,映像転送したりするものであるから,共通する。

2 形態
両意匠を対比すると,両意匠の形態については,以下のとおり,共通点及び相違点がある。
(1)形態の共通点
(共通点1) 両意匠は,全体の態様が,正面視して,短円柱の下縁外周部分をR面取りした形状の筐体部と,筐体部の下中央に配した半球状のカメラ内蔵部から構成されたものであり,各部の形態についても,底面視して,カメラ内蔵部の径と筐体部の径の比を約1:2とした点で共通する。

(2)形態の相違点
(相違点1) 本願意匠は,底面視して,筐体部の左上,左下,右上及び右下の縁部の等間隔となる4カ所の位置において,筐体部を底面から上方に向けて抉って切り欠きを設けており,その切り欠きの態様は,底面視して,各々,外側に向けてUの字状に,正面視,背面視及び側面視して,筐体部のうちR面取りした下縁外周部分を除く円柱状部分の高さの約半分の位置まで抉ったJの字状又はその左右反転状に見受けられ,加えて,切り欠きの上端にねじ留めがなされている。一方,引用意匠は,そのような切り欠きがない。
(相違点2) 筐体部の厚みに関し,正面視して筐体部の径に対する高さの比が,本願意匠は約4分の1で,引用意匠は約5分の1であり,本願意匠は引用意匠に対して厚めとなっている。
(相違点3) 筐体部のうち,R面取りした下縁外周部分の態様に関し,本願意匠は丸みをもたせているのに対して,引用意匠は角張らせている。
(相違点4) 本願意匠は筐体部の底面の左下の切り欠きの右側に窪みを設けそこに小円部を設けているのに対して,引用意匠にはそのような態様がない。
(相違点5) 本願意匠は筐体部の正面上端を扁平なUの字状に切り欠いて配線のための孔を開けているのに対して,引用意匠にはそのような孔がない。
(相違点6) 本願意匠は筐体部の周面の上端近傍に1条の線模様が見られるのに対して,引用意匠にはそのような模様がない。

第5 判断
1 意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,共通する。

2 形態の共通点及び相違点の評価
(1)形態の共通点
(共通点1)のうち,短円柱状の筐体部の下中央に半球状のカメラ内蔵部を配した構成は,このネットワークカメラの物品分野において既に極普通に見られるものに過ぎないものであるから,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,また,当該構成をもつもののうち,下縁外周部分を両意匠のようにR面取りしているものも,底面視してカメラ内蔵部と筐体部の径の比が約1:2となるものも,いずれも普通に見られるものであって注意を惹くものとはいえないので,この(共通点1)が類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。

(2)形態の相違点
(相違点1)の切り欠きの有無の相違については,筐体部を底面から平面方向に正円柱状部分の高さの約半分の位置まで抉った本願意匠の4カ所の切り欠きは設置後に筐体部の全体をどの位置からみても目立つ形態であり,設置状態での外観が重視されるこの物品にあっては,切り欠きがない引用意匠と対比してもその形態の特徴は際立ったものであるから,(相違点1)は,類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
(相違点2)の筐体部の厚みの相違については,設置状態での外観のうち厚みも重視されるところ,本願意匠が大きめの印象を与えるのに対して引用意匠は小さめの印象を与えるものであり,さらに,(相違点3)の筐体部のR面取りした下縁外周部分の態様の相違については,設置状態での外観において当該態様が丸みをもたせたか角張らせたかの相違が設置状態での外観の印象を異ならせるものであり,これらの相違点を合わせると,本願意匠は筐体部が大きく丸い印象を与えるのに対して,引用意匠は筐体部が小さく角張っている印象を与えるものである。そうすると,両相違点における態様は印象を異にするものであり,(相違点2)及び(相違点3)は,類否判断に影響を及ぼすものである。
(相違点4)及び(相違点5)の相違については,(相違点4)の態様が小さいながらも底面にあって使用時において目に付くものであり,(相違点5)の態様が筐体部の全体において大きめの孔であり,(相違点6)の1条の線模様の有無の相違も含め,いずれの相違点も,類否判断に影響を及ぼすものである。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき,意匠全体として総合的に判断した場合,両意匠は,切り欠きの有無の相違,筐体部の厚みの相違があり,さらに,筐体部のR面取りした下縁外周部分と正円柱状部分との接続の態様の相違,筐体部の底面の左下中央付近に設けた窪みと小円部の有無の相違,筐体部の正面の配線のための孔の有無の相違及び筐体部の上端近傍の線模様の有無の相違があり,短円柱状の筐体部の下中央に半球状のカメラ内蔵部を配した構成が共通するとしても,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるに至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕するものであるから,両意匠の形態は類似しないものである。
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態においては類似しないものであるから,両意匠は類似しない。

第6 むすび
以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-04-02 
出願番号 意願2016-9979(D2016-9979) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 真珠日比野 杏香 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 江塚 尚弘
宮田 莊平
登録日 2018-05-25 
登録番号 意匠登録第1606848号(D1606848) 
代理人 阿部 琢磨 
代理人 黒岩 創吾 

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