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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B1 |
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管理番号 | 1343067 |
審判番号 | 不服2018-11 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-01-04 |
確定日 | 2018-08-06 |
意匠に係る物品 | ブラジャー |
事件の表示 | 意願2017- 544「ブラジャー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成29年(2017年)1月16日の意匠登録出願であって,平成29年5月24日付けの拒絶理由通知に対し,平成29年7月10日に意見書が提出されたが,平成29年9月21日付けで拒絶査定がなされ,平成30年(2018年)1月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願意匠は,意匠に係る物品を「ブラジャー」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることができない意匠)に該当する,というものである。 引用意匠は,韓国特許庁が発行した大韓民国意匠商標公報(公報発行日:2014年9月23日)に記載された(登録番号30-0762185)ブラジャーの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH26439830号)であって,その形態を,同公報に記載されたとおりとしたものであり,引用意匠において本願部分と対比,判断する部分を,本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。 第4 当審の判断 1 意匠の認定 (1)本願意匠 ア 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「ブラジャー」である。 イ 本願部分の用途及び機能 本願部分は,ブラジャーのサイドベルトであり,装着時には脇下から背中に回し,該サイドベルトに延設されたホックを留めることによって,装着者の胸部にアンダーベルト部を固定し,胸から脇にかけての形を整える機能を有するとともに,カップ上部から背中に回る肩紐の一端が接合されるものとなっている。 ウ 本願部分の位置,大きさ及び範囲 本願部分は,正面視において,カップ部及びアンダーベルト部の端部で構成される脇部(以下「脇部」という。)下部の右側に位置するサイドベルトの表裏であり,該サイドベルトの下端をアンダーベルトの下端に揃えて連続させ,アンダーベルトに接合するサイドベルトの左端(以下「左辺」という。)は脇部の約5分の1の長さとなっており,該サイドベルトの横幅はブラジャー全幅の約4分の1を占めている。 エ 本願部分の形態 本願部分は,脇部下部に接合する前面布(以下「前面布」という。)で構成されており,正面視において,左辺をホック部方向に斜めに切り欠け,下辺につき,略「へ」の字状にホック部につなげ,肩紐との接合部(以下「肩紐接合部」という。)を下辺の横幅に対して左右方向略中央の位置に配し,肩紐接合部の左側となる上辺(以下「左側上辺」という。)につき,わずかに右上がりの傾斜をつけた直線状とし,肩紐接合部の右側となる上辺(以下「右側上辺」という。)につき,ホック部にむけて降下する緩やかな凹弧状とし,下辺と右側上辺の端部には細幅状のテープが縁取られ,該両テープは鋭角状に接してホック部端部に接続するものとなっている。背面視においても,正面視と対称形となる形態となっている。 (2)引用意匠 ア 意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は,「ブラジャー」である。 イ 引用部分の用途及び機能 引用部分は,ブラジャーのサイドベルトであり,装着時には脇下から背中に回し,該サイドベルトに延設されたホックを留めることによって,装着者の胸部にアンダーベルト部を固定し,胸から脇にかけての形を整える機能を有するとともに,カップ上部から背中に回る肩紐の一端が接合されるものとなっている。 ウ 引用部分の位置,大きさ及び範囲 引用部分は,正面視において,脇部下部の右側に位置するサイドベルトの表裏であり,該サイドベルトの下端をアンダーベルトの下端に揃えて連続させ,左辺は脇部の約5分の2の長さとなっており,該サイドベルトの横幅はブラジャー全幅の約5分の2を占めている。 エ 引用部分の形態 引用部分は,前面布と,カップ部に接合する後方布(以下「後方布」という。)のうち前面布と重なる部分とによって構成されている。 正面視において,引用部分は,左辺をホック部方向に斜めに切り欠け,下辺につき,脇部から極僅かに湾曲させながらホック部につなげ,肩紐接合部を下辺の横幅に対してホック部寄り約5分の1の位置に配し,左側上辺につき,大きく右上がりの傾斜をつけた直線状とし,右側上辺につき,ホック部にむけて降下する円弧状とした前面布で構成され,該右側上辺の端部は延伸した細幅状の肩紐が縁取られ,下辺端部にテープによる縁取りはなく,ホック部接合部と下辺が略直角に交わり,ホック部端部に幅広のまま接続するものとなっている。 背面視においては,正面視と対称状の形態となる前面布の上に,前面布と後方布の交点,後方布上辺と後方布下辺とホック部との接続点,後方布と前面布と脇部との接続点の5点を頂点とする略五角形状に区切られた後方布が重なるものとなっている。 2 対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,ともに「ブラジャー」であることから,両意匠の意匠に係る物品は,用途及び機能が共通する。 (2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は,ブラジャーのサイドベルトであり,装着時には脇下から背中に回し,該サイドベルトに延設されたホックを留めることによって,装着者の胸部にアンダーベルト部を固定し,脇から胸にかけての形を整える機能を有するとともに,カップ上部から背中に回った肩紐の一端が接合されるものとなっていることから,用途及び機能が共通する。 (3)両部分の位置,大きさ及び範囲の対比 両部分は,いずれも,脇部下部の右側に位置するサイドベルトの表裏であり,当該サイドベルトの下端をアンダーベルトの下端に揃えて連続させるものとなっていることから,位置は一致しているが,大きさ及び範囲については,本願部分は,左辺を脇部の略5分の1の長さとし,該サイドベルトの横幅をブラジャー全幅の約4分の1の長さとしているのに対して,引用部分は,左辺を枠部の約5分の2の長さとし,その横幅をブラジャー全幅の約5分の2の長さとしていることから,大きさ及び範囲が異なるものとなっている。 (4)両部分の形態の対比 ア 両部分の形態の共通点 (共通点1)全体を,左辺,下辺,左側上辺,及び右側上辺によって構成している点, (共通点2)正面視において,左辺をホック部方向に斜めに切り欠いている点。 イ 両部分の形態の相違点 (相違点1)本願部分は,前面布のみによって構成されているのに対して,引用部分は,前面布と,後方布のうち前面布と重なる部分との二枚によって構成されている点, (相違点2)本願部分は,下辺につき,略「へ」の字状にホック部につなげているのに対して,引用部分は,脇部から極僅かに湾曲させながらホック部につなげている点, (相違点3)本願部分は,肩紐接合部を,下辺の横幅に対して左右方向略中央の位置に配しているのに対して,引用部分は,下辺の横幅に対してホック部寄り約5分の1の位置に配している点, (相違点4)本願部分は,左側上辺につき,わずかに右上がりの傾斜をつけた直線状としているのに対して,引用部分は,大きく右上がりの傾斜をつけた直線状としている点, (相違点5)本願部分は,右側上辺につき,ホック部にむけて降下する緩やかな凹弧状としているのに対して,引用部分は,ホック部にむけて降下する円弧状としている点, (相違点6)本願部分は,下辺と右側上辺の端部には細幅状のテープが縁取られ,該両テープは鋭角状に接してホック部端部に接続するものとなっているのに対して,引用部分は,右側上辺の端部には延伸した細幅状の肩紐が縁取られ,他方,下辺端部にテープによる縁取りはなく,ホック部接合部と下辺が略直角に交わり,ホック部端部に幅広のまま接続するものとなっている点, (相違点7)本願部分は,背面視においても,正面視と対称形となる形態となっているのに対して,引用部分は,背面視においては,正面視と対称状の形態となる前面布の上に,前面布と後方布の交点,後方布上辺と後方布下辺とホック部との接続点,後方布と前面布と脇部との接続点の5点を頂点とする略五角形に区切られた後方布が重なるものとなっている点。 3 判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は,用途及び機能が共通するから,類似する。 (2)両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能が共通するから,類似する。 (3)両部分の位置,大きさ及び範囲の評価 両部分は,位置は一致するので,同一であるが,大きさ及び範囲については一致しないので,相違する。 (4)両部分の形態の共通点及び相違点の評価 ア 両部分の形態の共通点の評価 共通点1である,サイドベルトの全体を,左辺,下辺,左側上辺,及び右側上辺によって構成することは,通常よく見られる概括的な形態であることから,部分全体の美感に与える影響は小さい。 また,共通点2の,左辺をホック部方向に斜めに切り欠くことは,ブラジャーの装着時の固定の方法や強さに興味を有する需要者にとっては注目するところであるので,部分全体の美感に与える影響は一定程度ある。 イ 両部分の形態の相違点の評価 相違点1及び相違点7である,前面布のみによって構成される本願部分と,前面布と後方布によって構成される引用部分との相違は,アンダーベルトによる胸部の固定の強度や安定感,あるいは布部の厚みによる使用感を重視する需要者にとっては,サイドベルトが一重であるのか,二重であるのかは大きな違いとなり,注意を惹くものであることから,需要者には異なる美感を与えるものである。 相違点2における下辺の態様は,本願部分が「へ」の字状の屈曲部を有することによって,装着時に下辺を略水平になるように引き上げて使用することが想起され,装着感や締め付けの効果を重視する者には特に強い印象を与えることから,需要者には異なる美感を与えるものである。 相違点3の肩紐接続部の位置の違いは,相違点4の左側上辺及び相違点5の右側上辺の具体的な態様の相違と相まって,装着時の肩紐の牽引状態や上着の襟開口部との関係に注目をする者にとっては,強く注意を惹かれるものであることから,需要者には異なる美感を与えるものである。 相違点6の,本願部分は,下辺と右側上辺の端部には細幅状のテープが縁取られ,該両テープは鋭角状に接してホック部に接続するものとなっているのに対して,引用部分は,右側上辺の端部に延伸した細幅状の肩紐が縁取られ,下辺端部にテープによる縁取りはなく,ホック部接合部と下辺が略直角に交わり,ホック部に幅広のまま接続するものとなっている点については,視覚的な印象が大きく異なっており,装着時の安定感や背中の開き具合を注意する者にとっては特にその相違は重視されるので,需要者には異なる美感を与えるものである。 (5)両意匠の類否判断 両意匠の意匠に係る物品であるブラジャーは,胸部を包む下着であり,乳房を支え,保護し,胸や脇などの形を整える機能を有し,両部分であるサイドベルトは,アンダーベルトによる胸部の固定を支え,胸から脇にかけての形を整え,背中側の肩紐を保持する機能を果たすものであるので,装着時の牽引や締め付けの強度,装着感や安定感,あるいは肩紐の牽引状態や上着の襟開口部との関係が注目され,その要素を実現するための具体的な形態に需要者の注意は強く惹かれるということができる。 両部分の形態における共通点及び相違点についての評価に基づき,意匠全体として両意匠を総合的に観察した場合,両部分は,構成する布の枚数,肩紐接続部の位置,脇部から背中に至る下辺及び上辺の具体的な態様,サイドベルト端部のホック部への接続の態様に関して,美感に大きな相違があり,左辺切り欠けの具体的な態様における共通点を考慮したとしても,異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は類似し,両部分の用途及び機能が類似し,両部分の位置が同一ではあるが,大きさ及び範囲が異なり,その形態においては,相違点が全体において支配的なものとなっており,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものである。 第5 むすび 以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-07-19 |
出願番号 | 意願2017-544(D2017-544) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(B1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 下村 圭子、上島 靖範 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 木本 直美 |
登録日 | 2018-08-17 |
登録番号 | 意匠登録第1613402号(D1613402) |
代理人 | 布施 哲也 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 野間 悠 |