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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H1
管理番号 1341148 
審判番号 不服2018-2710
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-26 
確定日 2018-06-11 
意匠に係る物品 配線コネクタ用ハウジング 
事件の表示 意願2016- 25105「配線コネクタ用ハウジング」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年(2016年)11月17日の意匠登録出願であって、平成29年(2017年)6月27日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月10日に意見書が提出されたが、同年11月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年(2018年)2月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「配線コネクタ用ハウジング」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には以下のとおりである。なお、「(別紙第2参照)」は当審が付したものである。

「この意匠登録出願の意匠は配線コネクタ用ハウジングに係るものですが、この種物品分野において、差込口(ポート部)を単独で設けることも、連接して設けることもありふれているところ、本願意匠は、下記意匠に見られる多極コネクター用コンセントの二つ設けられた差込口のうちの一つをほとんどそのまま利用し、配線コネクタ用ハウジングとしたに過ぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。

電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2016年 4月27日
受入日 特許庁意匠課受入2016年 6月 3日
掲載者 サンワサプライ株式会社
表題 TAP-KJUSB2W 埋込USB給電用
コンセントの画像一覧 - サンワサプライ
株式会社
掲載ページのアドレス http://www.sanwa.co.jp/product/syohin_photo.asp?code=TAP-KJUSB2W&number=0
に掲載された「多極コネクター用コンセント」の意匠(別紙第2参照)
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ28006533号)」

第4 当審の判断
以下、本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、本願意匠が、この意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。

1 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は「配線コネクタ用ハウジング」であり、本願の願書及び願書に添付した図面の記載によれば、LANコネクタやUSBコネクタなどの配線コネクタを組み込むための分離可能なハウジングであって、部品Aと部品Bから成るものである。
本願意匠の形態は、次のとおりである。
(A)全体について
全体の形状は、正面寄りの横幅がやや窄まった、奥行きのある略横長直方体状(高さ:最大横幅:奥行の比が約3.5:7:6)であって、部品Aの外側形状として表された前半部と、部品Bの外側形状として表された後半部から構成されている。
(B)前半部について
前半部の正面中央には、正面視略横長長方形状の直方体部(以下「中央直方体部」という。)が、平面及び底面が後半部とほぼ面一致状になるように形成され、その左右両側に、平面及び底面が後半部と面一致状になるように、中央直方体部よりも奥行きの短い正面視略縦長長方形状の直方体部(以下「小直方体部」という。)が形成されており、左右の小直方体部は左右対称である。
(B-1)中央直方体部の正面部中央には、縦横比が約5:4である略縦長長方形状の開口部が設けられており、同開口部は、後半部背面部中央に貫通している。
(B-2)小直方体部の正面部には、中央直方体部の側面に密着した側面視略倒扁平コ字状の突設部が設けられ、小直方体部の側面部中央には、略正方形状の凹部が形成されている。また、小直方体部正面部の外側縁部には、その凹部の上側及び下側に、正面視略倒扁平台形状の突出片が形成されている。
(B-3)側面から見て、小直方体状の下端には、下方に張り出した略ロ字状の弾性片部が設けられており、弾性片部の中央に略正方形状の孔が形成されている。
(C)後半部について
後半部は、略直方体状である。
(C-1)背面から見て、後半部の中央には略十字状の開口部が形成されており、略十字状開口部の縦幅は、上記中央直方体部の開口部の縦幅よりも若干大きく、略十字状開口部の左端寄りと右端寄りには、中央直方体部開口部左右の稜線が表れている。
(C-2)側面の中央やや上に、横向きの略台形柱状の突起部が形成されており、この突起部が上記の弾性片部の孔に嵌合する。
(D)分離した状態の形態
「部品Aと部品Bが分離した状態の斜視図」及び「A-A断面図」によれば、前半部には、中央直方体部開口部の平面側及び底面側から奥行き方向に伸びる、2つの縦長状の係止片が並んで配されており、後半部の前端の4隅には、略L字状の突出片が形成されている。
(E)前半部と後半部の構成比
前半部と後半部の奥行き方向の幅の比は約8:9であり、前半部を構成する中央直方体部と小直方体部の奥行き方向の幅の比は、約9:5である。

2 原査定における拒絶の理由で引用された意匠
原査定における拒絶の理由で引用された、前記第3に掲げられた「多極コネクター用コンセント」の意匠(以下「引用意匠」という。)は、引用意匠が掲載されたページ(インターネット)の記載によれば、製品名が「埋込USB給電用コンセント」とされており、引用意匠の正面(本願意匠の向きに合わせて認定する。)の二つの開口部内にはUSBの端子が看取されるから、引用意匠の前半部にはUSBコネクターが内蔵されていると認められ、引用意匠はその前半部と後半部が結合されたものである。
引用意匠の形態は、次のとおりである。なお、引用意匠を現した写真版において、USBの端子が看取される斜視図は正面、平面及び右側面を表す図として認定し、USBの端子が看取されない斜視図は背面、平面及び右側面を表す図として認定する。
(a)全体について
全体の形状は、前部の横幅がやや窄まった略縦長直方体状(高さ:最大横幅:奥行の比が約6:5:4。ただし、写真版の斜視図からの計測であるので必ずしも正確ではない。)であって、明調子に現された前半部と、やや暗調子に現された後半部から構成されている。
(b)前半部について
前半部の中央には、平面及び底面が後半部と面一致状になるように、正面視略縦長長方形状の直方体部(以下「中央直方体部」という。)が形成されており、その右側に、平面及び底面が後半部とほぼ面一致状になるように、中央直方体部よりも奥行きの短い正面視略縦長長方形状の直方体部(以下「小直方体部」という。)が形成されている。左側にも小直方体部が設けられていると推認される。
(b-1)中央直方体部正面部の左右方向中央には、縦横比が約1:2である略横長長方形状の開口部が縦に2つ設けられており、同開口部内には、一回り小さい開口部(USB端子の開口部)が現されており、当該開口部は後半部背面部に貫通していない。
(b-2)小直方体部の正面部には、中央直方体部の側面に密着した側面視略倒扁平コ字状の突設部が横に2つ設けられ、小直方体部の右側面部には、左から順に、細幅?太幅?細幅の3つの矩形状凹部が、正面視略U字溝を挟んで左右に連設されている。また、小直方体部正面の右方には、4つの細幅矩形状凹部に相当する位置に、正面視略倒扁平台形状の突出片が形成されている。
(b-3)右側面から見て、小直方体状の下端には、下方に張り出した略ロ字状の弾性片部が横に2つ設けられており、各弾性片部の中央に略正方形状の孔が形成されている。左側面にも、同様の弾性片部が設けられていると推認される。
(c)後半部について
後半部は、背面の左下に略正方形状凹部が形成された略直方体状であって、その凹部を除いた背面と右側面の角部がテーパー面状に形成されている。
(c-1)略正方形状凹部の縦横比は約3:2であり、その縦幅は背面の縦幅の約1/2.3であり、その横幅は背面の横幅の約1/2.6である(ただし、写真版の斜視図からの計測であるので、これらの比は必ずしも正確ではない。)。略正方形状凹部の左右方向中央には2つの円形穴部が上下に設けられており、その左方には略角丸縦長長方形状の穴部が設けられている。
(c-2)右側面の中央には僅かに隆起した略横長長方形状面が形成されており、その面の上端と下端に上記弾性片部が当接している。また、弾性片部の孔に嵌合する突起部が形成されているが、その具体的形状は不明である。
(d)分離した状態の形態
前半部に弾性片部が設けられ、その孔が下半部に形成された突起部と嵌合されていることから、引用意匠は前半部と後半部に分離されるものであると推認されるが、分離した状態の形態は不明である。
(e)前半部と後半部の構成比
前半部と後半部の奥行き方向の幅の比は約6:8であり、前半部を構成する中央直方体部と小直方体部の奥行き方向の幅の比は、約2:1である(ただし、写真版の斜視図からの計測であるので、これらの比は必ずしも正確ではない。)。

3 創作非容易性の判断
「配線コネクタ用ハウジング」の意匠の物品分野において、全体の形状について、正面側の横幅がやや窄まった略縦長直方体状として、前後に分離可能な部材から構成され、前半部の形状について、中央直方体部と小直方体部を設けて、その中央直方体部の左右方向中央に開口部を設けて、小直方体部正面部に側面視略倒扁平コ字状の突設部や正面視略倒扁平台形状の突出片を形成して、小直方体部右側面部に矩形状凹部や略ロ字状弾性片部を設けた形態は、引用意匠に見られるように、本願の出願前に公然知られているということができる。
しかしながら、本願意匠の中央直方体部に設けられた開口部は、前記1(B-1)で認定したとおり後半部背面部中央に貫通しており、本願意匠の背面から見た開口部は、前記1(C-1)で認定したとおり略十字状であるところ、引用意匠の中央直方体部に設けられた開口部は背面部に貫通しておらず、もとより背面部には開口部が設けられていない。
そうすると、仮に引用意匠を正面視中央で水平に分断したとしても、引用意匠の上半部の背面部と下半部の背面部のいずれにも正面から貫通した開口部が表れることはなく、本願意匠の背面部の開口部がLANコネクタやUSBコネクタなどを組み込む際の配線を考慮して創作されたものであること、及び略十字状である本願意匠の開口部の形状が独特であることを踏まえると、「配線コネクタ用ハウジング」の意匠の物品分野における当業者が、引用意匠の形態に基づいて、本願意匠の貫通する開口部の形態を容易に創作することができたということはできない。
また、本願意匠の中央直方体部に設けられた開口部は略縦長長方形状(縦横比が約5:4)であるから、開口部が横長長方形状(縦横比が約1:2)である引用意匠とは異なっており、小直方体部側面部に形成された凹部についても、本願意匠では略正方形状の凹部が1つ配されているのに対して、引用意匠では細幅?太幅?細幅の3つの矩形状凹部が連設されているから異なっている。この点からも、当業者が、引用意匠の形態のみに基づいて、本願意匠の開口部や凹部の形態を容易に創作することができたということはできない。
したがって、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-05-22 
出願番号 意願2016-25105(D2016-25105) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清水 玲香 
特許庁審判長 木本 直美
特許庁審判官 宮田 莊平
小林 裕和
登録日 2018-06-29 
登録番号 意匠登録第1609489号(D1609489) 

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