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審決分類 審判 査定不服  1項柱書物品 取り消して登録 G2
管理番号 1342060 
審判番号 不服2017-15043
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-10 
確定日 2018-07-03 
意匠に係る物品 映像装置付き自動車 
事件の表示 意願2016- 8762「映像装置付き自動車」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする、平成28年(2016年)4月21日の意匠登録出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
平成28年 4月21日 :新規性の喪失の例外証明書提出書の提出
平成28年12月 5日付け:拒絶理由の通知
平成29年 1月20日 :意見書の提出
平成29年 7月26日付け:拒絶査定
平成29年10月10日 :審判請求書の提出
平成29年10月10日 :手続補正書(意匠に係る物品の説明)の提出
平成30年 5月 9日付け:審尋
平成30年 5月21日 :審尋に対する回答書の提出
平成30年 5月21日 :手続補正書(意匠に係る物品の説明)の提出
平成30年 5月24日 :手続補正書(意匠に係る物品の説明)の提出

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする、平成28年(2016年)4月21日の意匠登録出願であって、その意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「映像装置付き自動車」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「一点鎖線に囲われたエリアのみが、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

そして、願書の「意匠に係る物品の説明」欄の記載は、出願当初から3回の補正を経て変更されており、その内容については、以下のとおりである。
(1)出願当初(平成28年4月21日)の「意匠に係る物品の説明」欄の記載
「本物品の意匠登録を受けようとする部分(各画像図)は、映像表示装置付き自動車より照射される画像(アニメーション)である。この各画像は安全を確保することを目的とし、車両の前進を抑制(例えばアクセルペダルを踏み込みことができなくなる等)する機能を発揮するための操作の用に供するものである。本物品と一体として用いられる自動車周囲の路面、組み立て駐車場、或いは展示場の床板等の表示機器等に表示される画像は、例えばセンサー等の機能を有しており、この画像内へ生物(物体)が侵入することにより車両の前進を抑制する機能が発揮されるものである。」

(2)平成30年5月24日の補正後の「意匠に係る物品の説明」欄の記載
「本物品の意匠登録を受けようとする部分(各画像図)は、映像表示装置付き自動車より照射される画像(アニメーション)である。この各画像は安全を確保することを目的とし、車両の前進を抑制(例えばアクセルペダルを踏み込みことができなくなる等)する機能を発揮するための操作の用に供するものである。本物品と一体として用いられる自動車周囲の路面、組み立て駐車場、或いは展示場の床板等の表示機器等に表示される画像は、センサーの機能を有しており、例えば何らかの危険を察知した運転者以外の第三者(操作を行う意志を有する者)が、この画像内へ足を踏み入れることにより、車両の前進を抑制する機能が発揮されるものである。」

なお、平成30年5月24日の補正は、出願当初の「この画像内へ生物(物体)が侵入することにより車両の前進を抑制する機能が発揮されるものである。」との記載を、具体的に説明して、「例えば何らかの危険を察知した運転者以外の第三者(操作を行う意志を有する者)が、この画像内へ足を踏み入れることにより、車両の前進を抑制する機能が発揮されるものである。」と追記したまでのものであるから、出願当初の意匠の要旨を変更する補正には該当しないものである。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、出願当初の「意匠に係る物品の説明」欄の記載のものに対してなされたものであり、その内容は、以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は、下記に示すように、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しません。

この意匠登録出願の添付図面に表された画像について、願書の『意匠に係る物品の説明』欄では、『例えばセンサー等の機能を有しており、この画像内へ生物(物体)が侵入することにより車両の前進を抑制する機能が発揮されるものである。』と記載されています。
上記記載によれば、本願の画像がセンサー等の機能を有しているとのことですが、センサーによる物体位置の検出は、一般的に、光等を照射し対象物からの反射量を受光部が測定すること等により行われます。本願意匠の画像は、センサーにより生物(物体)位置を検出し、その位置によって車両の前進を抑制する機能を有する自動車において、当該機能を発揮させる生物(物体)の位置の範囲を視覚的に表しているに過ぎず、センサーによる生物(物体)の検出やその後の車両の前進の抑制とは、直接的な関係がみられません。また、物品と一体として用いられる表示機等に表される画像を含む意匠について意匠登録を受けようとする場合は、意匠に含まれる画像が意匠法第2条第2項において規定する物品の機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される画像であることが必要であるところ、本願意匠の場合、自動車を前進させるにあたって運転者が本願意匠の画像に対して何らかの操作を行うものではないため、本願意匠の画像は、意匠法第2条第2項において規定する画像とは認められません。
したがって、この意匠登録出願の意匠の画像は、意匠法上の意匠を構成するものではないため、この意匠登録出願の意匠は、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しません。」

第4 請求人の主張
請求人の審判請求書における主張は、要旨以下のとおり。
(1)本件画像は、安全確保を目的とする火災報知機の操作ボタンや、緊急停止ボタンと同様の役割を果たすための操作の用に供される画像であること
本件画像は、安全確保を目的とする火災報知機の操作ボタンや、緊急停止ボタンと同様の役割を果たすための操作の用に供される画像である。願書の「意匠に係る物品の説明」欄では、「この画像内へ生物(物体)が侵入することにより車両の前進を抑制する機能が発揮されるものである。」と抽象的な記載をしているが、生物は、例えば運転者以外の第三者を想定しており、侵入は第三者が画像内に足を踏み入れることを想定している。
上述のとおり、本願画像は、安全確保を目的とする火災報知機の操作ボタンや、緊急停止ボタンと同様の役割を果たすので、操作の用に供される画像であると考える。

(2)本件意匠に係る画像は、操作を行う者の意志により行われる行為であること
本件の画像は、上述(1)で述べたとおり、火災報知機の操作ボタンや、緊急停車ボタンと同様に不特定多数の第三者が操作を行う者となるので、操作を行う者の意志により行われる行為ということができると考える。

(3)むすび
上述したとおり、本件画像は、安全確保を目的とした火災報知機の操作ボタンや、緊急停止ボタンと同様の役割を果たすための操作の用に供される画像であるということができると考える。

第5 当審の判断
願書の記載及び添付図面の記載から本願部分について認定した上で、請求人の主張を踏まえ、本願意匠は意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するか否かについて、以下検討する。

1.本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、自動車周囲の表示機器等に画像を照射し、表示することができる「映像表示装置付き自動車」である。

2.本願部分
(1)本願部分の用途及び機能
本願部分の映像表示装置付き自動車より照射される画像は、センサーの機能を有しており、例えば危険を察知した運転者以外の第三者が、この画像内へ足を踏み入れることにより、車両の前進を抑制することができるものである。

(2)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分の画像が表示される位置、大きさ及び範囲は、使用状態を示す参考図1ないし6によれば、映像装置付き自動車の左右側面の外側部分、及び前方側部分に位置し、その表示される部分の大きさ及び範囲は、映像装置付き自動車の全長の約2.5倍、車幅の約1.8倍の大きさの略長方形の範囲である。

(3)形態
本願部分の形態は、まず、本願部分の画像の表示範囲の左半分の部分の上端部付近及び下端部付近に、その左右端部を半円状とした略横長棒状の暗調子で表されている画像(以下「棒状画像」という。)を、上下に平行になるように表示し(縮小画像図参照)、次に、この上下の棒状画像が、やや右方向に移動し(変化した状態の縮小画像図1参照)、次に、この上下の棒状画像が、本願部分の画像の表示範囲の右半分の部分に移動し(変化した状態の縮小画像図2参照)、そして、この上下の棒状画像間の左側端部付近に、幅広で略「〉」(終わり山括弧)状の画像(以下「山括弧状画像」という。)が一つ加わり(変化した状態の縮小画像図3参照)、さらに、この山括弧状画像が、上下の棒状画像間の左右中央部分に移動し(変化した状態の縮小画像図4参照)、最後に、この山括弧状画像が、上下の棒状画像間の右側端部にまで移動した(変化した状態の縮小画像図5参照)ものである。
なお、本願部分については、「意匠に係る物品の説明」欄の「・・・(各画像図)は、映像表示装置付き自動車より照射される画像(アニメーション)である。」との記載から、照射された画像は、縮小画像図及び変化した状態の縮小画像図1ないし5において、暗調子で塗りつぶされて表されている部分であるとして認定している。

3.本願部分の画像が、工業上利用することができる意匠に該当するか否かについて
ところで、物品と一体として用いられる表示機等に表される画像を含む意匠について意匠登録を受けようとする場合は、意匠に含まれる画像が意匠法第2条第2項において規定する「物品の操作(当該物品がその機能を発揮できる状態にするために行われるものに限る。)の用に供される画像」であることが必要であり、この物品の操作の用に供される画像には、物品の操作に使用される図形等が選択又は指定可能に表示され、この図形等を用いて物品の操作を行うことができるものであると解される。そこで、平成30年5月24日の手続補正書にて変更した願書の「意匠に係る物品の説明」欄の記載に基づき本願意匠を認定すると、本願部分の画像は、運転者以外による者の操作であったとしても、安全を確保することを目的として、車両の前進を抑制する機能を発揮するための操作の用に供されるものであって、この画像には、物品の操作に使用される投影画像が選択又は指定可能に表示され、この投影画像を用いて車両の前進を抑制する操作を行うことができるものであるから、物品の操作の用に供される画像に該当するものであると認められる。
したがって、本願部分の画像は、上記の理由により意匠法上の意匠を構成するものと認めることができ、本願意匠は、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するものといえる。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠に係る画像は、意匠法第2条第2項に規定する画像に該当し、本願意匠は、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用できる意匠に該当するものであるから、本願については、原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2018-06-19 
出願番号 意願2016-8762(D2016-8762) 
審決分類 D 1 8・ 13- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 智加 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2018-07-13 
登録番号 意匠登録第1610445号(D1610445) 
代理人 伊達 研郎 
代理人 倉谷 泰孝 
代理人 村上 加奈子 
代理人 松井 重明 

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