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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1342063 
審判番号 不服2018-3862
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-19 
確定日 2018-07-17 
意匠に係る物品 自転車用フレーム 
事件の表示 意願2017- 11771「自転車用フレーム」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年5月15日付けの意匠登録出願であって、平成29年9月8日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年10月20日に意見書が提出されたが、平成29年12月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年3月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「自転車用フレーム」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠は、日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成28年4月11日)に記載された、意匠登録第1547532号(意匠に係る物品、電動アシスト自転車用フレーム)の意匠であり、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は、「自転車用フレーム」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「電動アシスト自転車用フレーム」であり、電動アシストか否かの相違はあるが、いずれも自転車の骨格をなすフレームであるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通する。

2 形態の対比
両意匠を対比すると、両意匠の形態については、以下のとおり、共通点及び相違点がある。
なお、ヘッドチューブのある側をフレームの前方とし、チェーンステーの延びた方向をフレームの後方とし、前後方向に直角な方向を左右方向として、以下記載する。
(1)形態の共通点
(共通点1)両意匠は、全体の構成態様が、フレームの中央下方部に位置する、左右方向に水平になるように形成された円形短パイプ(以下「中央水平パイプ」という。)から上方に向かって、略円形長パイプ(以下「シートチューブ」という。)を立設し、中央水平パイプから前方に向かって、シートチューブより大径で正面視略J字状の略円形長パイプ(以下「ダウンチューブ」という。)を前方が上向きになるように接合し、シートチューブとダウンチューブの接合部上面側部分には補強材を設け、ダウンチューブの先端部分には、略円形短パイプ(以下「ヘッドチューブ」という。)を接合し、中央水平パイプから後方に向かって、構造部材(以下「ブラケット」という。)を接合し、このブラケット後方側端部に、左右方向に水平になるように形成された円形短パイプ(以下「後方水平パイプ」という。)を接合し、この後方水平パイプの両端部付近から後方に向かって、左右一対の略円形パイプ(以下「チェーンステー」という。)を間隔が広がるように接合し、シートチューブ上端部に設けられたシートクランプに、後方側が二股にわかれた平面視横Y字状の部材(以下「シートステー」という。)を接合し、このシートステー左右後端部とチェーンステー左右後端部分を接合した構成としている点で共通する。
(共通点2)両意匠は、円形長パイプ状のシートチューブの形態が、直線状で、やや後方に傾斜して配設している点で共通する。
(共通点3)両意匠は、正面視略J字状のダウンチューブの形態が、シートチューブより大径である点で共通する。
(共通点4)両意匠は、円形短パイプ状のヘッドチューブの形態が、シートチューブとほぼ同径の直線状で、やや後方に傾斜して配設している点で共通する。
(共通点5)両意匠は、ブラケットの形態が、後方に向かって下に傾斜する略長方形状の上面板部分と左右の側板からなる点で共通する。
(共通点6)両意匠は、左右一対のチェーンステーの形態が、後方側先端付近を略板状になるように圧潰し、その先端部中央部分に正面視略横U字状の切り欠き部(以下「後ハブ取付け部」という。)を1つ形成している点で共通する。
(共通点7)両意匠は、平面視横Y字状のシートステーの形態が、幅広で扁平な略楕円形パイプからなる略I字状の前方側部分と、最も小径な略円形パイプからなる略横U字状の後方部分からなり、この略横U字状の後方部分は、その前方側端部付近で下方に折曲している点で共通する。

(2)形態の相違点
(相違点1)本願意匠の中央水平パイプと後ハブ取付け部の配置態様が、中央水平パイプと同じ水平線上に、後ハブ取付け部を配置しているのに対し、引用意匠の中央水平パイプと後ハブ取付け部の配置態様が、中央水平パイプより下方の、引用意匠のブラケットの左右側板の下辺部分と同じ水平線上に、後ハブ取付け部を配置している点で、両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠の中央水平パイプの形態が、最も大径な円形短パイプであるのに対し、引用意匠の中央水平パイプの形態が、シートチューブとほぼ同径の円形短パイプである点で、両意匠は相違する。
(相違点3)本願意匠のブラケット左右の側板の形態が、右側のものは、リブのある略変形四角形板状とし、左側のものは、右側より小さなリブのある略鋭角三角形板状とし、左右の側板とも中央水平パイプの後方側の部分に形成されているのに対し、引用意匠のブラケット左右の側板の形態が、左右対称の略横長五角形状の板状とし、その板体の下辺部分を略円弧状及び略扁平倒W状に切り欠き、この略円弧の切り欠き部分に沿って小円孔を等間隔に3つ形成しているものであって、中央水平パイプの下方部分の前方に向かってやや下方に直線状に傾斜したダウンチューブの側面部分から後方水平パイプ前方側の部分にわたって形成されている点で、両意匠は相違する。
(相違点4)本願意匠のダウンチューブの形態が、断面視において、上半分の形状が半円状で、下半分の形状が下端部を円弧状とする略V字状としたパイプを、中央水平パイプからやや前方部分に頂点のある下に凸の略放物線状に湾曲して形成し、その前方側端部付近の底面部分及び後方側端部底面部分に略隅丸長方形状の切り欠き部を形成しているのに対し、引用意匠のダウンチューブの形態が、円形パイプを、中央水平パイプから前方に向かってやや下方に直線状に傾斜させ、その先端部分を頂点とし、そこから上方に向かって湾曲して形成している点で、両意匠は相違する。
(相違点5)本願意匠のチェーンステーの各ステーの形態が、僅かに湾曲しているのに対し、引用意匠の各ステーの形態が、直線状である点で、両意匠は相違する。
(相違点6)本願意匠のシートチューブには、シートクランプの他何も設けていないのに対し、引用意匠のシートチューブには、シートクランプの下方部分に、略直方体状の部材を突出させて設けている点で、両意匠は相違する。
(相違点7)本願意匠のシートステーには、何も設けていないのに対し、引用意匠のシートステーには、平面視略横U字状の部分に、一対の略糸巻き状の突起及び略倒U字状の板体を設けている点で、両意匠は相違する。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通するから、類似するものである。

2 形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、電動アシストか否かの相違があるにしても、自転車の骨格をなすフレームであって、このフレームにパーツ一式が組み上げられて完成車を組み立てるためのものであるから、当該意匠に係る物品の需要者は、自転車の完成車を購入する一般的な消費者ではなく、自転車を組み立てて販売する自転車販売業者等の取引業者であるといえる。
そうすると、この自転車を組み上げるための専門的な知識を有する需要者は、自転車用フレームと電動アシスト自転車用フレームの違いについても理解しつつ当該意匠に係る物品を観察するといえる。
したがって、両意匠に係る物品の形態において、一般的な自転車用フレームと相違する電動アシスト自転車用フレームの部分は、需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。
(1)形態の共通点
(共通点1)は、シティサイクル等に用いられる、ヘッドチューブとシートチューブを1本のダウンチューブで接続した、いわゆるU形のフレームの形態として普通に見られる形態であって、両意匠のみに認められる格別の特徴ではないから、この(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)ないし(共通点7)におけるシートチューブの形態、ダウンチューブの形態、ヘッドチューブの形態、ブラケットの構成態様、チェーンステーの形態及びシートステーの構成態様についても、この種物品分野における各部位の形態及び構成態様として一般的なものに過ぎず、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないものであるから、これら(共通点2)ないし(共通点7)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。

(2)形態の相違点
(相違点1)は、中央水平パイプと後ハブ取付け部の配置態様についてであり、(相違点2)及び(相違点3)は、中央水平パイプ及びブラケット左右の側板の形態に係るものであるが、本願意匠の中央水平パイプは、シートチューブ、ダウンチューブ及びブラケットを接合する主要な構造部材である上に、後ハブ取付け部と同一水平線上に配置され、そのパイプの穴も大径であることから、自転車のクランク軸が通るボトムブラケットを取り付けるための役割を持つハンガーパイプであるといえる。また、本願意匠のブラケット左右の側板は、中央水平パイプと後方水平パイプをつなぐブラケットを接合する際の補強材として使用されているといえる。一方、引用意匠の中央水平パイプは、後ハブ取付け部との配置態様からボトムブラケットは取り付けられず、シートチューブ、ダウンチューブ及びブラケットを接合する構造部材としての役割を持つのみのパイプである。そして、引用意匠のブラケット左右の側板は、単なる補強材ではなく、その配置から板体下辺部分の小円孔に、ボトムブラケットを有する電動アシスト自転車用のユニットを取り付けるためのものでもあると認められる。そうすると、両意匠のこれらの相違点は、自転車用フレームと電動アシスト自転車用フレームに係る相違点であって、需要者の注意を強く惹く部分であり、この一般的な自転車用フレームと相違する電動アシスト自転車用フレームに係る部分の美感には大きな差異がある。
(相違点4)におけるダウンチューブの形態は、本願意匠の形態は、ダウンチューブの最も低い部位である下に凸の略放物線状の頂点部分が、できるだけ低い位置にくるようにして構成したものであるのに対し、引用意匠のものは、ダウンチューブの最も低い部位が、電動アシスト自転車用のユニットとの干渉を防ぐために、中央水平パイプから前方に向かって下向きの直線状部分を設けつつ、できるだけ低い位置にくるようにして構成したものであって、一般的な自転車用フレームと相違する電動アシスト自転車用フレームに係る部分を注目する需要者にとって、ダウンチューブ自体の断面形状の相違も含め、このダウンチューブの美感には大きな差異がある。
(相違点5)ないし(相違点7)におけるチェーンステー、シートチューブ及びシートステーの各形態の相違は、フレーム全体についての細部に係る態様の相違点であるが、自転車の専門知識を有する需要者にとって見れば、これらの形態の相違にも一定の注意を払うと認められるから、両意匠のこれらチェーンステー、シートチューブ及びシートステーの美感には一定の差異がある。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、上記2の前文のとおり、自転車用フレームと電動アシスト自転車用フレームの相違する部分は、需要者の注意を強く惹く部分であり、上記2(2)のとおり、一般的な自転車用フレームと相違する電動アシスト自転車用フレームに係る部分の美感には大きな差異があり、ダウンチューブの形態も需要者に異なる美感を与えるものである。また、チェーンステー、シートチューブ及びシートステーの形態においても美感に一定の差異がある。そうすると、両意匠は、全体の構成態様、シートチューブ、ダウンチューブ、ヘッドチューブ、ブラケット、チェーンステー及びシートステーの各部位の形態及び構成態様が共通することを考慮しても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は類似するものであるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、本願については、原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2018-06-29 
出願番号 意願2017-11771(D2017-11771) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 生亀 照恵 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2018-07-27 
登録番号 意匠登録第1611666号(D1611666) 
代理人 布施 哲也 
代理人 佐藤 英二 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 野間 悠 

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