• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 E3
管理番号 1345950 
審判番号 不服2018-8857
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-27 
確定日 2018-11-06 
意匠に係る物品 運動用具 
事件の表示 意願2017- 11930「運動用具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
平成29年 6月 2日 意匠登録出願
平成29年12月28日付け 拒絶理由通知書
平成30年 2月19日 意見書提出
平成30年 3月22日付け 拒絶査定
平成30年 6月27日 審判請求書提出

第2 本願意匠
本願の意匠は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「運動用具」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである。(以下、「本願意匠」という。)(別紙第1参照)

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」といい、本願意匠と合わせて「両意匠」という。)は、
「著者の氏名 Xu Wang
表題 TB SERIES | TWISTER BAG
掲載箇所 ウェブサイト「Hysun Marine」
媒体のタイプ online
掲載年月日 2015年10月9日
検索日 2017年12月25日検索
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス http://hysunmarine.blogspot.jp/2015/10/tb-series-twister-bag.html
に掲載された「身体鍛錬用器具」の意匠」(別紙第2参照)である。

第4 当審の判断
1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「運動用具」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「身体鍛錬用器具」であって、共に運動に用いて、身体の鍛錬に寄与するものであるから共通する。
(2)形態
両意匠の形態を対比すると、主として、以下の共通点と差異点が認められる。
なお、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、引用意匠にもあてはめる(別紙第2の3/6頁右上の写真図版部を正面として図の方向は本願意匠に合わせ、各図それに倣う)こととする。
(2-1)共通点
基本的構成態様として、
(A)両意匠は、全体は本体部と持ち手部から成り、本体部は略円柱形状であって、周側面に2種類の持ち手部を設けて成る点、
具体的構成態様として、
(B)本体部は透明で、正面視でその縦方向長さ(直径)と横方向長さの比は約1:4.5である点、
(C)1種類の持ち手部は、正面視で、略周方向に端部を向けた持ち手が、対となって、左右対称に本体部の長手方向に間隔を空けて配され(以下、周方向持ち手部という。)他方の持ち手部は、略軸方向に端部を向けた持ち手が、対となって、多少の間隔を空けて左右対称に配され(以下、軸方向持ち手部という。)ている点
(D)本体部に配された4つの持ち手の形状は、ほぼ同形状で、長円シート状の基部の上に、略ベルト状の把持紐の両端が、間隙を空けて留めつけられている点、
(E)本体部一方の端部には、ほぼ端部いっぱいの略円形の流体等注入用の注入口部が設けられている点、
が共通している。
(2-2)相違点
具体的構成態様として、
(ア)2対の持ち手部の本体部の位置について、本願意匠は、2種類の持ち手部が互いに略円周方向の反対側に配されたものであるのに対し、引用意匠は、別紙第2の3/6頁右上の写真図版部で周方向持ち手部がほぼ正面からで観察できる向きで、他方の軸方向持ち手部がほぼ真横から観察できることなどから円周方向に略4分の1円の位置に配されていると認められる点、
(イ)持ち手部の持ち手の傾きについて、本願意匠は周方向持ち手部が正面視で内方に約75度の傾きで、持ち手同士は略ハの字状を呈し、背面視で他方の一対の持ち手部が約30度の傾きで、扁平な略ハの字状を呈しているのに対し、引用意匠は、正面視で周方向持ち手部の持ち手同士は、縦向きにほぼ平行(約90度)で、軸方向持ち手部は、一直線上に、横に並列(約180度)されたものである点、
(ウ)持ち手部の形状について、本願意匠は1つの持ち手(基部及び把持紐から成る)の長さは、本体長さに対し、約3分1であって、把持紐は両端を除いて厚みのある部材で覆われているのに対し、引用意匠は1つの持ち手の長さは、本体部の長さに対し、約2.5分1であって、把持紐は、薄い帯状体である点、
(エ)本体部の正面視に本願意匠は、特に模様などは配されていないのに対し、引用意匠は、正面視で持ち手同士の間に横長矩形状のプリント部が配されたものである点、
(オ)本体部の注入口部について、本願意匠は、左側面視において小円形状の蓋部などが認められるが、引用意匠は、別紙第2の3/6頁、左下の写真図版部で、開蓋状態は確認できるものの、蓋部の形状については不明である点、
(カ)本願意匠は全体に濃淡調子や、色彩がほどこされないものであるのに対し、引用意匠は、本体部は持ち手部、注入口部及び横長矩形状のプリント部に黒色が施されたものである点、
で相違している。

2 両意匠の類否
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して、両意匠の意匠全体としての類否を検討し、判断する。
両意匠は、意匠に係る物品が共通するが、形態については、以下のとおりである。
(1)共通点の評価
基本的構成態様としてあげた共通点(A)は、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであるから、この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。また、具体的構成態様としてあげた共通点(B)及び(E)も、本体部が透明で縦横の長さの比が約1:4.5で、本体部一方の端部に略円形の流体等注入用の注入口部を設けたものは、水などを入れて身体の鍛錬に用いる「運動用具」の物品分野において、よく見られる形状であるから、この点が両意匠にのみ共通する特徴であるとはいえず、共通点(C)及び(D)は、持ち手部の配置及び形状として、周方向持ち手部と略軸方向持ち手部の2種類の持ち手部を設けること、及び、持ち手を長円シート状の基部の上に、略ベルト状の把持紐の両端を留めつけた形状とすることは、「運動用具」の物品分野において、よく見受けられる態様であって、特段需要者の注意を惹くものとはいえず、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
よって、共通点(A)ないし(D)の両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも小さく、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
(2)相違点の評価
これに対して、両意匠の具体的構成態様に係る各相違点は、相違点(ア)については、持ち手部の本体部への配置位置の、相違点(イ)は、持ち手の傾きについての相違であって、共に持ち手の配置態様の相違であるが、需要者は、運動器具について、その把持、又は抱え持つ際に用いる持ち手については注目するところであり、特にその配置及び傾きは、使用する際の持ちやすさあるいは、でき得るトレーニングのバリエーションなどにも関わるところ、周方向持ち手部及び軸方向持ち手部をそれぞれ円周方向の反対側に配し、周方向持ち手部の持ち手が正面視で内方に約75度の傾きで、持ち手同士は略ハの字状を呈し、背面視で軸方向持ち手部の持ち手が約30度の傾きで、扁平な略ハの字状を呈している点は、本願出願前には見受けられず、本願意匠独自の態様であるといえ、あいまって、これらの点が両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。
また、相違点(ウ)については、持ち手の本体に対する大きさ及び把持紐の形状の部分的な相違であって、双方ともに見受けられる把持紐ではあるが、需要者は、「運動器具」について、その持ちやすさにも注意を向け、持ち手の大きさや形状にも注目するところであるから、両意匠の類否判断に与える影響は一定程度あるものである。さらに、相違点(エ)はプリント部の有無についてであるが、引用意匠は実施製品の写真によるものであって、実施製品に商品名などを付すための矩形状のプリント部を設けたものは、この種物品分野に限らずごく普通に見受けられ、横長矩形状のものはその中でもごく普通に見受けられるものであるから両意匠の類否判断に与える影響は小さい。そして、相違点(オ)は本体部の注入口部について、端部に表された部分的な蓋部の相違であるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
最後に、相違点(カ)については、色彩の有無については、この種物品に限らず、どちらの態様を表したものもごく普通の態様であるから、この相違点が類否判断に与える影響は小さい。
そうすると、相違点(ウ)は両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものであって、相違点(エ)ないし(カ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいとしても、相違点(ア)及び(イ)は両意匠の類否判断に極めて大きな影響を与えるものであるから、それら相違点(ア)ないし(カ)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると、相違点は、共通点を凌駕して、両意匠を別異のものと印象づけるものであるから本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。
(3)小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は、共通するが、形態においては、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており、両意匠は、意匠全体として別異のものと印象付けられるものであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-10-24 
出願番号 意願2017-11930(D2017-11930) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (E3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 康平木村 智加 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 竹下 寛
渡邉 久美
登録日 2018-11-30 
登録番号 意匠登録第1620956号(D1620956) 
代理人 特許業務法人グランダム特許事務所 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ