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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20181816 審決 意匠
不服20186200 審決 意匠

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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C5
管理番号 1345920 
審判番号 不服2018-9405
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-06 
確定日 2018-10-12 
意匠に係る物品 飲料用容器の持ち手 
事件の表示 意願2017- 10957「飲料用容器の持ち手」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,2016年3月24日の域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成28年(2016年)9月16日の意匠登録出願(意願2016-20142)を原出願として,意匠法第10条の2第1項の規定による出願の分割がなされた,平成29年5月23日の意匠登録出願であって,その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年10月 2日付け 拒絶理由の通知
平成30年 1月 4日 意見書提出
平成30年 4月 5日付け 拒絶査定
平成30年 7月 6日 審判請求

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「飲料用容器の持ち手」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠は,大韓民国意匠商標公報2015年6月10日15-23号「保温保冷用容器」(登録番号30-0800312)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH27422528号)に表れている「保温保冷用容器の持ち手」の意匠(以下「引用意匠」という。)であり,その形態を同公報に掲載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 対比
1.意匠に係る物品
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,本願意匠が「飲料用容器の持ち手」としたものであり,引用意匠が「保温保冷用容器の持ち手」としたものである。

2.形態
(1)共通点
(A)全体は,薄い円盤状の取付片の外縁に,細幅帯状のものを斜め下方へ向けた略しずく型のループ状とした持ち手部を一体的に設けたものである。
(B)持ち手部の輪郭形状(正面図における形状)について,持ち手部の上側を緩やかな凸弧状としたものである。
(2)相違点
(ア)取付片の直径の長さと持ち手部の最長部分の長さの比率を,本願意匠は,約3対2としたものであり,取付片の直径の方が持ち手部よりも長いものであるのに対して,引用意匠は,約2対3としたものであり,持ち手部の方が取付片の直径よりも長いものである。
(イ)持ち手部の輪郭形状について,本願意匠は,持ち手部の下側を緩やかな逆凸弧状とし,持ち手部の端部を略半円弧状に丸くしたものであるのに対して,引用意匠は,持ち手部の下側を緩やかな略S字状とし,持ち手部の端部を略V字状にとがらしたものである。
(ウ)持ち手部の幅について,本願意匠は,全長にわたり同幅としたものであるのに対して,引用意匠は,付け根から端部へ向けて広がったものである。
(エ)持ち手部の表面について,本願意匠は,平滑としたものであるのに対して,引用意匠は,長手方向にわたり中央部が縁部よりも一段盛り上がったものである。
(オ)取付片の内側の形状について,本願意匠は,中央に円形孔を設けたものであるのに対して,引用意匠は,持ち手部を容器から取り外した状態の図がなく,不明である。

第5 判断
1.意匠に係る物品について
両意匠の意匠に係る物品は,本願意匠が「飲料用容器の持ち手」としたものであり,引用意匠が「保温保冷用容器の持ち手」としたものであるが,どちらも容器の持ち手となるものであるから,共通する。

2.形態について
(1)共通点の評価
共通点(A)は,全体を大づかみした形状であり,この物品分野においてありふれたものであるから,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
共通点(B)は,この物品分野において持ち手部の上側を凸弧状としたものが両意匠以外にも見受けられ,両意匠の持ち手部の形状を特徴付ける程のものとはいえないから,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
(2)相違点の評価
相違点(ア)は,取付片と持ち手部との大きさを対比したものであるが,その比率の差は大きく,取付片と持ち手部の大きさが逆転するものであり,視覚的に異なる印象をもたらすものといえるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きい。
相違点(イ)は,持ち手部の輪郭形状に係るものであるが,持ち手部の下側及び端部の形状の相違は大きく,持ち手部として別異の形状を特徴付け,視覚的に異なる印象をもたらすものといえるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きい。
相違点(ウ)は,持ち手部の幅に係るものであるが,本願意匠の形状はありふれたものと認められ,造形的に特徴があるものではないが,持ち手部は需要者が注目する箇所であり,端部へ向けて広がったものとの対比においては,一見して気が付く相違といえるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。
相違点(エ)は,持ち手部の表面に係るものであるが,本願意匠の形状はありふれたものと認められ,造形的に特徴があるものではないが,持ち手部は需要者が注目する箇所であり,長手方向にわたり中央部が縁部よりも一段盛り上がったものとの対比においては,一見して気が付く相違といえるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。
相違点(オ)は,取付片の内側の形状に係るものであるが,引用意匠については特定できず対比できないところ,取り付けた状態においては本願意匠も外縁しか視認できないから,両意匠の取付片の内側の形状は,容器に取り付けた際には観察できる箇所とはいえないが,取付片の内側は容器との接合方法に関わり,強度や製作コストに影響ある箇所なので,この種物品の取引においては需要者が注目する箇所ともいえるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。

3.類否
両意匠について意匠全体として総合的に観察した場合,上述の両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づけば,共通点は,いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さく,一方,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,相違点(ア)及び(イ)が視覚的に異なる印象をもたらす程に大きな影響を及ぼす上に,相違点(ウ)ないし(オ)も軽視できないものであるから,相違点は,両意匠の類否判断を決するものといえる。
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,その形態において,需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと認められる。

第6 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠に類似する意匠ではなく,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-09-27 
出願番号 意願2017-10957(D2017-10957) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北代 真一油科 壮一 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2018-11-16 
登録番号 意匠登録第1620035号(D1620035) 
代理人 中村 行孝 
代理人 朝倉 悟 
代理人 永井 浩之 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 佐藤 泰和 
代理人 副田 圭介 

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