ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M2 |
---|---|
管理番号 | 1345913 |
審判番号 | 不服2018-5792 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-26 |
確定日 | 2018-08-29 |
意匠に係る物品 | 配管支持具 |
事件の表示 | 意願2017- 11633「配管支持具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年3月11日の特許願2016-48265を原出願として一部を分割した平成29年5月31日の特許願2017-107390を原出願として,意匠法第13条第1項の規定によって,平成29年5月31日に特許出願を意匠登録出願に変更したものであって,平成29年9月28日付けの拒絶理由の通知に対し,平成29年11月14日に意見書が提出されたが,平成30年2月6日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,平成30年4月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願意匠は,意匠に係る物品を「配管支持具」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する,というものである。 引用意匠は,日本国特許庁発行の公開特許公報(公報発行日:平成17年2月10日)に記載された,特開2005-36406の【図1】,【図2】に表された,丸パイプ柱支持金具の上部金具の意匠であり,その形態を,同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,本願意匠が「配管支持具」であって,水道管などの軽量な合成樹脂管を壁面等に配置する際に使用されるものであるのに対して,引用意匠は「丸パイプ柱支持金具の上部金具」であって,屋外装備品であるフェンスの支柱などを垂直に固定する際に,下部金具とあわせて使用されるものであり,使用目的や使用方法が異なる。 2 形態の対比 (1)本願意匠の形態 基本構成について,湾曲部とフランジ部からなる帯状板材であって,U字状の湾曲部の両端を同一平面となる水平なフランジ部とし,両フランジ部近傍の湾曲部を切り起こして押圧片を形成しており,全体の構成比率は平面視で縦横を約1対7としたものである。 湾曲部は,幅と高さの比が約1対1で,上方2分の1が半円状,下方2分の1が垂直状である。 フランジ部は,湾曲部の幅の約2分の1で端部寄りに円形のボルト孔を有する。 押圧片は,帯状板材の約10分の7の幅で,側面視して縦横比が7対5の長方形状となるように上辺を残して下方側を切り起こしたものであって,湾曲部の上半部と連続する円弧をなし,湾曲部の下方で,内方に向かって湾曲部の幅の約10分の1突出している。 (2)引用意匠の形態 引用意匠は,本願意匠の正面図に相当する【図1】及び斜視図に相当する【図2】のみであるが,合議体では以下のように認定する。なお,認定にあたり図の向きは本願意匠とそろえたものとする。 基本構成について,湾曲部とフランジ部からなる帯状板材であって,U字状の湾曲部の両端を同一平面となる水平なフランジ部とし,両フランジ部近傍の湾曲部を切り起こして押圧片を形成しており,全体の構成比率については【図2】の斜視図のみからは不明確であるが,平面視では縦横が約1対6程度と推認される。 湾曲部は,幅と高さの比が約2対3で,上方約3分の1が半円状,下方約3分の2が垂直状である。 フランジ部は,湾曲部の幅の約1.3倍で端部寄りに長円形のボルト孔を有する。 押圧片は,帯状板材の約3分の1の幅で,側面視して縦横比が5対2の長方形状となるように上辺を残してフランジ部近傍から下方側を切り起こしたものであって,湾曲部の上半部と連続する円弧をなし,湾曲部の下方で,内方に向かって湾曲部の幅の約10分の4突出している。 (3)形態の共通点 (共通点1)両意匠は,全体の基本構成が,湾曲部とフランジ部からなる帯状板材であって,U字状の湾曲部の両端を同一平面となる水平なフランジ部とし,両フランジ部近傍の湾曲部を切り起こして押圧片を形成している点で共通する。 (4)形態の相違点 (相違点1)本願意匠の全体の構成比が,平面視において約1対7であるのに対し,引用意匠が約1対6である点。 (相違点2)本願意匠の湾曲部が,幅と高さの比が約1対1で,上方2分の1が半円状,下方約2分の1が垂直状であるのに対し,引用意匠は幅と高さの比が約2対3で,上方約3分の1が半円状,下方約3分の2が垂直状である点。 (相違点3)本願意匠のフランジ部は,湾曲部の幅の約2分の1で端部寄りに円形のボルト孔を有するのに対し,引用意匠は,湾曲部の幅の約1.3倍で端部寄りに長円形のボルト孔を有する点。 (相違点4)本願意匠の押圧片は,帯状板材の約10分の7の幅で,側面視して縦横比が7対5の長方形状となるように湾曲部の中央付近に上辺を残して下方側を切り起こしたものであって,湾曲部の上半部と連続する円弧をなし,湾曲部の下方で,内方に向かって湾曲部の幅の約10分の1突出しているのに対して,引用意匠は,帯状板材の約3分の1の幅で,側面視して縦横比が5対2の長方形状となるように上辺を残して下方側を切り起こしたものであって,湾曲部の上半部と連続する円弧をなし,湾曲部の下方で,内方に向かって湾曲部の幅の約10分の4突出している点。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 本願意匠に係る物品は「配管支持具」であり,軽量な合成樹脂管を固定する際に使用されるものであるのに対して,引用意匠に係る物品は「丸パイプ柱支持金具の上部金具」であって,フェンスの支柱等を垂直に固定する際に使用されるもので,上部金具と下部金具の2つによって固定を行う機能を果たすものであるから,両意匠に係る物品の使用目的,使用方法は相違する。 2 形態の共通点及び相違点の評価 (1)形態の共通点 共通点1は,配管材や支柱等の円筒状の部材を固定する支持具に極普通にみられる態様について,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり,意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (2)形態の相違点 相違点1は,全体の構成比率の具体的な数値に関するものであるが,両意匠ともにやや細幅な板材と看取されることから,この相違点が美感に及ぼす影響は一定程度にとどまる。 相違点2における湾曲部の形態は,需要者が注目する管材を包持する部分であって,構成比の違いは需要者に異なる美感を与えるものである。 相違点3におけるフランジ部の形態は,固定の際に需要者が注目する部分であるから,構成比の違いやボルト孔の形状の相違は需要者に異なる美感を与えるものである。 相違点4における押圧片の形態は,湾曲部の部分的な態様ではあるものの,管材を包持する部分であるから需要者が注目する部分であって,当該部位の具体的な構成比率や位置の相違は,美感に大きな差異がある。 3 両意匠の類否判断 両意匠は物品が相違し,また形態における共通点及び相違点の評価に基づき,意匠全体として総合的に観察した場合,上記2(2)のとおり,美感について需要者に異なる印象を与えるものであるから,両意匠は類似しない。 第6 むすび 以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2018-08-08 |
出願番号 | 意願2017-11633(D2017-11633) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(M2)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 外山 雅暁 |
特許庁審判長 |
木本 直美 |
特許庁審判官 |
温品 博康 宮田 莊平 |
登録日 | 2018-11-02 |
登録番号 | 意匠登録第1618725号(D1618725) |
代理人 | 坂口 信昭 |