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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L4
管理番号 1342043 
審判番号 不服2017-19576
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-31 
確定日 2018-05-29 
意匠に係る物品 建築用金物 
事件の表示 意願2016- 26228「建築用金物」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年12月2日の意匠登録出願であって、平成29年6月28日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年8月14日に意見書が提出されたが、平成29年9月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年12月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「建築用金物」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2013年12月 6日に受け入れた
建築金物 総合カタログ Hyakuzo CATALOGUE Vol.1302 第54頁所載 製品番号FB-M12 写真中段に示される
座金付ボルトの意匠 (別紙第2参照)
(特許庁意匠課公知資料番号第HC25022706号)

第4 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「建築用金物」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「座金付ボルト」であって、表記は異なるが、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも、住宅等の木造建築において柱と梁を繋いで固定するためのボルトであるから、共通するものである。

(2)本願部分と、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分と、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分を「両部分」という。)の用途及び機能の対比については、いずれも、ボルト先端の略円柱形状のネジ部を除く部分(柱や縦梁を水平に貫通するボルト部と座金部からなる部分)であるから、その用途及び機能,並びに位置,大きさ,及び範囲は一致するものである。

(3)両部分の形態
両部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
ア.共通点
両部分は、略円盤状の座金部の裏面中央に、略細長円柱形状のボルト部の端部を取り付け、座金部の裏面部の外周端部近くに、略円錐形状の小突起を複数個設けたものである点。

イ.相違点
具体的な態様として、
(あ)ボルト部及び座金部の径の長さの比率について
本願部分は、約1:3であるのに対し、引用部分は、約1:4である点、

(い)座金部の外形状について
本願部分は、角の立った円形板状であるのに対し、引用部分は、円形板の表面側の角を若干斜めに面取りし、上下端部を僅かに水平に切り欠いたものである点、

(う)小突起の態様について
本願部分は、小突起を外3個、等間隔に設けているのに対し、引用部分は、上記切り欠きの近くに1個ずつ設けている点。

2.類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,共通している。

(2)両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は一致している。

(3)両部分の形態
以下,両部分の形態について検討する。

ア.共通点の評価
まず,共通点について,部分全体を,略円盤状の座金部の裏面中央に、略細長円柱形状のボルト部の端部を取り付けたものとした態様は,この種物品の分野において,従来から普通に見られるありふれた態様といえるもので,また、座金部の裏面部の外周端部近くに、略円錐形状の小突起を複数個設けた態様も、両部分のみに共通する態様とはいえないものであるから,これらの共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。

イ.相違点の評価
相違点(あ)について,本願部分は,引用部分と比較して、座金部の径に対するボルト部の径は大きく太いものであるから、頑丈な印象を与えるものであり、この種木造建築において、ボルトの太さは、支える梁の加重を考慮して慎重に選択されるものであるから、需要者の注意をひく部分であるといえ、この相違点が両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。

相違点(い)について、柱に取り付けた後に表面に表れる座金部は、最も目につく部分であるところ、本願部分は、表裏面側ともに角の立ったシンプルな円形板状であるのに対し、引用部分は、円形板の表面側の角を若干斜めに面取りし、かつ上下端部を僅かに水平に切り欠いたものであるから、両部分の視覚的印象の相違は大きいものである。また、本願意匠は、端面が円形であるから、柱に取り付ける際の周方向を問わないものであるのに対し、引用部分は、柱に取り付ける際、上下端部の切欠部の周方向の位置を考慮する必要があり、こうした点からも、需要者の注意をひくものといえ、この相違点が両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。

相違点(う)について、小突起の数の違いによる視覚的印象の相違は大きいものであるが、さらに、本願部分の小突起は、座金部裏面の3点で柱に食い込ませて固定するもので、ボルト部に梁受け用の金具を取り付ける際に、安定して取り付けることができるものであるのに対し、引用部分の小突起は、座金部裏面の相対する2点で柱に固定するものであるから、金具取り付けの際、やや安定性を欠くものであり、固定が3点であるか、2点であるかの相違は、高所作業による安全性を重視する需要者の注意をひくものといえ、この相違点が両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。

以上のとおり,相違点(あ)ないし(う)が両部分の類否判断に与える影響は大きいものであるから,相違点全体が相まって両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。

3.小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通し,両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が一致するが、形態においては,共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両部分は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-05-14 
出願番号 意願2016-26228(D2016-26228) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富永 亘 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 宮田 莊平
内藤 弘樹
登録日 2018-07-13 
登録番号 意匠登録第1610573号(D1610573) 
代理人 涌井 謙一 
代理人 鈴木 一永 
代理人 工藤 貴宏 
代理人 山本 典弘 
代理人 三井 直人 

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